小田先生のさんすう力UP教室

やってみる力を育てよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、もうすぐ今年初の誕生日を迎える小田です。歳をとるのは実に1年ぶりなので、うまく歳をとれるように、今から素振りをしているところです。
 さて、初めての方は初めまして、昨年度から引き続きの方はいつもありがとうございます。このコーナーは、私がふだん教え子たちに解いてもらっている問題を紹介したり、その問題でどういうことを身につけてほしいのかを解説したりするコーナーです。とはいえ、そんなに身構える必要はなく、お子さんはもちろんのこと、保護者の方々も、気軽に問題に挑戦してみてほしいと思います。

 それでは早速行ってみましょう。

 

Stage13:やってみる力を育てよう

例題

<例題> 図のような、それぞれ1つずつ数字の書かれたカードが、5枚あります。
これらのカードを2つのグループに分けて、それぞれのグループの数の和が同じになるようにしてください。

 

例題の答え

2と3と5,4と6(10ずつ)

まずは、問題の意味が理解できているか、確認してあげてください。「和」の意味を聞かれたら、「合計」もしくは「あわせた数」と答えてあげればいいでしょう。問題を読むだけではいまいちピンときていないようでしたら、「2つのグループに分けてごらん」と伝えてあげてください。そして、分けたそれぞれのグループに対して、「こちらのグループの数を全部足すといくらになる?」と聞いてあげましょう。それらを聞いたあと、「それが同じになるようにすればいいよ」と伝えてあげればOKです。
それぞれのグループの枚数は、同じでなくても構いません。というより、5枚なので同じ枚数にはなりません。枚数が違っても、書かれている数の合計が同じならOKというのは伝えてあげてください。また、使わないカードがあってはいけません。
お子さんが答えを出したら、それぞれいくらになっているか聞いてあげてください。その際、計算が間違っていたらそれを指摘してあげましょう。計算が正しくできていて、2つのグループでその和が同じになっていれば、正解です。和が違っていれば、「それを同じにするんだよ」と伝えてあげてください。

解いてみよう

Level 1

(1)〜(3)のような、それぞれ1つずつ数字の書かれたカードが、5枚ずつあります。
これらのカードを問題ごとに2つのグループに分けて、それぞれのグループの数の和が同じになるようにしてください。

 

(1)

(2) 

(3)

Level 2

(4)〜(6)のような、それぞれ1つずつ数字の書かれたカードが、6枚ずつあります。
これらのカードを問題ごとに2つのグループに分けて、それぞれのグループの数の和が同じになるようにしてください。

 

(4)

(5)

(6)

Level 3

(7)(8)のような、それぞれ1つずつ数字の書かれたカードが、7枚ずつあります。
これらのカードを問題ごとに2つのグループに分けて、それぞれのグループの数の和が同じになるようにしてください。

 

(7)

(8)

解答

Level 1

(1) 2と4と7,5と8(13ずつ)
(2) 3と5と8,2と14(16ずつ)
(3) 2と6と13,9と12(21ずつ)

Level 2

(4) 1と4と10,2と6と7(15ずつ)
(5) 4と6と9,2と5と12(19ずつ)
(6) 1と2と5と15,9と14(23ずつ)

Level 3

(7) 3と9と13,1と4と6と14(25ずつ)
(8) 4と8と17,2と5と9と13(29ずつ)

さんすう力UPのポイント

算数ができるようになるために大事なことは何か、と聞かれると、「考える力」だと思う人も多いでしょう。もちろん、それはそれで間違いではありません。しかし、様々な子どもたちを見ていく中で、必要以上に「考える力」を強調しすぎることは、むしろ「算数が苦手な子たち」を生み出しているのではないか、と思うようになってきました。
たとえば、今回の問題で「考える」というのは、どういうことを指していると思いますか。今回の問題では、いくつか「上手い解き方」があります。たとえば、「全部のカードの数字を先に足してしまう」という方法はそのひとつですね。例題の場合、5枚のカードの数を全部足してしまうと、その合計は2+3+4+5+6=20となります。ということは、合計が同じ2つのグループに分けると、それぞれの合計は10ずつになるはずです。それがわかれば、実際に分けていくのはずいぶん楽になるでしょう。
さて、子どもたちにこの問題を解いてもらうとき、この「上手い解き方」を思いつくことが「考える」ことだ、と期待する人はどれくらいいるでしょうか。そして、その期待に応えられることのできる子どもが、どれくらいいるでしょうか。この「上手い解き方」は、実際にはほとんどの子どもは初見で思いつくことができません。つまり、この「上手い解き方」を思いつくことを「考えること」とだと思ってしまうと、ほとんどの子どもは「考える力がない」という評価になってしまうのです。しかし、実際には子どもたちはたくさんのことを子どもたちなりに考えています。一生懸命考えているのに、「考えていない」「考える力がない」と思われてしまった子たちは、どう感じるでしょうか。自分には算数は向いていない、そう感じてしまっても仕方ないことかもしれませんね。そういう意味で、子どもの学習を見守る際に、「考える」ことを強調するのは、あまり良いことではないのです。

算数の学習を進めていく中で、「考える」ことよりも、もっと大事にしてほしいことがあります。それは、「やってみる」ことです。今回の問題であれば、例題の解説に書いてあるとおり、どのような分け方でもいいので、実際に2つに分けてみてそれぞれのグループの数の和を計算してみるのです。それで和が一致すればそれが答えですし、一致しなければ別の分け方で試してみればいいだけです。レベル設定(カードの枚数や数字の大きさによる計算の負担)にもよりますが、最初の方の問題であれば、そうやってやってみればそのうち答えにたどりつくでしょう。このルートを通れば、子どもたちに必要な能力は、「適当に2つのグループに分ける力」と「足し算の力」と、あとは「少しの根気」だけです。おそらく、これは先程の「上手い解き方を思いつく力」よりも、(すでに足し算を習っていれば)多くの子どもたちが持っている力でしょう。もちろん、「少しの根気」の部分には出題する側の繊細な調整が必要ですが、その子の持っている力をきちんと見極め、うまく課題のレベルを順々に調整していけば、「実際に正解にたどりついた経験」がその「根気」を下支えしてくれるはずです。その過程の中で、子どもたちは「自分は“算数の世界”の中でも、自分なりに“考えて”成果をつかむことができる」ということを経験していくのです。

子どもが泥臭く試行錯誤している様子を見ているともどかしく感じてしまう、という気持ちもよくわかります。しかし、そうやって「やってみる」経験を積むことが、実は「算数ができる」ようになるためには一番の近道なのです。なかなか答えにたどりつかない子どもを見ていて、何か手助けしてあげたい、という気持ちもわかります。しかし、周りの大人にできることは、その「やってみる」ことへのサポートだけです。たとえば、問題の意味を理解しているかを確認してあげたり、実際に「やってみる」ための具体的な方法を伝えてあげたり、というのは、むしろぜひやってあげてほしいことに入ります。「何をやればいいのか」がわからなければ、「やってみる」ことはできないからです。そのほか、「趣旨と関係ない負担」は減らしてあげるのがいいでしょう。今回の問題で言えば、「実際に数字の書いたカードを作ってあげる」というのは効果的です。「書いたり消したり」というのは、子どもにとっては地味に負担となるのですが、問題の意図と違う種類の負担なので、そういった手間はなるべく減らしてあげて構いません。しかしそれ以外のこと、たとえば「考え方」のヒントを出したりする必要はありません。あとは、お子さんを信じて、ときに励ましつつ、お子さんの頑張っている姿を温かく見守ってあげてください。そうやって「やってみた」経験こそが、そのお子さんの「算数の力」を育む基盤となるでしょう。


 いかがでしょうか。

いろいろとリニューアルしながら続けさせていただいているこの連載ですが、数えてみると今年で10年目になるようです。ありがたいですね。例年、年度初めにあたるこの4月号は、同じようなネタを書かせてもらっているのですが、やはり「試行錯誤することの重要性」については、繰り返しお伝えしていかなければ、と思っています(冒頭のネタも毎年似たような感じですが、それは単なる御愛嬌ということで)。「考える」よりも「やってみる」ことが大事、という話をしましたが、もちろん「考える」こともそれはそれで重要です。「考える」とは具体的にどういうことなのか、「考える力」を伸ばすためには何をすればいいのか、そういった要素を詰め込んだドリルを先月末に上梓いたしましたので、そちらもぜひよろしくお願いいたします。『東大脳さんすうドリル 論理・文章題編』(幻冬舎)です(宣伝でした(笑))。

それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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