子どもと楽しむ料理の科学

下ごしらえで見栄えよく たたきごぼうと栗きんとん

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

手作りのおせち料理でお正月を

お正月の食卓といえばおせち料理……ですが、最近はおせちを用意しない家庭も増えているようですね。作るのが大変だから、不人気な料理が余ってしまうから、などが理由のようです。確かに、たくさんの品数を用意してお重に詰めてと、きっちりやろうとすると面倒ですが、作りやすいものや家族が好きなメニューを数品作り、大皿に盛り付けて出すだけでもお正月らしさを味わえますよ。それぞれの料理の縁起やいわれについて話しながら食べるのもいいですね。

今回の記事では、手軽に作れて普段のおかずにも便利なたたきごぼうと、和菓子のように甘くて子どもにも人気な栗きんとんの作り方を紹介します。せっかくのハレの日の料理なので、下ごしらえのポイントも押さえて見栄えよく仕上げましょう。

 

野菜の断面が変色してしまう理由

おせち料理の定番食材にごぼうとレンコンがあります。ごぼうは地中深くにしっかりと根をはることから「家や家業がその土地に根付くように」「細く長く生きられるように」と家の繁栄や長寿を願って食べられる縁起物です。また、レンコンには穴が多くあいていることから「将来の見通しが良くなるように」という願いが込められています。

これらの食材には、切ってしばらくすると断面が褐色に変色してしまうという特徴があります。ナスやウドなどの野菜や、桃、リンゴ、バナナ、アボカドなどの果物でも同様の現象が見られます。これは野菜や果物に含まれるポリフェノールが空気中の酸素と出会い、酸化されることで褐色の物質に変わってしまうのが原因です。

健康に害はありませんし味にも影響しないので、普段の料理であればあまり気にしなくてもよいのですが、ハレの日の料理はせっかくなので見た目もきれいに仕上げたいものです。おせち料理のたたきごぼうや酢蓮(酢レンコン)は、普段のおかずにも使えるシンプルな料理ですが、変色を抑えて白っぽく仕上げることで特別な日らしい少しよそ行きの見栄えになりますよ。

水にひたして変色を防ぐ

この変色は、野菜や果物の細胞内に存在する「ポリフェノール」とこれを酸化する「酵素」、そして空気中にある「酸素」の3つによって引き起こされます。したがって、このどれかを取り除いたりそのはたらきを邪魔したりできれば、変色を防ぐことができるというわけです。

一番簡単なのは水にひたすこと。表面が水で覆われると酸素が遮断されて酸化が進みにくくなります。また、ポリフェノールや酵素は水に溶けやすいので、これらを水中に溶かし出す効果もあります。ごぼうやレンコン、ナスなどの野菜は切ったらすぐに水にひたして10分ほど置いてから調理するとよいでしょう。

また、塩分や酸は酵素のはたらきを抑えるはたらきがあるので、食塩水や酢水につけたりレモン汁を振りかけたりするのも効果的です。なかでも、レモンに含まれるビタミンCは酸化されやすいため、ポリフェノールの代わりに酸化されることで変色を抑える効果もあります。ごぼうやレンコンはゆでるときにお酢を加えると、変色を防ぐだけでなく、ペクチンの分解を抑えて食感をシャキシャキ歯切れよくする作用もあります。

栗きんとんに使うさつまいもも、ポリフェノールの酸化で色が悪くなりやすい食材です。栗きんとんを色良く仕上げるポイントについては、後半で紹介します。

作り方/レシピ

たたきごぼう

材料(作りやすい分量)

・ごぼう 1本(150g)
<和え衣の材料>
・すりごま 大さじ1
・うす口しょうゆ 大さじ1
・砂糖 大さじ1
・酢 大さじ1/2

他のおせち料理と一緒に少量ずつ盛り付ける場合は上記の分量で約4人分。普段のおかずとして1品にするなら2〜3人分です。

1.ごぼうの下ごしらえ

ごぼうは水でよく洗い、包丁の背で皮をこそげ取る。15cm長さに切って水に5分程度ひたしておく。

2.ゆでる 鍋に酢水とごぼうを入れて火にかけ、沸騰したら火を弱める。5分ほどゆでたら水にとって冷ます。ちょうどいい大きさの鍋がない場合はフライパンでもよい。(酢水は水500mlに対して酢大さじ1が目安。酢は分量外。)

3.切って割く

めん棒でたたいてヒビを入れたら、5cm幅に切り、手で2〜3等分に割く。長さをそろえて切ると盛り付けたときにきれいです。
(たたいて割くことで和え衣が絡みやすく、また、繊維がやわらかくなって食べやすくなります。)

4.和える

ボウルに和え衣の材料を入れて混ぜ合わせ、ごぼうを加えて和えたらできあがり。

時間が経ってもおいしい酢飯の秘密」で酢蓮(酢レンコン)の作り方も紹介しています。

栗きんとん

材料(作りやすい分量)

栗の甘露煮 10粒
さつまいも 300〜400g
クチナシの実 1〜2個
砂糖 100g
みりん 大さじ2
塩 少々
栗の甘露煮の蜜

1.下ごしらえ

大きめのボウルに水を張っておく。さつまいもを1.5cm厚さの輪切りにして、切ったものから水の入ったボウルに入れる。ボウルから1つずつ取り出して皮を厚めに剥く。水を2〜3回取り替えながら、10分ほど水にさらしておく。

クチナシの実は包丁の腹で潰して、不織布の袋に入れておく(不織布の袋はお茶パックや出汁用パックとして百円均一ショップなどに売られています)。

2.ゆでる

鍋にさつまいもとかぶるくらいの水、クチナシの実を入れて火にかける。沸騰したら、さつまいもが踊らない程度に火を弱め、やわらかくなるまでゆでる。

 

3.裏ごしする

さつまいもに串がスッと通るくらいまでやわらかくなったら火を止める。さつまいもを湯からひとつずつ取り出して裏ごしする。
(冷めると裏ごししにくく粘りが出やすいので、裏ごしする直前まで湯につけて保温しておきます。粘りが出る理由はポテトサラダのジャガイモと同様です。)
参考:「仕上がりに差が出る!? ポテトサラダのポイント

 

4.練る

裏ごししたさつまいもと砂糖、塩、みりんを鍋に入れ、中火にかける(深めのフライパンを使うと焦げ付きにくいです)。全体が温まってきたら弱火にして、焦げ付かないようヘラで混ぜながら滑らかになるまで練る。味を見ながらお好みで甘露煮の蜜も加える。

 

5.仕上げ

みりんのアルコールのにおいがしなくなり、水分が飛んでほどよい硬さになったら、汁気を切った栗の甘露煮を加える。栗を潰さないようにやさしく混ぜて全体がなじんだらできあがり。

皮は厚めに剥くと綺麗な黄金色に

さつまいもも、ポリフェノールの酸化で色が悪くなりやすい食材です。また、断面からにじみ出る白い乳液にはヤラピンという成分が含まれていて、これも空気に触れると黒っぽく変色してしまいます。

 栗きんとんは、甘く炊いた栗にさつまいもの餡をまとわせた料理で、見た目が黄金色の財宝のようであることから金運・商売繁盛の縁起物とされています。したがって、芋餡を美しく黄金色に仕上げるのが肝です。さつまいもをゆでる際にクチナシの実も一緒に入れると、クチナシの色素で鮮やかな山吹色に染まりますが、ポリフェノールやヤラピンによる色のくすみを防ぐことも重要です。

 そのためには、レンコンやごぼうと同様、切ったら水にひたしておくこと。さらに、さつまいもの場合は皮を厚めに剥くのも効果的です。さつまいもの断面をよく見ると、皮の下に2〜3mm厚さの層があります。この部分はアクが多く変色しやすいので、ここをしっかりと剥きとってから調理すると色よく仕上がります。もったいないと思う場合は、皮の部分をまとめて素揚げにし、蜜を絡めて大学芋のようにして食べるとおいしいですよ。

 

1/27(木)更新の次回では、「少しの工夫でいつものしゃぶしゃぶをもっと美味しく!」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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