小田先生のさんすう力UP教室

他にもないか、探してみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、最近炊いたご飯を冷凍庫に入れ忘れがちな小田です。炊いたご飯を炊飯器に入れたままにするのはよくない、という話があるじゃないですか。それで、毎回炊きあがった直後に、すぐには食べない分を冷凍庫に入れるようにしているのですが、粗熱を取っている間にすっかり忘れて出かけてしまったりすることがよくあります。帰ってくると微妙な“冷めたご飯”が鎮座していて、悲しい気持ちになりますね。世の中には、熱いまま冷凍庫に入れてしまう、という猛者もいるらしいですが、そこまでの勇気はありません。どうしたものでしょうか。

 さて、今回は候補を列挙していく問題です。条件にあてはまるものをすべて書いていく、という問題ですが、自信をもって「全部でこれだけ」と断言するのは、なかなか難しいかもしれません。その“難しさ”も含めて、ぜひ楽しんでみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage27:他にもないか、探してみよう

例題

図のような、4つ並んだマスがあります。この4つのマスに、〇を2つ、×を2つ入れます。〇同士がとなりあわないように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

例題の答え

まずは、問題の意味が理解できているかどうか、確認してあげましょう。4つの□に○と×を入れていきます。問題の意味がわかりづらいようなら、具体的に1つ示してあげてもいいでしょう。また、「○○××」のような“ダメな例”を示してあげることも大事です。「たとえば、○○××だと〇がとなりあっているからダメだよ」という伝え方をしてあげるといいでしょう。

 一通りお子さんが答えを書いたら、書いたものの中で、かぶっているものや、条件に当てはまらないものがないか、確認してあげてください。もし、それらがあれば、指摘してあげましょう。それらが特になければ、実際に全部かけているかどうかに関係なく、ひとまず「他にはもうないかな?」と聞いてあげてください。足りていないときにだけ「他にないか」と聞くと、「他にないか、と聞かれる」=「他にもある」と解釈してしまう恐れがありますので、いつでもひとまず聞いてあげるようにするといいでしょう。「もうない!」という返事がきたら、「正解」なのか「他にもある」のかを改めて伝えてあげてください。

なかなか見つけきれない場合は、「あと何個あるか」ということを伝えてあげてもいいでしょう。

解いてみよう

Level 1

(1)図のような、5つ並んだマスがあります。この5つのマスに、〇を2つ、×を3つ入れます。〇同士がとなりあわないように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

(2)図のような、4つ並んだマスがあります。この4つのマスに、〇を2つ、×を1つ、△を1つ入れます。〇同士がとなりあわないように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

(3)図のような、5つ並んだマスがあります。この5つのマスに、〇を2つ、×を2つ、△を1つ入れます。両端が同じ記号になるように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

 

Level 2

(4)図のような、6つ並んだマスがあります。この6つのマスに、〇を3つ、×を3つ入れます。〇同士がとなりあわないように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

(5)図のような、6つ並んだマスがあります。この6つのマスに、〇を2つ、×を4つ入れます。〇同士がとなりあわないように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

(6)図のような、4つ並んだマスがあります。この4つのマスに、〇と×を入れていきます。それぞれ、何個入れても構いません。〇同士がとなりあわないように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

Level 3

(7)図のような、6つ並んだマスがあります。この6つのマスに、〇を2つ、×を4つ入れます。〇同士がとなりあわないように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

(8)図のような、5つ並んだマスがあります。この5つのマスに、〇を2つ、×を2つ、△を1つ入れます。同じ記号同士がとなりあわないように入れるとき、考えられる入れ方をすべて答えてください。

解答

Level 1

(1) 以下の6通り

(2) 以下の6通り

(3) 以下の6通り

Level 2

(4) 以下の4通り

(5) 以下の8通り

(6) 以下の7通り

Level 3

(7) 以下の10通り

(8) 以下の12通り

 

さんすう力UPのポイント

論理的に考える力を身につけたい、と思うことはありますよね。算数教育においても、この「論理的に考える力を身につける」ことが期待される場面が多いです。しかしそもそも、「論理的に考える」というのはどういう状態を指すのでしょうか。一般的には、「〇〇だから××、××だから☆☆」というふうに、根拠と結論をうまく繋げていけると、「論理的に考えている」ように思えますね。ただ、そうやって順々に考えていくことそのものを「論理的思考」であるかのようにとらえてしまうと、そこには大きな落とし穴があるのです。

 「そうするしかなかった!」というのは、サスペンスなどで最後に犯人がよく言うセリフでしょう。多くの場合、物語のラストで犯人は犯人なりに“犯行に至った動機”を語るわけですが、客観的に見ればその理由は身勝手であることがほとんどですね。しかし、犯人の視点から見れば、それは「きちんと根拠立てて考えた、筋の通った“論理”」なわけです。

 論理的に考えられているかどうか、というのは、単に「根拠と結論を繋いでいる」という形式上の問題だけではありません。そのつながりがそれぞれ正しくつながっていて初めて、本当の意味で「論理的である」と言えるものなのです。そうやって、「正しく論理をつなぐ」ことができるようになるためには、様々な能力や技術を身につけていく必要があるでしょう。そういった能力や技術をひっくるめたものが、「論理的に考える力」なのです。

 算数を学習していく上でも、論理的に考えることはもちろん重要です。むしろ、日常生活よりもはるかに厳密な“正しさ”が求められる分、その正しさを突き詰める技術・能力を身につけていくことはより重要になるでしょう。そういった技術や能力のうち、具体的な要素のひとつが、今回のテーマである「候補を列挙する力」です。

 論理のつながりを誤ってしまう原因のひとつに、「そもそも正しい結論が見えていなかった」というものがあります。まさに、「そうするしかなかった!」という状況ですね。そうならないようにするために、まずは「考えられる結論の候補」をきちんとすべて挙げ切ることが大事です。しかし、今回の問題でやっていただいたように、それはそれほど簡単なことではありません。なんとなく見つけたものから挙げていったりすると、最後の1つがなかなか見つからなかったりするでしょう。その「すべての候補を挙げていく」ということの難しさをまずは実感してもらい、実際に探していく中で、うまく列挙していくコツを感じ取ってもらいたい、というのが、今回の問題のねらいです。

 具体的な“工夫”の内容としては、たとえばまず「順に並べる」という方法がありますね。例題や(1)の問題の答えでは、「1つ目の○が一番左にあるもののうち、2つ目の○が左から3番目、4番目、……にあるもの、それが終わったら1つ目の○が左から2番めにあるもので……」というように、○を1つずつずらしていく順に並べています。こうやって順に並べていくと、「途中を飛ばしてしまう」可能性が少し減るでしょう。もちろん、“順序づけ”の方法は他にもあります。「○と○の間の×の数がまず1個のものを順に並べ、その次に2個のもの……」と並べていってもいいでしょう。

 (1)なら、

という順番になります。

 慣れないうちは、いきなり上記のような“工夫”ができなくてももちろん構いません。繰り返しになりますが、大事なことは、候補をすべて挙げ切ることの“難しさ”を実感することです。自分に見えている“結論のようなもの”が全てではないかもしれないことを理解してほしいのです。そうすれば、たとえ“考えていく”途中で行き詰まったとしても、「間違った結論」に飛びつくことなく、「他にも見落としているものがないか」と考えるチャンスが生まれるでしょう。その「他にもないか」と考える姿勢こそ、「論理的に考える力」のひとつの重要な要素なのです。


 いかがでしょうか。「論理的思考力を身につける」というのは、ひとことで言ってしまうと簡単なように聞こえてしますが、実際にやってみると、とても難しいことですよね。とりあえず難しい問題を与えて、「もっと考えなさい」と言っておけばいいのかというと、もちろんそんなことはありません。とはいえ、“難しい”で片付けてしまうと指導も成り立たないので、上でも書いたような、そもそも「論理的思考力とは具体的に何を指すのか」まで遡ってみたりもしながら、いろいろと考え続ける毎日です。その中で、私も私なりに一定程度の答えは出したつもりなので、今回も含めて、引き続きまたいくつかお伝えしていけたらいいな、と思います。『文の会式 東大脳さんすうドリル 論理・文章題編(幻冬舎)』というドリルも出してみたので、興味のある方はそちらもぜひよろしくお願いいたします。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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