小田先生のさんすう力UP教室

計算力を鍛えよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、スポーツドリンクを箱買いした小田です。最近、暑い日が増えてきましたよね。やはり水分補給の重要性を感じます。就寝前の水分補給はとくに大事で、翌朝の寝覚めへの影響も結構大きい気がします。悩むのは、箱買いの際にどのサイズのものを買うかですね。1.5L入りなどを買うと、飲むたびにコップを使うので、食器を洗うのが面倒になります。かといって、直接飲めるサイズのものだと値段が割高なような気がします。今のところ、1.5L入りを買って、家にあるコップを総動員してはいるのですが、またいい案があれば考えてみたいものです。

 さて、今回は計算の迷路です。計算をして、決まった数になるところだけを通ってスタートからゴールまで進んでください。ルールは単純なので、ぜひ気軽に挑戦してみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage16:計算力を鍛えよう

例題

図のような迷路があります。書かれている2つの数の和が、10になるところだけを通って、スタートからゴールまで進んでください。

例題の答え

 

 問題の意味は大丈夫でしょう。「和」の意味がわからない場合は、「足した数」や「合計」と説明してあげてください。まずはお子さんの好きなようにやらせてあげましょう。計算が苦手な子は、指を使っても構いません。むしろ、ぜひ指を使って一緒に数えてあげてください。

 ゴールまでたどりついたら、通ったマスの和をそれぞれ順に確認してあげましょう。すべて「10」のところばかりを通っていれば正解です。もし10にならないところを通っていた場合は、「ここは○○になるよ」と伝えてあげてください。

解いてみよう

Level 1

図のような迷路があります。それぞれ、書かれている2つの数の和や差が、決められた数になるところだけを通って、スタートからゴールまで進んでください。

Level 2

図のような迷路があります。それぞれ、書かれている2つの数の和や差が、決められた数になるところだけを通って、スタートからゴールまで進んでください。

Level 3

図のような迷路があります。それぞれ、書かれている2つの数の和や差が、決められた数になるところだけを通って、スタートからゴールまで進んでください。

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

今回の問題のような、計算が必要な迷路やパズルを子どもたちに解いてもらうと、こっそり指で数える子をしばしば見かけます。そういった子たちを見ると、やはり少し残念な気持ちになってしまいますね。もちろん、指で数えることそのものが悪いわけではありません。むしろ、指を使って計算をすることはぜひ推奨したいと思っています。しかし、それを“こっそり”やる、というのは、その子が指を使って計算することに後ろめたさを感じているからだと思うからです。誰かに「指なんて使っちゃダメ!」というようなことを言われたりしたのかな、と想像すると、心が痛んでしまうのです。

数のセンスとは、数に対するイメージの豊かさです。子どもたちをよくよく見ていると、場面場面に応じて、数をいろいろな面から捉えていることに気づきます。2桁の足し算を暗算でできる子が、別の種類の足し算では指を使って数えていったりすることも、よくあります。具体的にはたとえば、「同じ数を何度も足していく」ときなどです。「3を何回も足していく」計算をすると、その答えは「3、6、9、12、……」となりますね。ここで9から12になるとき、9+3を「9、10、11、12」と数えて考えるのです。確かにこの計算は、「2桁の数同士の足し算」と違った雰囲気を持っています。「24+31」などを計算するとき、24を「20と4」、31を「30と1」と考えると、「20と30で50、4と1で5、あわせて55」と暗算することができますね。しかし、「3ずつ足していったときの9+3=12」は、このように「十の位と一の位に分けて考える」と逆に面倒だと思いませんか。9と3には「十の位」はないので、2桁の足し算とまったく同じわけではありませんが、位取りに注目した考え方で言えば、「3を1+2と捉え、9+1=10、10+2=12」と考える方法もあります。この方法も大事で、その考え方が有効な場面も多いですが、3ずつ足しているときに急にその考え方に切り替えるのは、あまり自然とはいえないでしょう。その意味で、「3ずつ足していったときの9+3=12」を、「9から3つ進んだ数」と捉え、「(指を使って)数えれば答えが出る」と判断することは、とてもいい考えだということができますね。

もちろん、この「3ずつ足していくときの9+3」を「9+1+2」と考えるのはよくない、と言いたいわけではありません。自分で判断して「9+1+2」と考えたのであれば、それはそれで素晴らしいことです。大事なことは、数や計算に対するイメージを豊かにして、その中から「計算しやすい方法」を自分なりに判断するということそのものです。その「方法」の中に、当然「指で数える」ということも含まれる、という話です。とくに、指で数えて計算する方法は計算が苦手な子でも納得がいきやすく、計算への苦手意識のハードルを下げる意味でも有効でしょう。数えていって正しく計算できた、という経験を積めば、それは「最悪、数えていけば正しく計算できる」という根本的な安心感にもつながります。その安心感が、より高度な計算を習得するための下支えになることもあるでしょう。だからこそ、もし指を使って計算することにためらうお子さんがいたら、むしろ堂々と一緒に指で数えてあげてほしいと思います。

今回、計算を迷路にしたのは、「計算練習」というトレーニングを「迷路」という遊びに変えて、楽しく取り組んでほしい、という意図ももちろんあります。しかし、それだけが目的ではありません。単純な計算問題ではなく、迷路にすることで、「正しい計算をする」ことに意識をもっていくことが大きな狙いです。正しい結果さえ得られればいい、ということは、計算の方法自体はどういう方法でもいいということです。さらに言えば、計算の負担だけでなく、「迷路を考える」という脳への負荷も大事なポイントです。本来、計算が必要な場面では、計算のために計算をすることは少ないでしょう。他に何か目的があり、そのために正しい数値が知りたくて計算する、という場面がほとんどなはずです。計算以外の負荷がかかる場面で、指を使うことも含めて、どういう計算が一番やりやすいのかを自分で判断する経験を積んでほしい、というのが、今回の問題の狙いです。


 いかがでしょうか。

 先月、餃子スープにハマっている、というお話をしましたが、そちらの関係で最近少し悩みが出てきました。それは、餃子スープと餃子鍋はどう違うのか、という問題です。ある日、いつものように餃子スープを作るべく冷凍庫を覗いたら、冷凍のうどんを見つけたのですよ。思い立ってスープに入れてみたのですが、当然のように違和感はないわけです。しかし、うどんまで入るとすでにスープではないような気がしてきますよね。もちろん、主役はうどんではなく、餃子なので「餃子うどん」ではないでしょう。かといって、スープというにはボリュームが出てしまいます。これはもう餃子鍋なのではないか、と思ったわけです。そうすると、今度は逆にうどんが入っていなければ鍋ではなくスープなのか、という問題が出てきますよね。難しいところです。これについてはまた引き続き考えていきたいと思います。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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