小田先生のさんすう力UP教室

「考える」力を育てよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

こんにちは、最近お気に入りのカレー皿を割ってしまった小田です。マグカップをお皿に落としてしまい、お皿の底が抜けてしまいました。マグカップのほうもお気に入りで、そちらは無事だったのでまだマシだったのですが、やはりショッキングな出来事でした。食器だけに。お気に入りの食器は使うとテンションが上がるのですが、一方で使い続けると割れてしまうリスクも上がるので、ジレンマがありますよね。割れてもいいようにと思って安いものを使い始めても、使い続けているうちに愛着がわいてきたりもしますし。心を強くするしかないですね。

さて、今回はいわゆる「文章題」の形をした問題です。文章題というと、線分図をはじめとする様々な“ツール”を駆使して解く、というイメージがあるかもしれません。そして、そういったものをうまく使いこなすことを、「考える」ことだと思っている方もいらっしゃるでしょう。ただ、今回はそういったイメージを捨てて、まずはただの「数あてゲームだ」と思ってほしい、というテーマです。あてはまりそうな数をどんどんあてはめていけばいいので、ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。

それでは早速行ってみましょう。

Stage3:「考える」力を育てよう

例題

AさんとBさんが合わせて10個の貝がらを拾いました。Aさんが拾った貝がらは、Bさんが拾った貝がらより多かったのですが、Bさんに2個あげたのでBさんの貝がらのほうが多くなりました。最初に2人が拾った貝がらはそれぞれ何個ですか

 

例題の答え

Aさん:6個,Bさん:4個

冒頭にも書いたように、これは「数あてゲーム」だととらえてください。最初にやることは、やはりお子さんが問題の意味を理解できているかどうかを確認することです。いろいろと条件が出てくるので、1回で文章の意味を理解するのは、なかなか難しいかもしれません。
まずは、「AさんとBさんが10個の貝がらを拾った」ことを確認し、「たとえば、Aさんが1個だったら、Bさんは何個になる?」と聞いてあげてください。答えられたら、「Aさんが2個だったら?」といくつか候補をあげていきます。
その次に「Aさんが拾った貝がらは、Bさんが拾った貝がらより多かった」を確認し、先ほどあげた候補のなかに、条件にあてはまるものがあるかどうかを確認します。なければ、もう一度「合わせて10個になる組み合わせ」を他にも探してもらいましょう。
最後の「Bさんに2個あげたのでBさんの貝がらのほうが多くなった」は少し難しいですが、「2個あげると、Aさんは何個、Bさんは何個になる?」と聞いてみてください。あとは、考えてみた個数が「Bさんのほうが多く」なっていればOKです。ならない場合は、「なるものを探してみよう」と伝えます
お子さんが答えを出したら、条件に合っているかどうかを一つひとつ確認してあげてください。あてはまっていない条件があれば、「ここはこうなっているね」と指摘してあげましょう。(たとえば、Aさんが4個、Bさんが7個、などであれば、「合わせて11個になっているね」という感じです。)
基本的には、「どうやって解くのか」を伝えるのではなく、「どうやって条件と見比べるのか」の具体的な方法だけ伝え、あとはお子さんがうまくいく組み合わせを見つける様子を、温かく見守ってあげてください。

解いてみよう

Level 1

(1)数字の書かれた2枚のカードがあります。カードに書かれている数を合わせると、15になります。大きいほうの数は、小さいほうの数の2つ分よりは大きいですが、3つ分よりは小さいです。このとき、2つのカードに書かれている数は何と何ですか。

(2)CさんとDさんは、2人で合わせて18羽の折りヅルを折りました。Dさんが折ったツルはCさんの折ったツルのちょうど半分でした。このとき、2人が折ったツルは、それぞれ何羽ですか。

(3)赤いリボンと青いリボンがあります。青いリボンは赤いリボンより4cm長いですが、青いリボンをちょうど半分に切ると、今度は赤いリボンのほうが4cm長くなります。このとき、それぞれのリボンの長さは何cmですか。

Level 2

(4)35個のアメ玉をEさんとFさんの2人で分けたいと思います。EさんのほうがFさんよりも7個多くなるように分けるとき、それぞれがもらえるアメ玉の個数は何個になりますか。

(5)15個のミカンを、丸,四角,三角のお皿に分けました。それぞれのお皿に載せたミカンの個数は、丸いお皿か一番少なく、三角のお皿が一番多いです。載っている個数が同じお皿や、ミカンが載っていないお皿はありません。三角のお皿に載っているミカンの個数が、四角いお皿に載っている個数より3個多いとき、それぞれのお皿に載っているミカンの個数は何個ですか。

(6)Gさん,Hさん,Iさんの3人の年齢を合わせるとちょうど50歳になります。Iさんが一番年上、Gさんが一番年下で、同じ年齢の人はいません。IさんがGさんより5歳年上のとき、3人の年齢はそれぞれ何歳でしょう。

Level 3

(7)1袋5個入りのアメと、1袋7個入りのアメを合わせて10袋買って、全部で56個にしたいと思います。このとき、それぞれ何袋買えばいいですか。

(8)1袋5個入りのアメと、1袋7個入りのアメをそれぞれ何袋か買って、全部で43個にしたいと思います。このとき、それぞれ何袋買えばいいですか。

(9)50cmのヒモがあります.このヒモから、8㎝、11cm、12cmのヒモを何本か切り取ります。ヒモが余らないように切ったとき、それぞれ何本になりますか。

解答

Level 1

(1)4と11 (2)Cさん:12羽,Dさん:6羽 (3)赤:12cm,青:16cm

Level 2

(4)Eさん:14個,Fさん:21個 (5)丸:2個,四角:5個,三角:8個 (6)Gさん:14歳,Hさん:17歳,Iさん:19歳

Level 3

(7)5個入り:7袋,7個入り:3袋 (8)5個入り:3袋,7個入り:4袋 (9)8cm:2本,11cm:2本,12cm:1本

さんすう力UPのポイント

今回のような文章題を見たときに、「解き方がわからない」と身構えてしまう人はどれくらいいるでしょうか。いわゆる「文章題」を見たとき、まず「解き方」を考えてしまう方向に意識が行ってしまうのは、あまりよくない傾向の一つだと思っています。
もちろん、「解き方」を知っていたり思いついたりして、うまく問題が解けるとうれしいでしょう。
そうやってうまく解くことも、算数のおもしろさの一つだ、という意見も間違いではありません。しかし、いろいろと問題を解いてみるとわかりますが、うまく解けることというのはむしろ少なく、実際には解けない・わからないことのほうが多いです。それもまあ、「たまに解けるから嬉しいんだ」ととらえるのであれば、それはそれで間違ってはいないとも思いますが、しかし多くの人にとっては「解けない・わからない」経験を積み重ね、苦手意識だけ募っていく結果になるでしょう。
文章題を見るときに、「解き方」に意識が行ってしまうと、「解き方を知らない・思い出せないから解けない」となってしまいます。そうして、解けなくて、解き方を聞いて、「そんなの自分は知らなかった・思いつかなかった」となるのです。「やはり、解き方を知らない・思いつかない自分には、算数・数学は向いていないんだな」と思ってしまう人も多いでしょう。そうやって、解けなかった経験が積み重なっていってしまうと、いずれ「どうせこの問題も何かうまく解ける方法があるんでしょ。自分は知らないけど。だったらさっさと教えてよ」と思ってしまうようになりかねません。「算数・数学に苦手意識を持つ人」になってしまう、王道のルートの一つです。

そういった「算数に苦手意識を持ってしまうルート」に入ってしまうことを避けるには、まずは何でもいいから自分で正解を出してみる、という経験を積むことが大事です。何でもいい、というのは、数値をあてはめていってもいい、ということです。例題で言えば、「合わせて10になる数の組み合わせ」というのは、(0を使わないということであれば)「1と9」「2と8」……「9と1」の9パターンしかありません。そのうち、「Aのほうが多い」にあてはまるのは「6と4」「7と3」「8と2」「9と1」の4パターンです。この4つのパターンについて、それぞれ順に問題の条件にあてはまるかどうかを調べていけば、本来、「正解」はわかるのです。
「解いてみよう」の問題も、基本的にはあてはめていけば解けるようにできています。Level 1の3問や、Level 2の(4)などは、まず「((1)なら)合わせて15になる数の組」をあげていくといいでしょう。Level 2の(5)や(6)も、基本的には合計が指定された数になるような組み合わせを考えるといいですが、それぞれ「三角のお皿に載った個数は四角のお皿に載った個数より3個多い」「IさんはGさんより5歳上」も同時に考えながら組み合わせを考えると、候補の数が少なくてすみます。Level 3の問題は、「もし5個入りの袋が1袋だったら」という感じで、いろいろと調べてみればいいでしょう。Level 3については、掛け算と足し算が混ざり、試行錯誤していくこと自体もそこそこ難しいので、低学年のお子さんや算数への苦手意識が強いお子さんは、無理して取り組まなくても大丈夫です。

お子さんがあてはめて問題を解いている様子を見ると、「もっと考えて解きなさい」と言いたくなってしまうかもしれません。しかし、周りのオトナがそういう意識を持っていることが、実は一番危険です。今まで様々な子どもを見てきましたが、「考えていない」ように見える子の多くは、実は「もっと考えなさい」と言われ続けてきた子たちです。「考えなさい」と言われ、自分なりに考えてみて、それでも「解けない・わからない」をくり返してきた子たちです。そうやって傷つく経験を積み重ねた結果、「解き方」が天から降りてくるのを待つ状態になってしまった、という子どもが、実はたくさんいるのです。
「正解」は自分の手の届かないところにある、と思い込んでしまう前に、「正解」は頑張れば自分の手の届くところにある、と思えるようになってほしい、というのが今回の問題の狙いです。いわゆる「〇〇算」に分類される問題もいくつか入っていますが、そういった「解き方」を教えるのではなく、まずは問題の意味を確認してあげて、「あてはめ方」を伝えてあげて、あとは自分で「正解」を見つけられるよう、見守ってあげてください。そうやって「正解」に自分でたどり着いた経験の積み重ねこそ、まわりまわって「考える」力をはぐくむための土壌となるのです。


 いかがでしょうか。
ちなみに、割ってしまったカレー皿は、振り返ると10年以上使っていたもので、それを考えるとむしろ今までよく頑張ってくれたな、とも思います。一応、再度入手可能なのかどうかは調べてみたのですが、オークションサイトやフリマサイトでは見かけるものの、新品を入手することは難しそうなので諦めました。仕方がないので、以前にもらったまま眠っていた、コンビニのキャンペーン皿をカレー皿として使っていきたいと思います。失っても取り戻せるものもあれば、取り戻せないものもある、というのは、当たり前のようですが受け入れていくのも難しく、しかし受け入れて前に進むことも重要ですよね。割れてしまったカレー皿には今まで長い間食卓を支えてくれたことに感謝しつつ、新しいお皿でこれからもおいしい食事が食べられるよう祈りたいと思います。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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