小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、最近テレビとエアコンのリモコンをよく間違える小田です。2つとも少し目を離すとすぐどこかに行ってしまうので、わかりやすい場所に置いているのですが、わかりやすい場所が何カ所もあるわけではないので、そうすると必然的に2つとも置く場所は同じになりますよね。まあ、テレビはこっち、エアコンはこっち、と考えるのも面倒なのでそれはそれでいいのですが、仕事に疲れて帰ってきてエアコンをつけようとすると、なぜかテレビのスイッチが入る、というのがここ最近よく起こります。なぜでしょうね。妖怪の仕業でしょうか。
さて、今回は数のパズルです。一応計算をしたりといった算数的な要素もなくはないのですが、タイトルにもあるように、まずはお気軽に楽しんでもらえるとうれしいです。

それでは早速行ってみましょう。

 

Stage12:数のパズルを楽しもう

例題

<例題> 数字の書かれたパネルがあります。このパネルのマスをいくつかぬりつぶし、残った数字の和が、たて・横のどの列も5ずつになるようにしてください。

例題の答え

まずはいつも通り、問題の意味を理解できているかを確認してあげてください。「どの列も合計5ずつになるようにしたい」ということと、「いらないものをぬりつぶす」ことを伝えれば、まずは大丈夫でしょう。それでもうまく伝わらないようでしたら、具体的に1つの列に注目してもらうのがいいでしょう。たとえば、一番左の列に注目してもらい、どれをぬれば残りの合計が5になるかを考えてもらいます。あとは、それをたて・横すべての列についてやっていけばいいよ、と伝えてあげてください。ぬりつぶさない列や、2つ以上ぬりつぶす列があっても構わない、というのも、必要ならば伝えてあげましょう。
答えが出たら、それぞれの列の残った数の和がいくらになっているか、一つひとつ確認してあげてください。すべて5になっていれば正解です。5になっていない列があれば、「ここがいくらになっているね」と指摘してあげてください。

解いてみよう

Level 1

数字の書かれたパネルがあります。このパネルのマスをいくつかぬりつぶし、残った数字の和が、たて・横のどの列も決められた数ずつになるようにしてください。

 

Level 2

数字の書かれたパネルがあります。このパネルのマスをいくつかぬりつぶし、残った数字の和が、たて・横のどの列も決められた数ずつになるようにしてください。

 

Level 3

数字の書かれたパネルがあります。このパネルのマスをいくつかぬりつぶし、残った数字の和が、たて・横のどの列も決められた数ずつになるようにしてください。

 

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

子どもたちに算数・数学を教えていると、「算数・数学ができるようになるために、何をすればいいですか」と聞かれることがしばしばあります(保護者の方からですと、「何をやらせればいいですか」という表現ですね)。しかし実際のところ、この質問に答えるのはなかなか難しいと思っています。答えるのが難しい、というのは、答えがわからないからではなく、答えが決まっているからです。「算数ができるようになるために何をやればいいのか」に対する答えは、「算数の学習」以外にはありません。ただ、そこから先の話がややこしくなるのは、こちらで想定している「算数の学習」と質問者が想定している「算数の学習」が、もしかすると違うかもしれない、というところです。

算数の学習というと、計算練習をしたり、問題集を解いたりすることを想像する人も多いでしょう。しかしそれらは、あくまで算数の学習の手段のひとつであって、算数の学習の本質ではありません。算数の学習の本質とは、端的に言えば「算数的な概念を習得すること」や「算数的な技術を習得すること」「算数的なものの観点を身につけること」です。それらを達成できれば、表面的にどういう手段をとるか、というのは、些細な問題に過ぎません(逆に言えば、いくら計算ドリルを進めても、問題集を解いても、新しく算数的な何かが身についていなければ、それは学習したことにならない、ということですね)。
算数的なものを身につける機会は、身の回りに多く存在します。教育関係者の中には、(特に低年齢のうちは)「遊び」が大事だ、と主張する人も多くいますね。それは、その遊びの中に、算数的なものを身につける機会が多くあるから、というのがひとつの理由です。そしてもうひとつ重要なことは、人はその行動を「自分ごと」だと感じるときに、一番たくさんのことを効率よく吸収できる、ということでしょう。自分のやりたいことをやっているとき、人は多くのことを吸収できます。もっと知りたい・わかりたい、もっとできるようになりたい、そういう気持ちをもつことが、効果的に学習を進めていく大前提です。その意味では、「○○をやらせれば算数ができるようになる!」なんて言ってみても、それを本人がやりたいかどうかによる、としか言えませんよね。もちろん逆に、ドリルや問題集を解いていても、本人が「頑張りたい!」と思ってやっているのであれば、それは効果的な学習になるでしょう。だからこそ、特に保護者の方におかれましては、「何をやらせるのか」という方法論にとらわれず、お子さん自身が、日々の生活の中で何を身につけていっているのか、をよく見てあげて、その成長を温かく見守ってあげてほしいな、と思います。

この連載ではパズル的な問題も多く扱ってきましたし、これからも扱っていくことになるでしょう。しかし、それは別に「パズルをやれば算数ができるようになるよ」と言いたいからではありません。正直に言えば、パズルをたくさんやればパズルが上手くなるだけで、算数ができるようになるかといえば、まあ人によるのでは、と個人的には思っています(逆に、パズルが得意でなくても、算数ができないわけではないので、それはそれで安心してください)。パズルに限った話ではありませんが、そもそも「算数のためにパズルをやる」というのは、パズルに失礼な気もしますしね。パズルはパズルとして楽しめばいいと思います。それではなぜパズル的な問題を紹介するか、というと、「考える」ことを「自分ごとにする」という部分が、今後の学習に役立つかもしれないと思っているからです。多くのパズルは、ある程度の定石があっても、決まった解き方があるわけではありません。どういう考え方をしても、提示された条件を満たすような答えを見つけ出せば、それで正解です。そして、正解しているかどうかは、「模範解答」と照らし合わせなくても、「問題の条件」と見比べれば、自分で判断することが可能です。つまり、その気になれば問題を解き始めてから「正解」を確信するまで、「他者」が必要ありません。だからこそ、特に問題が解けたときには、「自分で解いた」「自分の力で目標を達成した」という感触を得やすいでしょう。それは、パズルの醍醐味のひとつだと思います。
私自身、個人的にパズルが好きなので、パズル好きな人が増えればいいなと思いますが、パズルでなくても、自分でいろいろなことを工夫して試行錯誤していくことを「自分ごと」として捉え、その中でたくさんのことを吸収していってくれる子たちが増えていってくれるといいな、と思います。そして、周りのオトナの皆さんには、そういった子たちを温かく見守ってあげていってほしいな、と思います。


 いかがでしょうか。
そんなこんなで、今年度の本連載も、これで一区切りです。1年間、お付き合いいただきどうもありがとうございました。また来月からの新年度も引き続き連載はさせていただきますので、もしよろしければぜひ今後ともよろしくお願いいたします。
それにしても、あっという間の1年間でしたね。できないことが多い1年だった、というのもありますが、一方で、目の前の出来事の対応に追われた1年でもありました。来年度はもう少し落ち着いて過ごせるといいですよね。温泉旅行にも行きたいと思う今日この頃です。

それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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