子どもと楽しむ料理の科学

白玉粉、もち粉、上新粉、だんご粉の違いを知ろう

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

どのお菓子にどの粉を使うのがおすすめ?

スーパーの粉類売り場に行くと、小麦粉や片栗粉などと一緒に、白玉粉や上新粉、品揃えの良いところではもち粉やだんご粉などの粉も並んでいます。この4つはいずれもお米を原料にした粉の名前ですが、それぞれどんな特徴や違いがあるのかご存じでしょうか。
今回の記事ではこれらの粉の特徴について解説し、それぞれの粉で作ったおだんごと、ゆであずきの缶を使って作る簡単デザートのレシピを紹介します。どの粉も手頃な値段で買えますし、手順もシンプルで簡単なので、ぜひ作り比べて食感の違いを体感してみてください。

 

米粉もいろいろ

お米を砕いて粉にしたものを総称して米粉といい、「うるち米」を使ったものと「もち米」を使ったものとがあります。うるち米は私たちが普段の食事で食べているいわゆる“ご飯”のお米で、もち米はおもちの原料となるお米です。お米の主成分のデンプンには形の違う、アミロースとアミロペクチンの2種類があります。アミロースが直線状の鎖であるのに対して、アミロペクチンは枝分かれした形をしていてお互いに絡み合うので粘り気があります。

もち米のデンプンは100%アミロペクチンなので、粘り気が強いのが特徴です。一方、うるち米はデンプンのうち約2割がアミロース、約8割がアミロペクチンなので、ほどよく粘り、ほどよく歯切れの良い食感になっています。

もち粉はもち米を砕いて粉にしたもので、求肥や大福の皮に使われています。もち粉を使った生地は、おもちのように粘り気があってよくのびるのが特徴です。

一方、上新粉はうるち米を砕いて粉にしたもので、おだんごや柏もち、ういろうの材料として使われます。もち粉に比べるとアミロースの割合が高いので歯切れがよく、粘り気の少ない生地ができます。粘り気を出すため、加熱後にこねたりついたりしてから使われることもあります。

だんご粉はうるち米ともち米をブレンドしたもので、上新粉のコシともち粉の粘りを併せ持ちます。上新粉と違い、加熱後にこねなくてもほどよい粘りのある生地ができるため、手軽におだんごが作れます。

では、白玉粉はどういう粉でしょうか? 下の写真を見ると白玉粉は他の粉と見た目が違いますね。

これは白玉粉だけ製法が異なるためです。他の3種類の粉が、お米をそのまま砕いて粉にしたものであるのに対し、白玉粉はもち米を加工して、主にデンプンの部分を取り出したものです。もち米を水に浸した後、水を加えながら細かく挽き、沈殿したものを乾燥させて作ります。他の粉に比べて製造に手間がかかるので、少し値段が高くなります。

比べてみよう

それぞれの粉で作ったおだんごを比べてみましょう。下の写真は、上新粉、だんご粉、もち粉、白玉粉で作ったおだんごと、それらを手でちぎったものを並べています。ぱっと見どれも同じようなおだんごに見えますが、白玉粉で作ったものは粉の粒子が細かいため、触ってみると表面がつるりとなめらかになっています。また、上新粉で作ったものはあまりのびずにちぎれ、もち粉や白玉粉で作ったものはよくのびてからちぎれていて、原料となるお米の違いが表れています。

まとめると、次のようになります。

だんごのレシピ

材料(6個分)
白玉粉(または上新粉、もち粉、だんご粉) 50g
水 50ml

1.生地を作る

ボウルに粉を入れ、水を分量の2/3程度加えて混ぜ合わせる。

だいたい混ざったら、残りの水を少しずつ加えながら手でよく練り合わせる。粉の状態によってちょうど良い水の量が変わるので、調節しながら加えてちょうど良いところで止める。耳たぶよりも少し固いくらいで、手やボウルにくっつかないなめらかなかたまりになったらOK。

2.丸める

生地を棒状に伸ばして6等分にし、手のひらで丸く形を整える。

芯が残らないよう、中央を指で軽く押さえて平たくする。

3.ゆでる

鍋にお湯を沸かし、沸騰したら2を加えてゆでる。

ゆで時間の目安は4分前後。全てのおだんごが浮いてからさらに1分ゆでる。

4.冷ます 

ゆであがったおだんごを網じゃくしなどですくい取り、冷水を入れたボウルに入れる。一度水を捨てて新しい水を入れ、氷を加えてよく冷やす。

  • 白玉粉のおだんごはつるんとした食感が涼しげなので、冷やしぜんざいやあんみつなど、夏の冷たいデザートにおすすめです。加熱によってやわらかく糊化したデンプンは、低い温度に長く置いておくと、硬くパサパサとしてきます(デンプンの老化)が、アミロペクチンはアミロースに比べて老化しにくいので、その点でも冷たい状態で食べるのに適しています。
  • もち粉のおだんごはとろりとやわらかく、温かいぜんざいによく合います。
  • だんご粉のおだんごは、あんこをのせたりきな粉やみたらし餡をかけたりして食べるのにぴったり。
  • 上新粉は粘りが出にくいため、和菓子作りでは加熱後に一度よくこねてから使われることが多いですが、そのままでも食べられます。だんご粉と同様にあんこやきな粉といっしょに食べてみてください。アミロースが多く老化しやすいので、作ったらその日のうちに食べるとよいでしょう。

ぜんざい

材料(2人分)
ゆであずき(缶) 120g
水 80ml
塩 ひとつまみ
白玉だんご 6個

電子レンジ加熱可能な容器にゆであずきと水を入れ、ラップをして600Wで2分間(1人分なら1分間)加熱する。塩ひとつまみを加えて味をととのえ、器に注ぎ、白玉だんごをのせてできあがり。

★おすすめはもち粉を使ったおだんご。白玉粉のおだんごも合います。

冷やしぜんざい

材料(2人分)
ゆであずき(缶) 120g
水 40ml
氷 40g
塩 少々
白玉だんご 6個

ボウルにゆであずきと水、塩を入れて混ぜ合わせ、氷を加えてさらに混ぜる。

器に注ぎ、白玉をのせて出来上がり。

★白玉粉を使ったおだんごがおすすめです。

あんだんご

材料(2人分)
ゆで小豆の缶詰 50g
おだんご 6個

器にだんごを盛り、ゆで小豆をのせる。

★だんご粉を使ったおだんごがおすすめ。上新粉を使うとより歯切れよく、もち粉や白玉粉を使うとあんころもちのようになります。

白玉だんごをゆでると浮き上がるのはなぜ?

沸騰したお湯に丸めた生地を入れると、はじめは底の方に沈んでいますが、中に火が通るにつれて水面に浮き上がってくるため、ゆであがりのタイミングを見極める目安になります。
なぜおだんごが浮いてくるのでしょうか? これには白玉だんごの「密度」が関係しています。密度とは、体積あたりの質量(≒重さ)のこと。水よりも密度が大きいものは沈み、小さいものは浮かびます。米粉は水よりも密度が大きいので、米粉と水をこねて作った生地は当然、水に沈みます。
ところが、生地を沸騰した水の中に入れると、生地中の水分が加熱されて水蒸気となるためおだんごが膨らみます。おだんごの重さが変わらないまま、水蒸気によって膨らむと、生地の密度が下がります。これによって水よりも密度が小さくなるため、おだんごが浮かび上がるのです。
なお、ゆであがったおだんごを冷水に入れて冷ますと、水蒸気は再び水となり、生地の密度も元に戻るので、再びおだんごは水に沈みます。食感も、ゆでたての熱いうちはふわふわとしていますが、冷水でよく冷やすと、水蒸気によって生じた穴が埋まってキュッと締まった食感に変わります。

6/24(木)更新の次回では、「塩で食感がプリプリに 簡単おいしい塩鶏」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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