小田先生のさんすう力UP教室

数字の構造を捉えよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、お気に入りのものがすぐコンビニから姿を消してしまうタイプの小田です。最近は某コンビニのアイスカフェラテが消えてしまってショックを受けました。甘ったるい感じが脳にやさしい気がして、仕事中にけっこう飲んでいたのですが、いつの間にか「ノンスウィート」のものになってしまっていました。ガムシロップを入れると甘くはなるのですが、以前のものとは少し違う気もします。
 さて、今回は数の問題です。算数の学習を始めたとき、いちばん初めに出合うのが「数」です。その「数」への理解を深めていくことは、算数の学習を進めていくためにとても重要です。今回はそんな「数」の構造の一面に注目した問題です。
 それでは早速問題に行ってみましょう。

Stage27:数字の構造を捉えよう

 決められたコインをマスに置き、たて、横のそれぞれの列に入ったコインの合計金額が、どれも同じになるようにしてください。
 コインの入っていないマスがあってもかまいません。1つのマスに入るコインは1枚までです。

指導のヒント

 まずは、問題の意味が理解できているかを確認してあげてください。
 意味が取りづらそうであれば、以下のように、例を挙げてあげてください(たて・横どの列も15円ずつになっています)。

 ななめの列は、同じになっていなくてもかまいません。
 答えを出したら、各列の合計金額が同じになっているかどうか、使うコインの種類が正しいかどうか、確認してあげてください。
 解いていくのが難しいようでしたら、実際にコイン(おもちゃでもかまいません)を用意して、マスに並べてみましょう。

解答

さんすう力UPのポイント

 大人にとっては簡単なことでも、子どもには難しい、ということはよくあります。算数の学習でもそういったことは意外とたくさんあり、多くの保護者の方が「なんでこんなこともできないの」といらだったり、「こんなこともできなくてだいじょうぶなのか」と不安になったりする原因にもなっています。
 今回のテーマに据えた「十進法」もそのひとつでしょう。わたしたち大人は、「100円玉が2枚でいくらになるでしょう」と聞かれても、まちがえることはあまりありません。しかし、子どもにそういうふうに問いかけると、「102円」という答えが返ってくることも少なくありません。ほかにも、「じゅうはち」と言われて「18」と書けない大人はほとんどいないと思いますが、「じゅうはち」を「108(10と8だから)」と書いてしまう子どもはそれほど珍しいというわけでもないのです。

 そもそも、「じゅうはち」を「18」と書くことに、何かしらの必然性があるわけではありません。その証拠に、わたしたちがふだん使っている“アラビア数字”以外にも、古今東西いろんな数字が存在します。漢数字は言うに及ばず、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ……のようなローマ数字もあります。現在一般的に「じゅうはち」を「18」と書くのは、それが扱いやすいから、というだけに過ぎません。言ってみれば、人類が長い年月をかけて編み出した技術の一つを、ルールとして共有しているだけなのです。
 さらに言えば、その“扱いやすさ”の源にある「十進法」の構造は、ほかの数字と比較しても、少し特殊なルールです。1と8を並べて書いただけで、その書かれた場所によって表している大きさが違う、というのは、言われてみないとわからないと思いませんか(ちなみにローマ数字では「Ⅹ(10)」と「Ⅷ(8)」を並べて「ⅩⅧ」と書きます。その意味では「じゅうはち」を「108」と書くのは、きわめてまっとうな感覚とも言えるかもしれませんね)。

 子どもの算数の学習を見ていくうえで、大人が「十進法」をある程度使いこなせているのは、たんに慣れに過ぎない、ということを忘れてしまってはいけません。そして、新しく“人類”に加わる子どもたちにとって、そのルールを定着させていくのは、案外難しいものだ、というのを理解しておく必要があります。自分は算数が苦手だった、その自分でもできるのに、と思うこともあるかもしれません。しかし、そんなときは、子どもがそれまでの人生で触れてきた“数字”よりも、はるかに多くの“数字”と自分が接してきたことを思い出してください。そうして、“数字”とたくさん触れ合う時間を確保し、徐々にそのルールに慣れていけるよう、温かく見守ってあげてほしいと思うのです。

 今回の問題も、“数字”と触れ合う経験を増やしてほしい、と思って解いてもらっている問題です。まず慣れてほしいのは、塊で数字を捉える、という感覚です。

 左のようなバラバラの“数のイメージ”から、右のように「5」や「10」といった塊を意識できるようになれば、「十進法」への理解も、まず1歩踏み出すことができるでしょう。

もっと問題

 決められたコインをマスに置き、たて、横のそれぞれの列に入ったコインの合計金額が、どれも同じになるようにしてください。
 コインの入っていないマスがあってもかまいません。1つのマスに入るコインは1枚までです。

  • 解答

 いかがでしょうか。先日、数学好きな人が集まるイベントに遊びに行ってきました。昨年ごろから定期的に開催されているイベントですが、今のところ、ほぼ毎回参加しております。参加するたびに思うことは、算数・数学の勉強は、やはり“自分のため”にやることだよなぁ、ということです。もちろん、ここでいう“自分のため”は、いい学校に行く、とか、いい将来が保障される、ということではありません。自分の興味でもって、自分の興味を満足させるためにやるものだ、ということです。それは算数・数学に限った話ではなく、「学習」というものの本質でもあると思っていますが、そういった本質的な「学習」を伝えられるよう、これからもがんばっていきたいと思います。
 それではまた来月!

文:小田・敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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