小田先生のさんすう力UP教室

切った折り紙を広げてみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、体のいろいろなところを温めている小田です。急に寒くなりましたよね。レンジで温めるバンドを愛用しているのですが、昨シーズン大活躍だったジェルタイプのものは寿命を迎えてしまいました。今年は小豆タイプのやつを買ってみたので、今シーズンはそちらで乗り切りたいと思います。

 さて、今回は折り紙の問題です。折り紙をいくつかにたたんで一部を切り落としたとき、広げた形がどうなるかを考えます。飾りなどを作るときに、実際にやってみることもあるかもしれません。まずは楽しくチャレンジしてみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage20:切った折り紙を広げてみよう

例題

折り紙を半分に折り、図の黒い部分をハサミで切り落としました。この折り紙を広げると、どのような形になるでしょう。

 

例題の答え

(黒い部分が切り落とされています)

まずはいつも通り、問題の意味を理解できているかどうかの確認からですね。最初の図は折り紙を2つに折った状態であることを伝えてあげてください。右半分の点線はもともとの折り紙の形で、黒くぬったところは切り落とす部分です。切った後に広げた形を右の点線の枠に書いてほしいのですが、切った形で書いても、解答のように切り落とされたところに色をぬるように書いても構いません。また、折り目は書いても書かなくても大丈夫だと伝えてあげてください。それでもいまいちピンと来ないようでしたら、実際に折り紙を用意して切ってあげましょう。一度開いてからもう一度たたみ、その状態でまず書いてみてもらうといいですね。右の枠にいきなり書くのが難しい場合は、左の図にまず書いてみるよう伝えてあげてください。どうやって書けばいいかがわからなくて手が止まっている場合、ひとつひとつの「切り落としたところ」に注目し、「ここを切り落とすと、こっち側はどうなっていると思う?」と聞いてあげましょう。

今回は、あまりきれいに書けていなくても、お子さんが頑張って書いていれば、基本的に正解にしてあげてください。それほど苦手意識がないお子さんでしたら、場所や形が明らかに違うものについては、指摘してあげてもいいでしょう(角の数が明らかに多かったり、直線のはずが曲線になっていたり、など)。

なかなかイメージするのが難しいようでしたら、切ったものを開いた状態で書いてもらってももちろん構いません。「違う図」を書いている場合も、実際に切って開いてみて、どう違うか確認してもらうのがいいでしょう。

解いてみよう

Level 1

折り紙を半分に折り、図の黒い部分をハサミで切り落としました。この折り紙を広げると、どのような形になるでしょう。

Level 2

折り紙を半分に折り、図の黒い部分をハサミで切り落としました。この折り紙を広げると、どのような形になるでしょう。

Level 3

折り紙を4つに折り、図の黒い部分をハサミで切り落としました。この折り紙を広げると、どのような形になるでしょう。

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

今回のような、「折った折り紙の一部を切り落とし、開いたときの形を考える」という問題はよく見かけますね。よく見かけるということは、やはりそれだけ学んでほしい重要な要素があるということでしょう。

私がこの問題を子どもたちに解いてもらうとき、その背景には2つの意図があります。

まずひとつめは、「形をしっかり見る」「その形を頭の中で操作する」「頭の中でイメージしたものを再現する(描く)」という練習を積んでほしい、ということです。5月号でもお伝えした、「図形のセンス」を身につけるためのトレーニングですね。特に、「形をしっかり見る」という部分については、「図形の形や位置関係を言語化してみる」という意識も持てるようになるといいでしょう。たとえば、例題の形であれば、「左上に三角形があるから、この三角形が右上に来る」「左上の三角形は横よりも縦の方が少し長い」などのように考えることができれば、図を書くのが楽になるはずです。下の図のように、どの点がどの位置に来るのか、印をつけて考えてもいいですね。そうやって、注目する場所を絞って、その部分の特徴を考えることが「しっかり見る」ための第一段階です。「センスがない」と悩む子にこそ、この“第一歩”が重要です。このあたりは5月号でもお伝えしましたね。センスがないように見える一番の原因は、経験不足であることが多いです。頭の中に「図形のイメージ」のストックがなければ、頭の中で図形を動かしたりそれを書いたりすることは、そもそも不可能でしょう。だからこそ、「センスがない」と諦めてしまう前に、まずは「しっかり見る」ための方法を伝え、そして「しっかり見る」経験を積ませてあげたいと思っています。

もうひとつの意図は、「線対称」を体で感じ取ってほしい、ということです。これもまた、「センス」につながる話ですね。人が何かに「美しさ」を感じる基準は、もちろん人によって違います。しかし、それらは完全に個人個人によってバラバラというわけではなく、ある程度は類型化することが可能です。今回の問題で出てくるような「線対称」も、その「美しさ」のうちのひとつと言っていいでしょう。線対称というのは「ある直線を境に入れかえても同じ形になる・同じ場所にある」ような、形・位置のことを指します。今回の折り紙の問題で言うと、折り目がその“ある直線”にあたりますね。折った状態でぴったり重なっている、ということは、開いたときにその折り目を境に同じ形になっている、ということです。つまり、切った後に開いた形は、線対称な形になっているはずです。折り目を軸にして裏返してみても、同じ形になっていますね。

センス、すなわち“感性”を磨くためには、美しいとされているものにたくさん触れることもまた重要です。もちろん、最終的にそれを「美しい」と感じるようになるかどうかは、個々人の価値観ではあるでしょう。ただ、いずれにしても、そういった美しいものに触れる経験を積むことが、美しさを感じ取る感受性を豊かにしていくための助けになる、ということは間違いありません。問題に挑戦してもらう中で、そういった「美しい形」に触れる経験を増やしてほしい、というのも今回のねらいです。その意味では、「問題」と構えてしまうのではなく、“遊び”のひとつとしてとらえてもらうと、より効果的でしょう。ぜひ、実際に折り紙を切ってみて、楽しみながらいろんな形を作ってみてほしいと思います。


 いかがでしょうか。基本的には冷え性なので、冬は夏よりも苦手なのですが(まあ、夏も夏でそこまで得意でもないですが)、それでも冬に楽しみなことがひとつあります。それは、温かいレモン飲料が飲めることです。最近ついにコンビニにも並び始めましたよね。お湯で割って飲む濃縮タイプのものも好きで、昨年はよく飲んでいたのですが、気がつくとスーパーの棚からは消えていて、やはり暑いうちは売れないのかな、と寂しい思いをしていたところです。気温が下がってきたので、そろそろスーパーで買えるようになるのでしょうか。しっかり買い込んで、心と体の温まる日々を過ごしたいと思います。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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