親と子の本棚

「わりきれない」友だち

子どもには本好きになってほしいけれど、どう選べばよいかわからない……。そんなときはこちらの「本棚」を参考にされてみてはいかがでしょうか。

忘れ物をしないためには

『しんぱいなことが ありすぎます!』より

「きょうは、国語と 算数と 体育と……」/ももは、朝から 五回も、ランドセルの 中を 見ました。」――工藤純子『しんぱいなことが ありすぎます!』のはじまりだ。小学1年生のももは、まだ一度も忘れ物をしたことがない。さきちゃんも、けんたくんも、ゆうかちゃんも、忘れ物をして、こまっていた。ももは、絶対に忘れ物をしたくない。

「もも、ちこくしちゃうよ!」
 お母さんに いわれて、ももは きめました。
「ぜーんぶ もっていく!」
 教科書や ノートを、ぎゅうぎゅう ランドセルに つめこみました。
 これで あんしん!
「行ってきます!」
 ももは、よいしょっと ランドセルを せおって、家を 出ました。

ももがよろよろ歩いていると、同じクラスのかずまくんに会う。「ももっち、おっはよー!」といったかずまくんは、「ももっち、ヤドカリみたいだな」「ランドセルが パンパンで、にもつも いっぱい」ともいう。気がつくと、かずまくんのランドセルは軽そうで、ぴょんぴょん跳びはねながら、もものあとをついてくる。

石をけりながら帰る

ももが「かずまくん、うわばきは?」と聞くと、「がっこー」。「絵の具セットは?」「がっこー」「音楽バッグは?」「がっこー」――杉山先生は、「家に もって帰って ください」といっているのに。かずまくんは、教科書もノートもみんな学校に置きっぱなしだから、忘れ物はしないかもしれないけれど、家で宿題ができない。かずまくんは、宿題を忘れて、先生にしかられても元気だ。ももは、それがふしぎでならない。
数井美治『ながみちくんがわからない』というタイトルは、語り手の「わたし」のつぶやきだ。ながみちくんは、……

ふまじめで、授業中に平気でマンガを読んでいたりするくせに、給食の時間、ともだちの苦手なおかずを食べてあげたり、教室の花びんに、そっと花をかざったりしている。

わりきれる、わり算が好きな「わたし」にとって、同じクラスのながみちくんは、何を考えているのかわからない、わりきれない男の子だ。わりきれなくて、「あまり」が出るような。わからなくて落ち着かない「わたし」は、ながみちくんを研究することにする。
「わたし」は放課後、ながみちくんの、ほうれん草色のランドセルを追いかける。靴をはきかえた、ながみちくんは、かさ立ての下から取りだした灰色の石をけりながら帰る。石をけりながら、道を行ったり来たり。まっすぐに進まない。いったい、なんのために?
ながみちくんを研究しているうちに、秋の空は、あかね色に暮れはじめる。画家の奥野哉子さんが、ながみちくんと「わたし」と秋の空を描いて、印象的な本になった。「わたし」には、ながみちくんがわかったのだろうか。

散歩をしたことがない友だち

マージョリー・ワインマン・シャーマットバーバラ・クー二ーの絵本『ホイホイとフムフム』のオポッサムのホイホイは、友だちのフムフムの家をたずねる。――「いっしょに さんぽに いこうって さそいに きたの」でも、フムフムは、一度も散歩をしたことがない。ようやく、いっしょに出かけることにするが、……

「そのまえに ちょっと ひとやすみ しなさいよ。
すわって あしを のばしたらどう?
そして まどから そとを みてごらん。
うちに いるのも いいものだよ。
いろんなことを かんがえられるし、からだじゅうの ちも しずかだし」

フムフムは、こういって、まず、二人分のお茶をいれる。
やっと、ふたりの散歩がはじまって、ホイホイが「はなうたでも うたったら?」というと、フムフムは、「いや、べつに いいよ」「うたって ほしいなら うたうけど」というのだ。

今月ご紹介した本

『しんぱいなことが ありすぎます!』
工藤純子・作、吉田尚令・絵
金の星社、2021年
学校からの帰り道、ももは、また、かずまくんといっしょになる。かずまくんは、川ぞいの土手の鉄の柵を黄色いかさの先でカンカン鳴らしながらやってきた。学校に置いたままだった、かさだ。「あれ、きっと、川のぬしだ。ふねくらい おっきいもん」――ももは、かずまくんが川に大きなコイがいるというので、柵のあいだから、のぞきこむ。

『ながみちくんがわからない』
作 数井美治、絵 奥野哉子
BL出版、2021年
一般財団法人 大阪国際児童文学振興財団主催「第37回 日産 童話と絵本のグランプリ」童話部門の大賞受賞作品が本になった。応募された2,283編のなかから選ばれた1編だ。

『ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ』
マージョリー・ワインマン・シャーマット 文、バーバラ・クーニー 絵、福本友美子 訳
ほるぷ出版、2018年
やがて、フムフムは、つかれて、少し休むという。草の上に横になって、ホイホイにおなかをさすってほしいともいう。また、しばらく歩くと、フムフムは、頭がいたくなって、ホイホイが川の水でぬらしたスカーフで冷やしてやる。しかし、また歩いていくと、今度は、ホイホイがつかれて、うごけなくなってしまう。

プロフィール

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)

1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。日本児童文学学会会長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

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