子どもと楽しむ料理の科学

仕上がりに差が出る!? ポテトサラダのポイント

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

ポイントを押さえておいしいポテトサラダを作ろう

ご家庭の食卓ではもちろんのこと、洋食屋さんや居酒屋さんでもおなじみのお惣菜、ポテトサラダ。定番の一品ですが、家ごと、店ごとに具の組み合わせや隠し味にバリエーションのある料理でもあります。ハムやきゅうりを入れたオーソドックスなレシピのほか、ハムの代わりにベーコンやツナを使ったり、しば漬けやナッツをアクセントにしたりといったアレンジを楽しむのもいいですよね。
今回紹介するのは、ポテトサラダをおいしく仕上げるための科学的なコツ。オーソドックスなレシピでもアレンジレシピでも、ポテトサラダを作るなら押さえておきたい3つのポイントを解説します。ポテトサラダ以外のサラダにも活かせるのでぜひ覚えておいてくださいね。

 

熱いうちに潰して冷めてから混ぜる

ポイントその1 じゃがいもは熱いうちに潰すこと

じゃがいもはたくさんの細胞が集まってできていて細胞同士がペクチンという成分で接着されています。これを蒸したりゆでたりして加熱すると、ペクチンが溶けてやわらかくなるため、細胞と細胞が剥がれやすくなります。じゃがいもを加熱するとやわらかくなり、押すと簡単に潰れるのはこのためです。

熱いうちは、ペクチンがやわらかく崩れやすいのですが、冷めると徐々に硬くなり、アツアツの状態に比べると細胞が剥がれにくくなります。これを無理に潰そうとすると、細胞の膜が破れて中身が流れ出してしまうのです。じゃがいもは細胞の中にデンプンを多く含むため、無理に潰して細胞膜が破れると、糊状になったデンプンが細胞の外に出て糊のようにベタベタとしてしまいます。熱いうちに潰せば、細胞同士が簡単に剥がれてホロリと崩れるため、デンプンが流れ出すことなく、さらっとした食感に仕上がります。マッシュポテトやポタージュを作るときも、熱いうちに潰すのがオススメです。

ポイントその2 マヨネーズは冷めてから加えること

マヨネーズの主な材料は酢と油と卵。酢と油は本来、混ざりにくく、このふたつを混ぜても時間が経つと分離してしまいますが、マヨネーズでは卵黄に含まれるタンパク質が水と油の間を仲立ちすることで混ざった状態を維持しています。これを「乳化」といいます。しかし、タンパク質は熱に弱く、熱々のじゃがいもにマヨネーズをかけると乳化に必要なタンパク質が壊れ、酢と油が分離してしまうのです。したがって、じゃがいもをゆでたら熱いうちにつぶし、その後、十分に冷ましてからマヨネーズを加えるようにしましょう。

野菜は塩もみor加熱してから

ポイントその3 野菜は塩もみするか加熱してから加えること

生の野菜が塩分に触れると、浸透圧によって水分が出てきます。生野菜のサラダにドレッシングをかけて置いておくと、水気が出てきてびちゃびちゃと水っぽくなってしまいますよね。ポテトサラダやコールスローサラダのように、調味料と野菜を和えてなじませるタイプのサラダや和え物は、野菜をあらかじめ塩もみして水気を出しておくと、和えてから時間が経っても水っぽくなりません。
また、加熱すると細胞膜がこわれて浸透圧がはたらかなくなるので、ゆでたにんじんやブロッコリーのように加熱済みの野菜を使う場合、塩もみの必要はありません。

 

作り方/レシピ

ポテトサラダ

■材料(2〜3人分)
じゃがいも(中) …… 2〜3個(300g程度)
玉ねぎ …… 1/8個(25g程度)
きゅうり …… 1/2本(50g程度)
にんじん …… 1/4本(40g程度)
ハム …… 2枚
卵 …… 1個
レモン汁 …… 小さじ1/2
(なければお酢で代用しても可)
マヨネーズ …… 大さじ3(36g)
胡椒 …… 適量

1.じゃがいもをゆでる

じゃがいもは皮をむき、2cm厚さの半月切りかいちょう切りにして、5分ほど水にさらす。
水気を切って鍋に入れ、かぶるくらいの水を加える。水の1%量の塩(水500mlに小さじ1)を加えて火にかける。沸騰したら弱火にして、串がスッと通る程度にやわらかくなるまでゆでる。
ゆで上がったらゆで汁を捨てて中火にかけ、ときどき揺すりながら、粉ふきいもの要領で水気を飛ばす(焦がさないように注意)。

水気が飛んで粉がふいたらボウルに移し、熱いうちにざっくりと好みの粗さに潰す。

2.卵をかたゆでにする

沸騰したお湯に卵をそっと入れて12分ゆでる。ゆで上がったらすぐに流水で冷やし、殻をむいてたら7mm角に切って1に加える。

3.他の具の下ごしらえをする

きゅうりは薄切りにして塩をひとつまみ加え、軽く混ぜてなじませる。5分ほど経って水気が出てきたらよく絞る。

玉ねぎは繊維に直角に薄切りにして塩をひとつまみ加え、軽く混ぜてなじませる。5分ほど経って水気が出てきたらザルに入れてさっと水で洗い、水気をよく絞る。(生の玉ねぎが苦手な場合は電子レンジで加熱してもOK)

にんじんは薄い半月切り(太い場合はいちょう切り)にして電子レンジ加熱可能な器に入れる。水大さじ1(分量外)を加えて混ぜ、全体に水をなじませたらラップをして、電子レンジ600Wで1分半加熱する。

ハムは5mm幅の短冊切りにする。

4.和える

じゃがいもの粗熱がとれたら、ボウルに全ての材料を合わせてざっくりと混ぜ合わせる。味を見て塩気が足りなければ塩を足す。 器に盛り付けてできあがり。

プラス知識! 塩を加えてゆでるワケ

じゃがいもをゆでるときにお湯に塩を加えると、芋全体に薄く下味がついて味がなじみやすいだけでなく、ペクチンが溶け出しやすくなり、芋がやわらかくなるのを助ける効果があります。
また、ゆで卵をゆでるときは、お湯に1%程度の塩か5%程度のお酢を加えておくと良いでしょう。これは、ヒビが入ったときに中身が外に流れ出るのを抑えるためです。塩やお酢にはタンパク質が固まるのを助ける作用があるので、白身がヒビから溢れ出てもすぐに固まってかさぶたのようになり、それ以上白身が流れ出るのを防いでくれます。

ゆで卵は、ゆであがったらすぐにお湯から取り出して流水か氷水で冷やしましょう。必要以上に火が通るのを防いでちょうど良いゆで加減にしたり、殻が剥きやすくなったりというのに加えて、変色を防ぐという効果もあります。
卵は固ゆでにすると卵黄の外側が青黒くなることがあります。これは、卵白で発生する硫化水素という成分と卵黄に含まれる鉄分が反応して暗緑色の硫化第一鉄という成分ができるため。体に害はありませんが、見た目はあまり良くないですよね。卵を急激に冷やすと殻の近くの圧力が下がり、硫化水素が殻の方へと移動するため、卵黄の変色を抑えることができます。

4/22(木)更新の次回では、「グルテンを取り出してみよう!」について、ご紹介します。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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