子どもと楽しむ料理の科学

夏休みに親子で挑戦! おえかきホットケーキ

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

食べるのがもったいない!? おえかきホットケーキの作り方

朝ごはんにもおやつにも嬉しいホットケーキ。こんがりとしたきつね色や、香ばしいにおいが食欲をそそりますよね。
この焼き色や風味は「カラメル化」と「メイラード反応」というふたつの反応によって生み出されます。どちらの反応も、材料に含まれる糖分の量と加熱時間が関わっているため、それらを調整することで焼き色の濃淡をコントロールすることができます。
今回は、焼き色ができる仕組みを利用して、ホットケーキに絵を描く方法を2つ紹介します。

 

カラメル化とメイラード反応

砂糖などの糖類を加熱すると、だんだんきつね色に色づき、香ばしいにおいのカラメルができます。これが糖の「カラメル化」で、プリンのカラメル作りなどに利用されています。

これとは別に、糖をタンパク質やアミノ酸と一緒に加熱すると、褐色の色素とともに様々な香りの成分が生まれます。これは「メイラード反応」といって、お肉の焼き色やパンの耳などの良い風味はこの反応によって生じています。

ホットケーキを加熱するとこんがりきつね色に色づくのは、生地とフライパンとが接する部分で、砂糖や、牛乳に含まれる乳糖がカラメル化したり、他の材料に含まれるタンパク質やアミノ酸と一緒にメイラード反応を起こしたりしているからです。

加熱時間と砂糖の量で色が変わる

カラメル化とメイラード反応は温度が高いほどよく進むので、フライパンの温度が高くなるとその分焼き色もつきやすく、また、加熱時間が長くなるほど反応が進んで焼き色が濃くなります。

 

こちらの写真は【薄力粉150g、ベーキングパウダー小さじ1、砂糖30g、牛乳100ml、卵1個】を混ぜ合わせた生地を冷めたフライパンに入れ、それぞれ弱火で1分半・2分半・3分半・4分半加熱してからひっくり返したものです。加熱時間が長くなるほど色が濃くなっているのがわかりますね。

いわゆる「ホットケーキアート」や「おえかきホットケーキ」などとして紹介されているものは、この性質を利用し、色を濃くしたい部分を最初に描いて加熱し、色を薄くしたい部分を後から描き足していくことで色の濃淡を表現しているものが多いです。この方法では、最初に描いた部分は色が濃く、後から描き足した部分は色が薄くなるので、線画の部分は全体よりも濃い色になります。ところが、別の方法を使うと、ホットケーキ全体の色よりも薄い色で絵を描くこともできます。

こちらの写真は砂糖を加えずに混ぜ合わせた生地を100gずつ3つに分け、ひとつはそのまま、ひとつには砂糖5g、もうひとつには砂糖10gを加え、フライパンで3分半加熱し、ひっくり返したものです。砂糖を加えていないものはほとんど焼き色がつかず、砂糖が多いものほど焼き色が濃くなっているのがわかります。

カラメル化にもメイラード反応にも糖が必要です。牛乳にも乳糖が含まれていますが、ホットケーキの焼き色には砂糖の影響の方が大きいので、砂糖を加えないと、加えた生地に比べて焼き色がとても薄くなります。したがって、砂糖を加えずに作った生地で、その上に砂糖入りの生地を流すと、絵を描いた部分だけが白く残るというわけです。

作り方/レシピ

おえかきホットケーキ(初級編)

材料(2〜3枚分)
薄力粉 150g
グラニュー糖 30g
ベーキングパウダー 小さじ1(4g)
牛乳 80ml+20ml
卵 1個

グラニュー糖がない場合は、上白糖など他の種類の砂糖を使ってもOK。上白糖を使う場合は、グラニュー糖よりも色づきやすいので焼き加減に注意してください。

用意するもの
チャック付きのポリ袋 2枚
フッ素樹脂加工のフライパン、フライパンの蓋
濡れふきん、フライ返しまたはヘラ、ボウル、泡立て器、スプーン、バターナイフ、ハサミ

油をひいて焼くと生地の表面に焼きムラができるので、フッ素樹脂加工のフライパンを使って油をひかずに焼きましょう。

1.生地を作る

ボウルに薄力粉とグラニュー糖、ベーキングパウダーを入れてスプーンで混ぜ合わせる。

大きめのボウルに卵を入れて溶きほぐし、牛乳80mlを加えて混ぜ合わせる。

卵と牛乳が入ったボウルに粉類を加え、泡立て器で粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせる。

2.おえかき用の生地を用意する

チャック付きのポリ袋を2枚用意し、1の生地を30gずつ入れて【おえかき生地】にする。

残った生地に牛乳20mlを足して【土台の生地】にする。

【おえかき生地】の袋は、角のひとつをハサミで小さく切り取り、絞り出し口を作る。2つの袋のうち1つは幅1mm程度の絞り出し口を作り、輪郭用にする。もう1つは、幅4mm程度の絞り出し口を作り、塗りつぶし用にする。

3.絵を描く

冷めた状態のフライパンに2の【おえかき生地】で絵を描く。輪郭用の生地で輪郭を描いたら、塗りつぶす部分に塗りつぶし用の生地を絞り出し、バターナイフやスプーンを使って薄く広げる。細かい部分の修正には爪楊枝を使うと便利。できあがりは左右が反転するので、左右非対称の絵を描くときは注意しましょう。

4.絵の部分を焼く

フライパンを弱火にかける。3分程度焼いて、線の部分や生地の端が7〜8割きつね色に色づいてきたらフライパンを濡れふきんの上に置いて冷ます。

5.土台の生地を入れて焼く

ジューッという音がしなくなったら【土台の生地】を高めの位置から注ぎ入れ、蓋をして弱火にかける。
絵柄の細かい部分に生地が行き渡らずに固まり、焼きあがったときに空洞になってしまうことがあるので、細かい部分には【土台の生地】を流す前に【おえかき生地】を絞り出して塗り潰しておくと良い。
1分半〜2分ほど焼いてプツプツと穴があいてきたらヘラなどでひっくり返す。

蓋を外して2分焼いたらできあがり。

おえかきホットケーキ(発展編)

加熱時間を段階的に変えて、濃い・中間・薄いの3色に塗り分けます。

材料と手順1、2は初級編と同様です。

3.色が濃い部分を描く

冷めた状態のフライパンに2の【おえかき生地】で一番色が濃くなる部分を描く。フライパンを弱火にかけて3分程度焼き、線の部分や生地の端が7〜8割きつね色に色づいてきたらフライパンを濡れふきんの上に置いて冷ます。

4.中間の濃さの部分を描く 

ジューッという音がしなくなったら【おえかき生地】で、中間の濃さの部分を描く。再び弱火にかけ、1分半ほど焼いたらフライパンを濡れふきんの上に置いて冷ます。

5.色が薄い部分と土台を作る

ジューッという音がしなくなったら【土台の生地】を高めの位置から注ぎ入れ、蓋をして弱火にかける。絵柄の細かい部分に生地が行き渡らずに固まり、焼きあがったときに空洞になってしまうことがあるので、細かい部分には【土台の生地】を流す前に【おえかき生地】を絞り出して塗り潰しておくと良い。

1分半〜2分ほど焼いてプツプツと穴があいてきたらヘラなどでひっくり返す。蓋を外して2分焼いたらできあがり。

おえかきホットケーキ(白抜きバージョン)

材料(2〜3枚分)
薄力粉 150g
グラニュー糖 25g
ベーキングパウダー 小さじ1(4g)
牛乳 100ml
卵 1個
※用意するものは初級編と同じ。

1.生地を作る 

ボウルに薄力粉とベーキングパウダーを入れてスプーンで混ぜ合わせる(グラニュー糖はまだ入れない)。大きめのボウルに卵を入れて溶きほぐし、牛乳を加えて混ぜ合わせる。卵と牛乳が入ったボウルに粉類を加え、泡立て器で粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせる。

2.白抜き用の生地を用意する

チャック付きのポリ袋を2枚用意し、1の生地を30gずつ入れて【白抜き生地】にする。残った生地にグラニュー糖25gを加えて泡立て器でよく混ぜて【土台の生地】にする。

【白抜き生地】の袋は、角のひとつをハサミで小さく切り取り、絞り出し口を作る。2つの袋のうち1つは幅1mm程度の絞り出し口を作り、輪郭用にする。もう1つは、幅4mm程度の絞り出し口を作り、塗りつぶし用にする。

3.絵を描く

冷めた状態のフライパンに2の【白抜き生地】で絵を描く。

4.焼く 

フライパンを弱火にかける。30秒程度焼いて、生地が膨らみ表面が乾いてきたらフライパンを濡れふきんの上に置いて冷ます。【土台の生地】を高めの位置から注ぎ入れ、弱火にかける。2分半ほど焼いてプツプツと穴があいてきたらヘラなどでひっくり返す。さらに2分焼いたらできあがり。

材料を変えて実験してみよう

今回紹介したレシピは、加熱時間や砂糖の量を変えると生地の色が変わるという現象を利用していますが、他の条件を変えるとどのような違いが生じるでしょうか。作り比べてみましょう。

例えばベーキングパウダーは化学反応によって二酸化炭素を発生させ、生地を膨らませる役割があります。ということは2倍加えたら、生地は2倍に膨らむのでしょうか。半分にしたら生地の膨らみも半分になるのでしょうか。

小麦粉を薄力粉から強力粉に変えるとどうなるでしょうか。以前「グルテンって何? 小麦粉の特別な性質と手作りうどん」の記事でも紹介したように、薄力粉と強力粉はグルテンの量が異なるため、強力粉で作ると生地の粘り気がより強くなります。膨らみ方や食感にどんな違いがあるか比べてみましょう。

また、今回のレシピや撮影にはグラニュー糖を使いましたが、上白糖を使うと焼き色が付きやすくなります。これは、グラニュー糖が比較的純度の高いショ糖の結晶であるのに対し、上白糖はショ糖の表面に、カラメル化やメイラード反応を起こしやすい果糖やブドウ糖がまぶされているためです。砂糖の種類を変えて焼き色を比べてみましょう。

これらの比較を行う際のポイントは「条件を変えるときは1つずつ」です。複数の条件を同時に変えてしまうと、仕上がりに違いがあっても、それがどの条件の違いによるものなのかわからなくなってしまうからです。夏休みの自由研究にぜひ挑戦してみてください。

8/26(木)更新の次回では、「シロップの濃度が見栄えを決める!ひし形模様の牛乳かん」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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