子どもと楽しむ料理の科学

砂糖とは甘味の種類が違う? はちみつの活用法

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

砂糖とはちみつ、どちらを使うのがいいの?

はちみつは甘味と風味を楽しめる調味料のひとつ。ホットケーキやトーストにかけたりホットミルクに入れたりするほか、料理の甘味付けや風味付けとして、砂糖の代わりに使うこともあります。
砂糖とはちみつとを比べると、はちみつには独特の風味があるという以外にはあまり違いがないように思うかもしれません。しかし、実は甘味のもとになる成分が異なるため、甘味の感じ方や性質にも違いがあります。それぞれの特徴を知っていると、砂糖の方が適している場合、はちみつの方が適している場合と、用途に合わせて使い分けられるので、覚えておくとよいでしょう。

はちみつに含まれる糖の甘さ

私たちが砂糖やはちみつをなめると甘く感じるのは、それぞれに甘味の成分が多く含まれているからです。

グラニュー糖や上白糖、三温糖など、いわゆる砂糖の主成分は「スクロース(ショ糖)」と呼ばれるものです。きび砂糖やテンサイ糖のように、ミネラルなどの他の成分を微量に含むものもありますが、基本的にはいずれもほぼスクロースでできています。
一方、はちみつの主成分は「フルクトース(果糖)」と「グルコース(ブドウ糖)」のふたつ。糖は糖でも、スクロースとは違う種類の糖で構成されています。フルクトースの方がグルコースよりもやや多く含まれているのと、フルクトースの方が甘味が強いので、はちみつを食べたときにより強く感じている甘味はフルクトースの甘味でしょう。

スクロースとグルコースとフルクトース、いずれもなめれば甘味を感じる糖分ですが、それぞれ甘さの性質に違いがあります。

まず、温度との関係。スクロースは温度が冷たくても温かくても甘味の強さは変わりませんが、フルクトースは冷やすとより甘くなり、温めると甘味が抑えられるという性質があります。5℃ではスクロースの1.5倍の甘味を感じられますが、60℃ではその半分の0.8倍ほど。冷たい状態で食べるとスクロースよりも強い甘味を感じられるので、冷たいデザートや飲み物に向いています。一方で、お惣菜やお弁当の具のように、調理時は温かく、食べるときには冷えているような料理の甘味付けに使うと、味見をしたときと食べるときとで甘味の感じ方が変わってしまうので、味の調整が難しいという欠点があります。なお、グルコースも冷たい方がやや甘味が強くなる傾向がありますが、5℃ではスクロースの0.6倍、60℃では0.55倍程度なのでフルクトースほど大きな違いはありません。

もう一つの違いは、後味の感じ方です。スクロースの甘味は口の中に長く残りますが、フルクトースやグルコースの甘味はすっきりとキレが良いので、清涼飲料水などの甘味付けにもよく使われています。

今回紹介するレモンのはちみつ漬けも、冷たい水や炭酸で割ったり、アイスにのせたり、さっぱりしたいときに冷やして使っていただくのがオススメです。

温度によって甘味か変化するはちみつは……

冷たい料理に使うのがオススメ。甘さのキレが良いのでさっぱりとした味わいに。

作り方/レシピ



レモンのはちみつ漬け

■材料(作りやすい分量)
レモン 1個
はちみつ 100〜150g程度

※レモンは皮ごと使うので、防カビ剤不使用のものを使用する。

1.レモンを薄切りにする

レモンは皮をよく洗い、2〜3mm厚さの薄切りにする。
(スライサーを使うと簡単です)

 

2.重さをはかる

切ったレモンの重さをはかり、はちみつの量を決める。

<目安>
酸味や苦味の残る大人の味に仕上げる場合は「レモンの重さ×1.25倍」
しっかり甘くて子どもでも食べやすい味に仕上げる場合は「レモンの重さ×1.4倍」
例:レモンの重さが80gで甘口に仕上げる場合のはちみつの量
80g×1.4倍=112g

3.レモンとはちみつを合わせる

清潔な保存容器に、レモンとはちみつを交互に重ね入れる。
はかりの上に容器を置いて、2で決めたはちみつの重さ+レモンの重さになるまではちみつを注ぐようにすると洗い物が少なく済みます。

4.寝かせる

一晩寝かせたら上下を返し、もう一晩寝かせてできあがり。
冷蔵庫で1ヶ月ほど保存可能です。

使い方

はちみつ漬けのレモンを食べたり、シロップ(漬け汁)を薄めて飲んだりします。
はちみつレモンドリンク…冷たい水や炭酸水で割って飲むと、すっきりとした味わいがおいしい飲み物になります。シロップ:水(または炭酸水)=1:3が目安。

トッピングに
・アイスやヨーグルトにかける

・パンにマスカルポーネチーズやクリームチーズを塗って載せる

プラス知識! はちみつを使う場合の注意点

料理やお菓子作りに使う場合、甘味以外の性質も重要になります。フルクトースやグルコースは加熱による「メイラード反応」を起こしやすいので、スクロースよりも焼き色や風味が付きやすいという性質があります。また、フルクトースは保湿性が高いので、料理がよりしっとり仕上がるという効果もあります。鶏の照り焼きや、焼き菓子などに使う場合は、求める仕上がりに合わせて使い分けると良いでしょう。
 はちみつに含まれる酵素にも注意が必要です。花から集めた蜜を利用しやすい状態に変えるため、蜂は様々な酵素を蜜の中に混ぜ込んでいます。そのひとつがアミラーゼという酵素で、デンプンを糖に分解するはたらきがあります。そのため、片栗粉や小麦粉などでとろみをつけている料理にはちみつを入れると、とろみのもととなるデンプンが分解されてしゃばしゃばになってしまうことがあります。酵素は加熱によって壊れるので、とろみのある料理に使う場合は、はちみつを入れてから十分に加熱しましょう(あるメーカーのカレールウには、はちみつを加える場合は、入れてから20分以上煮込むよう書かれています)。

また、1歳未満のお子様が食べるものには、はちみつを使わないようにしましょう。はちみつにはボツリヌス菌という菌が含まれている可能性があり、消化器官が未発達な乳児にはリスクが高い食品です。この菌は熱に強いので、加熱の有無に関わらず、与えてはいけません。

8/27(木)更新の次回では、「片栗粉と小麦粉で食感が変わる? 唐揚げのコツ」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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