小田先生のさんすう力UP教室

図形のセンスを鍛えよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、100名城スタンプラリーに挑戦中の小田です。昨年度はまったく行けていなかったのですが、今年はいくつか行ければいいな、と思っています。なんせ100個ですからね。1年に5つ行っても20年かかるペースです。長生きもしつつ、気長に取り組めればいいなあ、と思っていますが。
 さて、今回は図形の問題です。フリーハンドで図形を書いてみよう! というお題なので、「問題」というのとはまた少し違う感じではありますが、これもとても大事な話です。もちろん、正解・不正解というのはありませんので、気軽に挑戦してみてください。
 それでは早速問題に行ってみましょう。

Stage26:図形のセンスを鍛えよう

 正方形を、なるべく正確にかいてみてください。
 ただし、定規や分度器、コンパスなどの道具を使ってはいけません。

指導のヒント

 定規や分度器、コンパスを使わないからといって、ノートの端や鉛筆を定規代わりに使っていい、ということではありません。冒頭でもお伝えした通り、今回の問題は「フリーハンドでかく」というのがテーマです。
 もちろん、厳密にかくことが大事ではなく、“なるべく正確に”かいてみよう、とがんばることそのものが重要です。
 「正方形」を知らないお子さまには、実際に「正方形」の形をした折り紙などを見せてあげてください。その際には、「四つの辺と四つの角がそれぞれ等しい四角形」という正方形の“定義”を天下り的に与えるのではなく、「正方形ではない四角形(長方形やひし形など)」を見せてあげて、「どこが違う?」と聞いてあげると、より学習が深まるでしょう。

解答

 それなりに正確にかけていればOKです。
 とくに正解・不正解というのはありませんが、かいてみた図をいろいろな向きに向けて、どの方向から見ても「正方形」に見えるかどうか、確認してみてください。
 「あまりうまくかけていない」ときは、見る方向を変えてみることで、意外とすぐに気づくでしょう。

さんすう力UPのポイント

 図形のセンスを身につけたい、もしくは(お子さまに)身につけてほしい、と思っている人も多いでしょう。ひとくちに「図形のセンス」といってもいろいろとありますが、まずその根本にあるものの一つは、「図形を頭の中で再現する力」です。しかし、それじゃあ頭の中で図形をイメージするトレーニングをすればいいのか、というと、そういうわけではありません。もちろん、それはそれで無駄ではありませんが、一つ大きな問題があります。頭の中で再現した図形は、人に(もちろん自分にも)見えない、ということです。
 頭の中で図形を再現したとしても、それが正しいイメージでなければあまり意味がありません。しかし外から見えないということは、本当に正しくイメージできているかどうかわからない、ということでもあるのです。しかも困ったことに、人間は案外いい加減な生き物です。頭の中で思い描いたイメージは、往々にして現実のものと違う形をしているのです。

 そこで、再現したものが正しいかどうかを判断し、正しくなければイメージを修正していくために役に立つのが、「フリーハンドで図形をかいてみる」というトレーニングです。実際にかいてみれば、正しく再現できているかどうかがわかります。自分では正しくかけて(再現できて)いるつもりでも、角度を変えてみるとズレている、ということもよくあります。そうやって客観的にチェックし、修正していくことで、頭の中のイメージもより正確になっていくでしょう。

 今回はまず「正方形」というお題を出しましたが、慣れていないお子さまには難しいかもしれません。図形をかきなれていないお子さまは、まず「直線(まっすぐな線)」から練習するのがいいと思います。その際は、ゆっくり書くのではなく、えいっと一気に引くようにしたほうがよいでしょう。最初は鉛直(※)、水平な直線から練習すればよいですが、慣れてきたら斜めの直線も書いてみてください。※鉛直とは、水平面に対して垂直の方向のことです。
 ある程度自由に直線が引けるようになったら、次は決められた長さを切り取る練習です。1本適当に線を引き、別の直線にそれと同じ長さのところでしるしをつける、というトレーニングをやってみましょう。同じ長さの線を水平と鉛直にかくことができれば、正方形はひとまず書くことができます。

 きれいな図形をかく、といったとき、定規やコンパスなどを使ったほうがいいのでは、と思う人もいるかもしれません。しかし、それらの道具を使ってきれいにかけたからといって、それで図形のセンスが磨かれるわけではありません。道具を通さず、直に図形と触れ合うことで、図形と仲良くなっていくことこそ、図形のセンスを鍛える秘訣なのです。

もっと問題

 正三角形を、なるべく正確にかいてみてください。
 ただし、定規や分度器、コンパスなどの道具を使ってはいけません。

  • 解答

 図1のような対称軸を意識すると、正確にかきやすいかもしれません。
 図2のように、三つ並べると一直線になる、というのも正三角形の大事な特徴の一つです。


 いかがでしょうか。ぼほ毎回図形がテーマのときには宣伝させていただいているのですが、『東大脳さんすうドリル 図形編(幻冬舎エデュケーション)』というドリルを出させていただいております。図形編だけでなく、無印(計算編)や基礎編も出させていただいているのですが、先日『基礎編』に重版がかかりました! おかげさまで、ご好評いただいているようです。この連載だけでは物足りないな、もっといろいろと問題を解いてみたいな、という方がいらっしゃいましたら、ぜひ『東大脳さんすうドリル』シリーズをよろしくお願いいたします。
 それではまた来月!

文:小田・敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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