子どもと楽しむ料理の科学
お米をおいしく食べるコツ
2019.10.24
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「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。
炊飯器でもおいしく炊ける!
お米は研がない?吸水は必要ない?
「お米を研ぐ」という言い方がありますが、実は「研ぐ」必要はありません。昔は、米の表面にぬかやゴミが多く残っていたので、米同士を擦り合わせてこれらを削り落とす「研ぐ」という操作が必要でした。しかし、現在は精米技術の発達によりほとんどぬかが残っていないので、シャカシャカと混ぜるように米を洗う程度で十分です。
むしろ重要なのは手早く作業することでしょう。とくに、最初に加えた水、つまり表面の汚れやぬかが多く溶け込んだ水は素早く捨てるようにします。私たちがふだん目にしているお米は収穫した稲を十分に乾燥させた、いわば乾物なので、水につけた瞬間から水分をよく吸収します。炊飯前のお米は水にひたすことでお米の重さの20%程度の水分を吸収しますが、洗米時にその半分にあたる10%前後の水分を吸収するといわれています。なるべくきれいな水を吸収させられるよう手早く作業して、洗い水はすぐに捨てるようにしましょう。
洗米後は米にしっかりと水分を吸収させてから炊飯します。と、教科書などには書かれていますが、一般的な炊飯器では通常炊飯のモードに吸水時間も含まれているので、別途時間を取る必要はありません。吸水にかかる時間は温度によって変化し、30℃前後であれば30〜60分、5℃前後であれば1〜2時間程度がよいといわれていますが、炊飯器ではそれよりも少し高い40℃前後まで温めることにより短時間で吸水を行なっています。
一方で、高温・短時間で吸水させた場合と、低温・長時間で吸水させた場合とでは炊きあがりの食感に違いがあり、低温で時間をかけて吸水させる方が、なかまで均一に柔らかく、粘りのある食感に仕あがるという報告もあるようです。わたしも、炊飯ボタンを押す前に30分ほど水に浸してから炊いたものの方が好きなので、余裕があるときには吸水時間を余分に取るようにしています。
結論としては、炊飯器を使う場合、吸水時間は必ずしも取る必要はないが、好みによっては余分に吸水時間を取るのもおすすめ、といったところでしょうか。
炊き上がったお米は10〜20分程度蒸らす必要がありますが、炊飯器は蒸らしが終わった段階で炊き上がりのアラームが鳴るので、すぐにふたを開けてざっくりと混ぜましょう。通常、炊飯が終わると70℃前後の保温モードに移行しますが、炊き上がりの熱いうち(90℃前後)に一度混ぜることで余分な水分が蒸発し、食感が良くなります。
炊飯器でおいしいご飯を炊くには…… きれいな水で手早く洗い、初めの水はすぐ捨てる! 炊き上がったら熱いうちに一度混ぜる! |
作り方/レシピ
2.米を洗う
お米を洗う(無洗米の場合は不要)。
米に水を加え、すぐに水を捨てる。この作業を2回ほど繰り返す。
次に、水を捨てた状態で10〜20回ほどかき混ぜるように洗ったら、水を加えて薄めて捨てる。この作業を2〜3回繰り返す。
3.炊飯
炊飯器の内釜に、米と水、酒を入れ、ツナ缶を汁ごと加える。
その上から塩昆布、しょうが、にんじん、しめじの順にのせ、最後にしょうゆをふりかけたら、ふたをして炊飯する。
(鍋で炊く場合や余分に吸水時間をとる場合は、米と水を合わせて30分〜1時間ほど吸水させてから他の材料を加える)
プラス知識! 炊き込みご飯のポイント
お米と一緒に具材を加えて炊き込む場合、具材はお米と混ぜずに、お米の上に置いて炊飯するようにしましょう。 |
11/28(木)更新の次回では、「ジャムがとろりとする仕組み」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!
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プロフィール
科学する料理研究家、料理・科学ライター
平松 サリー(ひらまつ・さりー)
科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。