子どもと楽しむ料理の科学

砂糖の量でプリンのかたさが変わる? プリンで実験しよう

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

自分好みのプリンを家で作ってみよう

今も昔もおやつの定番、カスタードプリン。定番なだけに、人それぞれ好みや理想の仕上がりがあるものです。しっかりかためかトロトロか。バニラやラムの風味を加えるか。カラメルはほろ苦い大人の味か、ほどよく甘い優しい味か。せっかく手作りするのであれば、自分好みのプリンを目指したいですよね。

今回は特に砂糖の性質に着目し、基本的なプリンの作り方やカラメル作りのコツ、そして砂糖の量によってプリンの仕上がりが変わることを調べる実験について紹介します。夏休みのおやつに、自由研究に、お子さんと一緒に作ってみてはいかがでしょうか。

基本のプリンの作り方

材料(100mlのプリンカップ4個分)
<カラメルの材料>
グラニュー糖 30g
水 小さじ1+大さじ1
<プリンの材料>
卵 3個
牛乳 250ml
グラニュー糖 60g
バター(プリンカップに塗る用)

下準備

  • 湯せん用のお湯を沸かしておく。
  • プリンカップの側面にバターを薄く塗っておく(こうするとプリンがカップから剥がれやすくなる。味にはほとんど影響しないので有塩・無塩どちらでも可)。

1.カラメルを作る

小鍋にグラニュー糖30gと水小さじ1を入れ、火にかける。沸騰したら弱めの中火にし、褐色に色づくまで加熱する(このときスプーンなどで混ぜると結晶化してしまうので、加熱ムラがある場合は鍋を優しく動かして混ぜる)。ちょうど良く色づいたらすぐに火を止め、水大さじ1を加える。固まらないうちにプリンカップに注ぎ分ける。

  • 水を加えると、ジュッと大きな音がしてカラメルがはねることがあるので注意する。柄のついたザルをかぶせて、その上から水を加えるとはねにくい。
  • カラメル化が進むと色が濃くなり、白い煙が出て、粘り気のある大きな泡からさらっとした細かい泡に変化する。ここまでくると、ほろ苦く甘さ控えめの大人な味に。甘めの優しい味に仕上げる場合は少し早めに火を止める。

2.プリン液を作る 

ボウルに卵を割りほぐし、グラニュー糖を加え、泡立て器で泡立たないようにやさしく混ぜる。

牛乳を小鍋か電子レンジで60℃程度に温め、卵液に加えて混ぜ合わせたら、ザルなどでこす。

※60℃は、一瞬触るくらいなら平気だが、1秒以上触っていると熱いと感じるくらいが目安。牛乳を温めてから加えた方が“す”ができにくくなめらかに仕上がるが、省略しても良い。

液面にキッチンペーパーをのせて横に引くと、細かい泡を取り除くことができる。

3.注ぎ分ける 

プリン液を1の器に注ぎ分け、アルミホイルをかぶせる。

4.焼く 

バットに60℃前後のお湯を注ぐ。プリンカップが高さ1/4程度つかるくらいが目安。バットに3を並べ、オーブンに入れて25分間蒸し焼きにする。火傷に注意して取り出し、軽くカップを傾けて表面が波立たなければできあがり。加熱が足りない場合は5分ずつ追加して様子を見る。

4.蒸す(オーブンがない場合)

深めのフライパンに、プリンカップが高さ1/4程度つかる量の水を入れて火にかける。沸騰して蒸気が出てきたら一度火を止め、3の容器を並べ入れる。

空気が出入りする隙間ができるよう菜箸を1本はさんで蓋をして、プツプツと小さな泡が出る程度の火加減でじっくり蒸す。10分ほど蒸したら火を止めて、菜箸を取り、しっかりと蓋をした状態で余熱で10分間温める。

5.冷やす
粗熱が取れたら、冷蔵庫に入れて2〜3時間冷やして出来上がり。

お皿に出して食べる場合は、プリンカップの側面に竹串を挿し入れ、プリンとカップの間に空気を入れるようなイメージでぐるっと一周させる。お皿をかぶせてひっくり返し、お皿とカップの間に隙間ができないようしっかり押さえながら上下にふると、カップからプリンが外れる。

砂糖の量を変えて作り比べてみよう

材料
卵 3個
牛乳 250ml
グラニュー糖 10g、20g、30g
バター

 

下準備

  • 湯せん用のお湯を沸かしておく。
  • プリンカップの側面にバターを薄く塗っておく。

1.卵と牛乳を合わせる

ボウルに卵を割りほぐし、60℃程度に温めた牛乳を加えて混ぜ合わせ、ザルなどでこす。液面にキッチンペーパーをのせて横に引くと、細かい泡を取り除くことができる。

2.プリン液を作る

キッチンスケールなどで1の卵&牛乳液を100g、90g、80g、70gはかりとる。以下のように混ぜ合わせて砂糖濃度0〜30%のプリン液を作る。泡立て器を使い回す場合は①から④の順に使うとよい。

①卵&牛乳液100g+グラニュー糖0g →0%プリン液

②卵&牛乳液90g+グラニュー糖10g →10%プリン液

③卵&牛乳液80g+グラニュー糖20g →20%プリン液

④卵&牛乳液70g+グラニュー糖30g →30%プリン液

3.器に注ぐ

それぞれのプリン液をプリンカップに注ぎ、アルミホイルをかぶせる。

あとは「基本のプリンの作り方」の手順4、5と同様に作る。

ポイント

完成したプリンをお皿に出してみると、砂糖の濃度が低いものほどしっかりとかたく、砂糖20%のものはてっぺんが少しやわらかくなっています。そして、砂糖30%になると形を保つことができずに崩れてしまいます。

食べてみると砂糖0%のものは豆腐に近いしっかりとした食感があります。

砂糖10%のものは一般的なかためプリンの食感(実際、プリンのレシピには砂糖10〜15%のものが多い)。

砂糖20%はスプーンの上では固形ですが、口に入れるとなめらかにとろけるいわゆる「とろとろプリン」の食感です。

砂糖30%はプリンというよりもカスタードクリームに近いでしょう。

プリンが固まるのには、卵に含まれるタンパク質が熱によって変化する性質が関わっています。タンパク質はアミノ酸の粒が鎖のように長く連なってできていて、卵の主要なタンパク質はこの鎖が小さく折りたたまれて粒状になっています。ここに熱が加わると、折りたたまれていたタンパク質がほどけて絡み合い、網目のようになります。

粒状のタンパク質は水の中を自由に動き回れるので、生の卵液はさらさらとした液状です。しかし、加熱によって広がり、網目のように絡み合ったタンパク質は身動きが取れなくなり、この網目の間に水分が閉じ込められた状態になります。こうしてプリンは固まるのです。

ところが砂糖には、タンパク質の鎖がほどけたり、鎖同士が絡み合って網目になったりするのを邪魔する働きがあります。そのため、砂糖を加えれば加えるほど卵液は固まりにくくなり、やわらかい仕上がりになるのです。

カラメルの仕組みとコツ

カラメル作りでは水を2回に分けて加えることが多いです。これはなぜでしょうか。

最初に加える水はカラメル化をスムーズに行うためのものです。砂糖に水を加えた液を加熱すると、水分の蒸発に伴ってゆっくりと温度が高くなり、様々な変化が起こります。

103〜105℃ではさらっとした透明なシロップですが、温度が上がるにつれて粘り気が増し、160℃を超えると徐々に色づいて黄色くなり、べっこう飴ができます。さらに加熱を続けて180℃近くまで上がると、褐色で香ばしい風味のカラメルができます。砂糖の主成分であるショ糖が熱によってブドウ糖と果糖に分解し、これらがさらに複雑な化学変化をすることで褐色の物質と様々な香りの成分が生まれるのです。この変化をカラメル化といいます。

砂糖液における砂糖の割合が高いほど、沸騰する温度(沸点)は高くなり、砂糖液の温度はその時点の沸点よりも高い温度にはなりません。砂糖液がカラメルへと変化していくためには、水分が蒸発して沸点が上昇していく必要があります。したがって、最初に加える水はあまり多くない方が短時間でカラメルができます。一方で、水を多めに加えた方が加熱時間が長くなる分、複雑な反応が起こり、風味がより複雑になるとも言われています。砂糖30gに対して水5〜15ml程度を目安にすると良いでしょう。

2回目に加える水は、カラメルを適当な濃度に伸ばすためのものです。そのままではかた過ぎるので、少し薄めて使用します。

 

7/28(木)更新の次回では、「ひんやりなめらか 手作りアイスクリーム」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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