子どもと楽しむ料理の科学

ダマにならないホワイトソースの科学

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

いろんな料理に使える「ホワイトソース」

寒い日には、アツアツほかほかのグラタンが食べたくなりますね。特に、ホワイトソースを使ったグラタンは、とろとろクリーミーな食感と濃厚な味わいが冬の食卓にぴったりです。
ホワイトソースはグラタン以外にも、ドリアやラザニアなどのオーブン料理に使ったり、肉や魚のソテーに添えたり、様々な使い方ができます。作り方は、フライパンにたっぷりのバターを溶かし、同量の小麦粉を合わせてじっくり炒めたルウを、牛乳でのばして煮込むだけ。レシピはとてもシンプルなのですが、気をつけないとダマになってしまい、なめらかに作るのは難しそうというイメージで敬遠している人もいるのではないでしょうか。
今回は、ダマを防ぎ、ホワイトソースをおいしくなめらかに作るコツを科学的に解説します。

 

冷めてから混ぜればダマにならない

ホワイトソースがダマになるのには、小麦粉の主成分であるデンプンの性質が関係しています。デンプンは、水と一緒に加熱するとふやけて糊のような状態に変化します。これをデンプンの「糊化」といい、ホワイトソースはこの性質を利用してとろみをつけています。ホワイトソースがダマになるのは、小麦粉が水分(牛乳)と混ざる前に糊化してしまい、粒同士がくっついてかたまりになるためです。したがって、ダマを防ぐにはルウが牛乳と十分に混ざるまで、デンプンを糊化させないようにすることが大切です。

ここでホワイトソースの作り方をおさらいしてみましょう。
(1)小麦粉とバターを一緒にじっくり炒めてホワイトルウを作る。
(2)ホワイトルウに牛乳を入れてルウをのばし、しばらく煮込んでとろみがついたら完成!

この中でポイントになるのが、(2)の牛乳を加えてルウをのばすときの温度です。小麦粉のデンプンは58℃前後で糊化し始めるので、フライパンが熱いうちに牛乳を加えるとフライパンの熱と牛乳の水分とでデンプンが糊化を始めて、ぼってりと粘り気のある状態に変わります。こうなると牛乳を少量ずつ加えて注意深くのばしても、粘り気があって混ぜるのに力がいりますし、ダマができやすくなるので、なめらかに仕上げるのに苦労します。これを防ぐため、バターと小麦粉を炒めてルウができたら、一度フライパンを火からおろし、濡れ布巾の上で冷ましてから牛乳を加えるようにしましょう。

フライパンがある程度冷めたら、ルウに牛乳を少しずつ加えてのばします。この時点ではまだデンプンが糊化していないのでとろみがなく、シャバシャバとした状態ですが、再び火にかけ温めると、デンプンが糊化して徐々にとろみがついてきます。このとき、混ぜながら加熱する、というのも重要です。糊化する前のルウは、完全に牛乳に溶けているわけではないので沈殿しやすく、混ぜずに加熱するとルウが底に沈んだまま糊化されてしまうため、ぼってりとした塊になってダマの原因となります。混ぜながらぷつぷつとやさしく沸騰するまで加熱し、しっかりととろみがついたら出来上がりです。

ダマにならないホワイトソースを作るには……

ルウが糊化しないように冷ますこと&よく混ぜることが大切!

作り方/レシピ


鮭とほうれん草のグラタン

■材料(2〜3人分)
生鮭 2切(150g程度)
じゃがいも(中) 1個(100〜150g程度)
玉ねぎ(中) 1/2個(100g程度)
ほうれん草 1/2束(100g程度)
塩、胡椒
シュレッドチーズ  50g程度
バター     5g+5g
サラダ油

<ルウの材料>
薄力粉 20g
バター 20g
牛乳 300ml
塩 小さじ1/3
ナツメグ(あれば) 少々

 

作り方

1.下ごしらえ

生鮭は大きい骨と皮を除いて一口大に切り、塩、胡椒を振っておく。

じゃがいもは皮をむいて7mm厚さの半月切りにして水にさらす。

5分ほど経ったら水気を切って耐熱容器に入れ、ふんわりとラップをして電子レンジ600Wで2分間加熱する。

玉ねぎは皮を剥いて根元と先端を切り落とし、繊維と平行に薄切りにする。

ほうれん草は根元を切り落とし、5cm幅に切って葉と茎に分けておく。
グラタン皿の内側にサラダ油を薄く塗っておく。

2.鮭に焼き色をつける

温めたフライパンにバター5gを入れて溶かす。鮭は、表面の水気をキッチンペーパーで拭き取ってからフライパンに入れて、中火で両面に焼き色をつけて取り出す。

 

3.野菜を炒める

2で使ったフライパンをキッチンペーパーでさっと拭いたら、バター5gを入れて熱し、玉ねぎを加えて中火で炒める。玉ねぎがしんなりとしてきたらほうれん草を茎、葉の順に加えてサッと炒め、取り出す。

 

4.ルウを作る

3で使ったフライパンをキッチンペーパーでしっかりと拭いたら、バター20gを入れて弱火で溶かし、小さい泡がふつふつとしてきたら薄力粉を加える。焦げないようにへらなどでよく混ぜながら5〜10分ほど炒める。(薄力粉は、皿の上に広げ、ラップをせずに電子レンジで1分間加熱してから加えると、炒め時間を短縮できます)

 


なめらかなクリーム状になったら、一度火からおろし、濡れ布巾の上でフライパンを冷ます。(この間にオーブンを200℃に予熱しておく)

 

5.ホワイトソースを作る

3に牛乳を少しずつ加え、へらでよく混ぜてのばす。(100mlくらいまでは少しずつ加え、サラサラとした液状になってきたら残りはまとめて入れてしまっても大丈夫です)
全て混ざったら火にかけ、やさしく混ぜながら中火で加熱する。沸騰しはじめたら弱火にし、とろみがつくまで煮たら塩、ナツメグを加えて味をととのえる。

 

6.オーブンで焼く

グラタン皿の底にホワイトソースを少量敷いて、2と3の具材を並べる。上から残りのホワイトソースを入れて平らにならしたら、チーズをのせ、200℃のオーブンで15分程度焼き、焼き色がついたら出来上がり。

 

小麦粉を炒めるのはなぜ?

小麦粉を「炒める」というと炒め物のような状態を想像するかもしれませんが、実際には、小麦粉とバターが混ざったペーストを練り混ぜながら弱火で加熱するというイメージです。炒めはじめは小麦粉やバターに含まれる水分でデンプンがふやけるため、粘り気のあるボテッとした状態ですが、じっくりと炒めていくうちに、水分が蒸発してなめらかなクリーム状に変わります。これがルウの仕上がりの合図です。

このようにして小麦粉とバターをよく練り混ぜることで、小麦粉の粒がバターの油脂でコーティングされるため、煮込んだときにデンプンがゆっくりと糊化し、粒同士がくっついてダマになるのを抑えることができます。

また、加熱することによって香りにも変化があります。小麦粉やバターに含まれるタンパク質やアミノ酸と糖とが反応して、クッキーが焼けるときのような香ばしい風味がつき、味わいがグッと良くなります。この反応をメイラード反応といいます。ホワイトルウの仕上がりに適した温度は120〜130℃で、これ以上高くなると、徐々に褐色に色づいてブラウンルウになってしまうので注意が必要です。薄めのフライパンならごく弱火、厚手のフライパンなら弱火〜弱めの中火くらいを目安に、ルウの端がプツプツとするくらいを維持してじっくり炒めましょう。

 

1/28(木)更新の次回では、「卵白が泡立つのはなぜ?メレンゲができる仕組み」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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