小田先生のさんすう力UP教室

同じ形を探してみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、最近ようやく朝の散歩に出るようになった小田です。5月号くらいで言っていた話ですね。近頃気温が上がってきて、朝に外出しやすい感じになってきた、というのはあります。特に、雨上がりで曇り空、少し風がある日などの空気感が私は好きで、そういう日は外をふらふらと歩きたくなったりします。とはいえ、少し油断するとすぐに暑くなってしまう時期ではありますので、なんだかんだでたまにしか散歩はできていないのですが。

 さて、今回は図形の問題です。同じ形を探す、という単純な問題ではありますが、実際にやってみると結構難しかったりはします。同じように見えて少し違う、というのは、なんとなく見ているだけではなかなか気づかないかもしれません。そんな難しさも含めて、ぜひ楽しんでみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage29:同じ形を探してみよう

例題

次の(ア)(イ)(ウ)のうち、回転させると同じになるものがあります。それは、どれとどれですか。

例題の答え

(ア)と(ウ)

問題の意味はいいですね。引っかかっているようなら、「3つのうち2つは同じ図で、1つだけ違うものがある」というのを伝えてあげてください。同じように見えていても、1つだけよく見ると違う、というのを強調してあげましょう。

お子さんが答えを選んだら、正解の場合はそう伝えてあげればいいでしょう。余裕がありそうであれば、「“仲間外れ”にした(イ)の図は、(ア)(ウ)とどこが違うのか」を聞いてあげるのもいいかもしれません。お子さんが選んだ答えが正解でない場合、「どこが違うのか」を具体的に指摘してあげましょう。上の図で、赤丸のついている線を見ると、(イ)だけが辺のほぼ真ん中に来ているので、この線が関わるエリアが他の2つより大きくなったり小さくなったりしています。

なかなか答えが選べないようなら、細部に注目するよう誘導してあげてください。具体的にはまた「さんすう力UPのポイント」でもお伝えしますが、印などをつけていくのも有効です。慣れていない場合は、頭の中で回転させるのも難しいので、その場合は印刷して切り取り、向きをそろえてあげても構いません。

解いてみよう

Level 1

(1) 次の(ア)(イ)(ウ)のうち、回転させると同じになるものがあります。それは、どれとどれですか。

(2) 次の(ア)(イ)(ウ)のうち、回転させると同じになるものがあります。それは、どれとどれですか。

(3) 次の(ア)(イ)(ウ)(エ)のうち、回転させると同じになるものがあります。それは、どれとどれですか。

Level 2

(4) 次の(ア)(イ)(ウ)(エ)のうち、回転させると同じになるものがあります。それは、どれとどれですか。

(5) 次の(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)のうち、回転させると同じになるものがあります。それは、どれとどれですか。

(6) 次の(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)のうち、回転させると同じになるものがあります。それは、どれとどれですか。

Level 3

(7) 次の(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)のうち、回転させると同じになるものが2組あります。それは、どれとどれですか。

(8) 次の(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)のうち、回転させると同じになるものが2組あります。それは、どれとどれですか。

解答

Level 1

(1) (ア)と(イ)

(2) (イ)と(ウ)

(3) (ア)と(エ)

Level 2

(4) (イ)と(ウ)

(5) (ウ)と(オ)

(6) (イ)と(エ)

Level 3

(7) (ア)と(オ),(ウ)と(エ)

(8) (イ)と(エ),(ウ)と(オ)

さんすう力UPのポイント

冒頭でもお伝えした通り、今回の問題は実際にやってみると結構難しいですよね。人間は普段、いろいろなものの形について、実のところ、そこまできちんとは見ていません。そもそも、身の回りにはたくさんの“形”があふれているので、それらを常に細部まで正確に把握しようとすると、入ってくる情報量が多すぎ、むしろ普通に生活することが困難になってしまいそうです。その意味では、「形を細部まできちんと見ていない」ということそのものは、別に悪いことではないでしょう。しかし、算数の学習、“図形”について学ぶというのは、「さまざまなものの形の特徴や性質を理解する」ということです。普段のような“ものの見方”だけでは、足りない部分も出てくるでしょう。つまり、算数で図形の学習を進めていくためには、それとはまた別の、「細部までを正確に把握しようとする“見方”」を身につけることが大事なのです。

今回の問題は、その“見方”を身につけるためのトレーニングのうちのひとつです。それぞれの形を普通に眺めているだけでは、どれも同じに見えたり、逆にどれも違うように見えたりするでしょう。そこで、まず試してほしいのは、「印をつける」ということです。印をつけると、注目するポイントがしぼられます。たとえば、以下は例題の3つの図に印をつけてみたところです。

それぞれの図で「2本の線が出ている頂点」に青い○を書きました。そこから、時計回りに、順に青い□、赤い□、緑の○とします。次にもうひとつ大事になってくるのは、「形を言語化する」ことです。「青い○から引かれた線のうちの1本は、緑の○と赤い□のちょうど真ん中あたりに向かっている」という感じです。「青い○から引かれた線のうちのもう1本は、赤い□と青い□の間の辺のうち、真ん中よりも少し赤い□側によったところに向かっている」なども言えますね。こうして言葉にしてみると、「同じ」であるかどうかは一目瞭然でしょう。「緑の○から引かれた線は、(ア)と(ウ)では真ん中より青い□に近い場所に向かっているが、(イ)では辺の真ん中に向かっている」とわかれば、仲間外れは(イ)とわかります。

図形の学習というと、“センス”が大事である、という印象が強いかもしれません。5月号でお伝えした通り、もちろん、図形の“センス”も重要です。しかしだからといって、“センス”がないと図形の学習が進められないかというと、それはまた違います。そもそも算数を学習する意義のひとつには、「感覚的に捉えられないものを、計算などの機械的な作業によって正しく扱えるようにする」というものがあります。世の中には、感覚だけでは捉えきれないものや、感覚的に扱ってしまうと間違いやすいものがたくさんありますね。そういったものに対して、「技術的に扱う方法」を追究し、洗練させてきたものこそが、算数であり、その後に続く数学なのです。今回の問題では、ぜひその“数学”に繋がる“形の見方”を練習してみて欲しいと思います。


 いかがでしょうか。
先月に引き続き、2年前の引越し段ボールを少しずつあけてはいるのですが、なんと今度はゴミの入ったゴミ袋が出てきました。引越しの際、荷造りからすべて引越し屋さんにお任せしたので、部屋にあったものをそのまますべて段ボールに詰め込んだのでしょう。もちろん、業者さんに全く非はなく、引越し前にゴミくらい処分しておかなかった私が悪いのですが。いずれにしても、もう少し早めに段ボールをあけておけばよかったな、と反省しているところです。今年中には全部あけてしまいたいですね。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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