子どもと楽しむ料理の科学

少しの工夫でいつものしゃぶしゃぶをもっと美味しく!

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

お家でポカポカ温まるあったか鍋料理

冬の食卓の定番といえば鍋料理。できたて熱々を食べれば身体の内側から温まりますし、鍋からの蒸気で家の中もポカポカに。水炊きやちゃんこ、おでんなどもおいしいですが、しゃぶしゃぶも手軽でいいですよね。

しゃぶしゃぶは薄切りのお肉や野菜をさっとゆでるだけのシンプルかつ簡単な料理ですが、ゆで湯のひと工夫でさらにおいしくなるんです。また、うま味の濃い食材を一緒にゆでれば、食材から出たうま味でゆで湯がおいしいスープになるので、シメまでおいしくいただけます。

今回の記事では、しゃぶしゃぶをよりおいしくするちょっとした工夫について解説し、シメまで楽しむためのおすすめの具材を紹介します。

お肉のおいしさを引き出すゆで湯の工夫

しゃぶしゃぶの主役はやはりお肉でしょう。そのお肉のおいしさを引き出すヒケツはゆで湯にあります。

お肉のおいしさの中心となっているのは、ほどよい脂と「うま味」です。豚肉や牛肉にはイノシン酸といううま味成分が豊富に含まれていますが、イノシン酸はグルタミン酸といううま味成分と組み合わせると、うま味が最大で7倍近くまで増幅して感じられることが知られています。これを「うま味の相乗効果」といいます。

グルタミン酸は昆布だしに多く含まれているので、しゃぶしゃぶをするならお湯ではなく昆布だしでゆでるのがオススメ。昆布のうま味が肉のうま味を増幅させてくれるのです。おだしというとちょっと難しそう、大変そう、というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、やってみるとそれほど難しくはありません。

一番簡単なのは、昆布を水に浸けて冷蔵庫で一晩置く方法。時間はかかりますが、うま味がしっかり溶け出しつつも雑味やぬめり成分は抽出されにくいので、おいしい昆布だしができます。

また、昆布の雑味やぬめりを避け、うま味成分をよく引き出すには60℃前後が適しているといわれていますが、実は炊飯器の保温機能がだいたいそれくらいの温度帯です。炊飯器の内釜に水と熱湯を1:3程度の割合で入れ、昆布も加えて保温モードで1時間ほど置いておくと、うま味が濃く雑味の少ない昆布だしができあがります。

時間がない場合は、鍋に水と昆布を入れて弱めの中火で煮出します。60℃前後の時間が長くなるよう20分ほどかけてゆっくり温めるのがポイントです。また、沸騰させてしまうと昆布のぬめりが出てくるので、鍋の底に気泡がプツプツとついて湯気が上がりはじめたら昆布を引き上げましょう。

ゆで湯にお塩をひとさじ

昆布だしが用意できたら、ここに塩を加えます。塩味にはうま味の感じ方を強める効果があるので、ゆでる際に肉全体に薄く塩味をまとわせることで肉のうま味がしっかりと感じられるのです。また、ポン酢などのタレをつける量が少なく済むので、肉や野菜そのものの味を楽しむことができます。

塩の量は、ゆで湯の0.5%程度。1リットルに対して5gで、サラサラとしたタイプの塩なら小さじ1弱、しっとりしたタイプの塩なら小さじ1が目安です。

肉に薄く塩味をつけておくとおいしいのはしゃぶしゃぶに限ったことではありません。例えばステーキを作る際、後からソースをかける場合でも、肉に塩で下味をつけてから焼くと肉の味が濃く感じられます。

作り方/レシピ

材料(2人分)
<具材>
しゃぶしゃぶ用薄切り肉(牛でも豚でもお好みで) … 300g
白菜 … 1/8株
長ネギ … 1本
しいたけ … 4枚
このほかに、人参、春菊、ほうれん草、えのきなどお好みで。今回は小さめの人参1本を使いました。

<だし>
水 … 1リットル
昆布 … 10g
塩 … 5g
(サラサラとしたタイプの塩なら小さじ1弱、しっとりしたタイプの塩なら小さじ1)
※量は鍋の大きさに合わせて調節してください

ポン酢やゴマだれなどお好みのタレ

作り方

1.昆布だしをひく

a 水出し法:水に昆布を浸す。冷蔵庫でひと晩置いたら昆布を取り出す。

b 炊飯器保温法:水250mlと熱湯750mlを合わせて炊飯器の内釜に入れ、昆布を加える。炊飯器の保温モードで1時間置いたら昆布を取り出す。

c 煮出し法:鍋に水と昆布を入れて弱めの中火にかけ20分ほどかけてゆっくり温める。鍋の底に気泡がプツプツとついて湯気が上がりはじめたら、沸騰する前に昆布を引き上げる。

2.材料を切る

白菜の根元の硬い部分は、火が通りやすいように包丁を斜めに入れてそぎ切りにする。葉の部分はざく切りにする。

しいたけは軸を切り落とし、飾り切りにするか、十字に切り込みを入れる。

長ネギは斜め薄切りにする。

人参などの根菜は火が通りやすいよう薄切りにし(ピーラーやスライサーを使うと便利です)、葉野菜は食べやすい大きさに切る。

3.白菜としいたけを煮る 

鍋に1の昆布だしと塩を入れ、白菜の硬い部分としいたけを入れて煮る。白菜に火が通ったら準備完了。

 

4.しゃぶしゃぶする

細かい泡がプツプツと上がり、激しく沸騰しない程度に火加減を調整する。適宜、肉や野菜を入れ、火が通ったらポン酢やゴマだれなどにつけて食べる。

具材選びにもひと工夫

うま味成分が豊富に含まれているのは昆布だけではありません。グルタミン酸は白菜やネギ、春菊、ほうれん草、大根、人参などの野菜にも多く含まれているので、これらの野菜を一緒に煮ることで、ゆで湯のうま味がさらに濃くなります。昆布だしで豚肉とほうれん草をゆでただけの鍋を「常夜鍋」といいますが、実はこれ、シンプルながらもうま味の相乗効果を取り入れたおいしい組み合わせになっています。

また、きのこを干したり加熱したりすると「グアニル酸」といううま味成分が作られます。これはイノシン酸と同様、グルタミン酸と組み合わせることでうま味が増して感じられる性質があるので、椎茸やえのきなどのきのこを入れるとゆで湯のうま味がさらに濃くなります。

そして、ひと通りしゃぶしゃぶを楽しんだら、最後に残った煮汁を飲んでみてください。肉と野菜ときのこのうま味がたっぷりで、お吸い物やスープのようなまろやかな味わいになっているはずです。シメには、醤油で塩加減を調節し、ご飯にかけてお茶漬けのようにして食べてもいいですし、そうめんを入れてにゅうめんにしてもおいしいですよ。

 

2/24(木)更新の次回では、「ふっくらおいしいおにぎりの握り方」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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