小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、今年もパンのシールを集めている小田です。お皿がもらえる例のお祭りです。本格的に参戦しだしたのはここ数年の話なのですが、いただいたお皿はいずれも丈夫で使い勝手がいいので、とても重宝しています。ただ、最近コンビニでは、パンはそのコンビニのプライベートブランドのものが多いため、シールのついているパンがかなり少ない気がします。シールの入手場所が限られてしまい、集めきるのはなかなか大変ではありますが、今年も頑張りたいと思います。

 さて、今回は数のパズルです。サブタイトルにもある通り、楽しんでもらうことが一番大事です。まずは気軽にチャレンジしてみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage24:数のパズルを楽しもう

例題

次の5枚のカードのなかから、和が10になるペアを2つ作ったとき、余るカードはどれですか。

 

例題の答え

6 (2と8,3と7でそれぞれ10になる)

最初はやはり、問題の意味の確認からですね。「ペア」が「2枚組」であることや、「和」が「合計」であることは、知らないようでしたら伝えてあげてください。「2枚であわせて10になる組を2つ作る」というところがわかっていれば、それでOKです。同じカードを複数回使っていいかどうかが気になっているようでしたら、「それぞれ1回ずつしか使えない」ことは伝えてあげましょう。
お子さんが答えを見つけたら、まずは「どれとどれで10になったか」を聞いてあげてください。2組ともそれぞれ合計が10になっていればOKです。なっていない場合は、それぞれの組について「なっている・なっていない」と伝えてあげて構いません。問題では「余るカードはどれか」と聞かれていますが、問題の本質は「2組作る」ところですので、作った2組を答えていても正解にしてあげてください。後ほどお伝えするような、「2組作らなくても残りカードがわかる方法」で解いた場合も、それはそれでOKです。
1組見つけてしばらく止まってしまっている場合は、その1組があっているかどうかを伝えてあげても大丈夫です。書いたり消したりが負担になっているようでしたら、実際に「数字の書かれたカード」を作ってあげるのもいいでしょう。

解いてみよう

Level 1

次の5枚ずつのカードのなかから、和が決められた数になるペアをそれぞれ2つ作ったとき、余るカードはどれですか。

(1) 2枚で12を2組

(2) 2枚で15を2組

(3) 2枚で18を2組

Level 2

次の7枚ずつのカードのなかから、和が決められた数になるペアをそれぞれ3つ作ったとき、余るカードはどれですか。

(4) 2枚で15を3組

(5) 2枚で20を3組

(6) 2枚で25を3組

Level 3

次の7枚ずつのカードのなかから、和が決められた数になる3枚組をそれぞれ2つ作ったとき、余るカードはどれですか。

(7) 3枚で20を2組

(8) 3枚で25を2組

解答

Level 1

(1) 6(3と9,5と7で12)

(2) 12(6と9,2と13で15)

(3) 4(5と13,7と11で18)

 

Level 2

(4) 10(7と8,4と11,3と12で15)

(5) 16(6と14,9と11,3と17で20)

(6) 9(8と17,4と21,12と13で25)

 

Level 3

(7) 8(4と7と9,3と5と12で20)

(8) 14(5と9と11,3と6と16で25)

 

さんすう力UPのポイント

「算数の勉強」と言われたとき、具体的に何を思い浮かべますか。算数の授業を受けることが「算数の勉強」なのでしょうか。算数の問題を解くことが「算数の勉強」なのでしょうか。算数の勉強をしたい、算数の勉強をしてほしい、と思うことは、ままあるでしょう。しかしそう思ったとき、何をしたら「算数の勉強をした」ことになるのか、ぜひ一度、考えてみてほしいのです。

算数に限った話ではありませんが、勉強というのはそもそも、「新しく何かを身につけること」です。それまでわかっていなかったことをわかるようになったり、それまでできなかったことをできるようになったり、そういった「ちょっとしたレベルアップを積み重ねること」が「勉強する」ということです。その意味では、授業を受けたり問題を解いたりというのはあくまで勉強の手法であり、それそのものが「勉強」ではないのだ、と言うことができるでしょう。

今年度も、さまざまな問題を紹介させていただきましたね。しかしこれらの問題は、別に「解けるようになってほしい」という意図で出題したものではありません。むしろ正直に言えば、ご紹介してきた問題を「解けるようになる」ことに、あまり意味はないでしょう。大事なことは、その問題に取り組む過程で何を新しく得られるかです。たとえば今回の問題では、それはやはり「計算のイメージ」でしょう。

7月号でもお伝えした通り、計算練習には「計算のための計算」ではなく、「何かの目的のための過程での計算」が大事です。例題では、「足して10になるペアを探す」ために、「2+6」や「3+8」など、いろいろと計算してみることになりますね。その過程を通して、計算練習を積み、計算力を身につけていくことができれば、それは立派に「算数の勉強」をしたことになるでしょう。また、途中で「10から2を引いてみればいいのでは」ということに気づくかもしれません。そうすると、「足し算と引き算の関係」についてのイメージを獲得することもできますね。さらに、「すべて(5枚とも)足してしまえば26になるから、10を2つ作ると残るのは6」ということに気づくかもしれません。そこまで気づけば、「数の和」についてのイメージも、相当豊かになっていることでしょう。そういったことも、「算数の勉強」のひとつです。
ただもちろんこれは、この問題を解く過程の中で、いろいろと試行錯誤して、自分でイメージを獲得していけば、という話です。いきなり「全部足して10を2つ引けば答えが分かる」ということを教えてしまっても、あまり意味はありません。「この問題」は解けるようになるかもしれませんが、それだけです。「この問題を解けるようになった」というのは、確かに「算数の勉強」のひとつかもしれませんが、成果としてはそれほど大きくはないでしょう。また、すでにその“攻略法”を知っている人がこの問題を解いても、「計算についてのイメージ」がさらに豊かになることは、あまりないかもしれません。これもやはり「算数の勉強」とは言いづらいですね。そういう場合は、この問題を無理に解く必要もないでしょう(もちろん、楽しいから解きたい、という場合は、好きに解いてもらえばいいとも思います)。
「算数の勉強」をするときには、何をやるかではなく、それを通して何を得られるか、をぜひ意識してみてください。今年度ご紹介した問題については、各回それぞれ丁寧に「それを通して何を身につけてほしいか」をご説明してきたつもりです。そういったことを意識しながら学習を進められるようになると、効率よく「勉強」を進めることができるでしょう。せっかく勉強をするのであれば、ぜひ実りの多い学習を進めてほしいと思います。


 いかがでしょうか。
実は100名城スタンプを集めるのが趣味だったりするのですが、今年度は結局、隙を見てようやく1つ増やせただけでした。来年度は、もっと気軽にいろいろなところに遊びに行けるような状態になればいいですよね。続100名城もあって、全部で200個スタンプを集めないといけないので、なかなか大変です。

 そんなこんなで、今年度も今回で終わりです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。来年度も引き続きこちらのコーナーは担当させていただくので、今後ともよろしくお願いいたします。

 それではまた来年度!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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