親と子の本棚

まんまると、まんまると、まるまるまる

子どもには本好きになってほしいけれど、どう選べばよいかわからない……。そんなときはこちらの「本棚」を参考にされてみてはいかがでしょうか。

図形たち

『マンマルさん』より

表紙のまん中に、大きな黒いまるが描かれている。まるには目があって、二つの目玉は左を見ている。まるの上には『マンマルさん』というタイトルがあるから、このまるが「マンマルさん」にちがいない。マック・バーネットジョン・クラッセンの絵本だ。
ある日、マンマルさんとシカクさんとサンカクさんが滝の近くで遊んでいた。「ええこと かんがえた」――マンマルさんが、かくれんぼしようと言い出す。――「あっ それからな、たきの うしろに かくれるのは あかんよ」「そうかて たきの うしろは まっくらやもん」まずは自分が鬼になったマンマルさんが十数えて目をあけると、シカクさんが立っていた。

「サンカクさん たきの うしろに かくれよったで」
 マンマルさん ためいき ついて。
「ほんまにもう、さがして くるわ」
 シカクさん かんしんして。
「マンマルさん ゆうき あるなあ」
「しゃあないやんか」

マンマルさんが注意したとき、サンカクさんは、「ぼくは くらいのなんか こわないで!」といっていたのだ。滝をくぐった向こうの洞穴で、マンマルさんは、ようやくサンカクさんを見つけて、「なんで いつも やくそく まもられへんの?」となじるけれど、返事がない。「ちょっと いいすぎてしもた。サンカクさん ええ ともだちやわ。」とあやまる。すると、マンマルさんの後ろから、「おおきに」とサンカクさんの声がする。それなら、マンマルさんがいままで話しかけていたのは誰なのか。シカクさんは、外にいるはずだ。真っ暗闇のなかで、マンマルさんやサンカクさんの目の動きだけが描かれる場面がつづく。
絵本の原題は”CIRCLE”。訳者の長谷川義史は、会話も地の文も大阪弁で訳している。まるで上方落語だ。
書きことばと結びつきやすい共通語とちがって、方言は、話しことばの感じが強い。まる、三角、四角の図形たちは、大阪弁で語られ、みずからも大阪弁で語るから、生き生きした存在になる。

石となかよし

もう1冊、この表紙にも黒っぽいまるが描かれている。スティーブン W.マーティンサマンサ・コッテリルの絵本『わたしのペットはまんまるいし』だ。そのまるには、ひもがかけられていて、ひもをもっているのはメガネをかけた女の子だ。女の子と、そのまるは、おそろいの、くすんだオレンジ色のベレー帽をかぶっている。
おとうさんとおかあさんが、ペットがほしい「わたし」にプレゼントしてくれたのは、大きくてまんまるな石だった。大きな石をペットにするのはたいへんだ。散歩につれていくのも一苦労だし、えさも食べてくれない。それでも、「わたし」は、石となかよくなっていく。石の名前は、「コロ」になった。
いっしょに遊んだり、およいだり、ふろに入ったり、「わたし」はコロが大好きだけれど、コロは「わたし」が好きなのだろうか。ある晩、コロは、「わたし」の思いにこたえようとしたのか、すがたを変えて「わたし」を抱きしめてくれる。コロは、いったい何になったのだろう。

おす、そうっとこする

そして、もう1冊、この表紙には、青と黄色と赤いまるが、たてにならんで描かれている。エルヴェ・テュレの絵本『まる まる まる の ほん』だ。
表紙をめくると、とびらには、黄色のまるが一つだけ描かれている。とびらをめくると、やはり、黄色のまるが一つ。――「きいろいまるを おして つぎへ いこう」ページをめくると黄色のまるが二つになっている。――「そうそう! じゃ もういちど きいろいまるを おしてみると…」ページをめくると、黄色のまるが三つにふえた。――「いいね! こんどは ひだりの きいろいまるを ゆびで そうっと こする…」また、ページをめくると、左のまるが赤になっている。――「うまい!」

今月ご紹介した本

『マンマルさん』
マック・バーネット/文、ジョン・クラッセン/絵、長谷川義史/訳
クレヨンハウス、2019年
『サンカクさん』(2017年)、『シカクさん』(2018年)につづく、シリーズ3冊め。
訳者の長谷川義史は、『おへそのあな』(BL出版、2006年) 、『ぼくがラーメンたべてるとき』(教育画劇、2007年)などで知られる絵本作家だ。

『わたしのペットはまんまるいし』
作 スティーブン W. マーティン、絵 サマンサ・コッテリル、訳 久保陽子
ポプラ社、2020年
アメリカの映像作家と画家による絵本。
巻頭に作家と画家それぞれからの献辞が記されているけれど、画家は、こう書いている。――「息子のエイダンとマーカスへ。そして二人が「バディー」と名づけたペットの石へ。」

『まる まる まる の ほん』
エルヴェ・テュレ さく、たにかわ しゅんたろう やく
ポプラ社、2010年
フランスのイラストレーターの絵本。
巻末に訳者の谷川俊太郎のメッセージが書き込まれている。――「えほんのページが タッチパネルになってるよ!/アプリはきみのゆび きみのこころ、/おとつけるのは きみのくち、/おして こすって かたむけて/きみもまるまる まるになる」
同じ作者、訳者による続刊に『いろ いろ いろ の 本』(2014年)、『あそぼ』(2016年)、『おとえほん』(2017年)がある。

プロフィール

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)

1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。日本児童文学学会会長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

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