小田先生のさんすう力UP教室

図形のセンスを身につけよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、休みの日には家から出ずに終わってしまうことが増えてきた小田です。最近は運動不足を感じていることもあり、それはよくないかなとも思いつつあります。毎朝散歩くらいはしたほうがいいのかなと思ったりはするのですが、雨が降っていたりすると、今日はいいかなと思ってしまったりしますよね。あとは、寒かったりすると、明日頑張ろうと思ったり。まあ、そういうことばかりも言っていられないので、今年度はせめて家を出る用事がない日くらいは、頑張って朝にでも散歩に出かけようと思います。 
 さて、今回は図形のパズルです。台形のパネルを使っていろいろな形を作る問題です。頭の中で向きを変えたりするのがなかなか難しかったりもしますが、その場合は印刷などをして実際にパネルを用意して並べてみても構いません。ぜひ、楽しく取り組んでみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage26:図形のセンスを身につけよう

例題

図の(ア)のパネルを何枚か並べて、(イ)の形を作ってください。

例題の答え

問題の意味は大丈夫ですね。まずは温かく見守ってあげましょう。向きを変えたりするのが難しかったり、大きさを上手くとらえられていなかったりするようでしたら、無理せずにパネルを作ってあげてください。印刷して切り取って、実際に並べてみるといいでしょう。
お子さんの書いた形があまり上手くなくても、だいたいあっていれば正解にしてあげてください。枚数があっていれば正解、くらいで構いません。明らかに詰め込みすぎていたり、パネルが大きすぎたりするときは、「もう少し大きい(小さい)よ」と伝えてあげるといいでしょう。なかなか大きさがつかめないようなら、無理せずパネルを使ってください。
上の答えはひとつの例ですので、それ以外の並べ方でも、重なりや隙間がないように上手く作れていればOKです。本当にできるかどうかは、これも実際に並べてみて確認してあげるといいでしょう。

解いてみよう

Level 1

図の(ア)のパネルを何枚か並べて、それぞれの形を作ってください。

Level 2

図の(ア)のパネルを何枚か並べて、それぞれの形を作ってください。

Level 3

図の(ア)のパネルを何枚か並べて、それぞれの形を作ってください。

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

ひとくちに“図形のセンス”といっても、その中身にはいろいろな要素があります。そのうちのひとつは、やはり「重要な図形の特徴についての理解」でしょう。その意味で、図形のセンスを磨くためにまずひとつ重要になるのは、「基本的な図形と仲良くなる」ということです。
“基本的な図形”の第一は、まず正方形と正三角形です。全ての辺の長さが等しく、全ての角の大きさが等しい形を正多角形といいます。その中で、平面を一種類の図形だけで隙間なく敷き詰めることができるのは、正方形と正三角形、正六角形だけですね。そのうちの正六角形は、正三角形を組み合わせて作ることができるので、実質的には正方形と正三角形こそが平面を構成する“基準”となる形である、と考えていいでしょう。

これら正方形と正三角形に加え、それらに関連した図形も、私は“基本的な図形”に分類しています。正方形を半分に分けた直角二等辺三角形や、正三角形を半分に分けた30度60度の直角三角形、さらにそれを2つくっつけた120度30度30度の二等辺三角形などが挙げられるでしょう。

そういったもののうち、私が特に好きな形のひとつが、今回の問題で扱った“台形”です。この台形は、台形の中でも特殊な形であり、正三角形を3つくっつけて作ることができる形です。「正三角形から正三角形を切り取った形」と見ることもできますね。先ほど挙げた形のうち、二等辺三角形と直角三角形を組み合わせて作ることもできます。

この台形は、形そのものもいろいろな捉え方ができて面白いのですが、さらに、いくつか組み合わせても面白い形をたくさん作ることができます。
まずは、今回の例題で作った正三角形ですね。120度ずつ回転させて組み合わせると、うまい具合に形がハマります。できあがった形も、120度ずつ回転させてみると同じ形になりますね。回転させると同じ形になる性質を「回転対称」と言いますが、そういった「対称性」は人が“美しさ”を感じるひとつのポイントでしょう。
この台形をいくつか組み合わせてできる形のうち、もうひとつ特に好きな形は、今回のLevel2(5)の形です。4枚組み合わせると、ひとまわり大きいサイズで同じ形(台形)ができていますね。こういった「同じ図形を何枚か組み合わせると、大きさの違う同じ形ができる」形のことを、「レプタイル(rep-tile)」と呼んだりもしますが、これもまたこの台形の面白い特徴のひとつです。

最初に「基本図形と“仲良くなる”ことが大事」という話をしましたが、この“仲良くなる”というのは、そういった形のさまざまな特徴を知り、理解するということです。これは人間でも同じだと思いますが、仕事上で何回か会っただけの人よりも、一緒にたくさん遊んだ友達の方が、よく理解できるのではないでしょうか。その意味で、今回この“台形”と一緒に遊ぶ中で、仲良くなり、さまざまな面を発見していくことで、この“台形”への理解を深めていってほしいと思います。クセのある形でもあるので、最初はなかなかとっつきづらいところもあるかもしれませんが、ぜひ仲良くしてあげてください。


 いかがでしょうか。好きな人やキャラクターのことを“推し”ということがあるようですが、図形にも“推し”の図形があってもいいですよね。センスを身につけることは、それはそれで大事ですが、やはり「好き」という気持ちはなんだかんだで強いです。今回挙げた台形以外も、「基本的な図形」をはじめ、図形の中にはシンプルに見えて奥が深い形がいろいろとあります。ぜひ自分の“推し”を見つけてみてください。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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