大学入試の何が変わるのか
2021年度の「大学入学共通テスト」を皮切りに、大学入試は大きく変わりつつあります。各大学の個別入試についても、入学希望者の能力や体験を多面的・総合的に評価するために、従来の紙の試験だけでなく、面接、ディベート、プレゼンテーション、高校までの学習成果を示す資料など様々な方法を組合せた形の試験に、一部転換されています。
ここで注目していただきたいのは、変わるのは大学入試の制度・内容だけではなく、学習指導要領をはじめとした高校・大学での学びそのものが大きな転換期を迎えているという点です。文部科学省では、これからの時代の子どもたちにとって必要な能力を
1.十分な知識・技能
2.それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力
3.これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度
の3つであると位置づけ、この「学力の3要素」を育成するためには、高校教育・大学教育、そして両者を接続する大学入試が一体となって改革を進める必要がある、と提唱しています。
現代社会は「激しく・予測不可能で・誰もが避けられない」変化が繰り返し起こっています。子どもたちは未来の社会において、誰も正解を知らない状況の中で、自分の手持ちの知識をフル活用し、周囲の人々と話し合ってお互いの知識・情報を組合せることによって新しいアイデアを生み出し、状況を打開していくという経験を繰り返すことになります。「学力の3要素」はこうした経験を積むために必須の能力であり、だからこそ「学力の3要素」を主軸とした教育・入試の改革がめざされているのです。
中高一貫校に通う中学生がやるべきこと
中高一貫校は、学校によっては英語や数学の進度が速く、知識を覚えるだけでも大変に感じるかもしれません。しかし、上述のように、これからの大学入試では知識を教わった通りに再現する力ではなく、自分の考えに沿って活用する力が重視されます。単に授業の内容を覚えるだけではなく、「総合的な学習(探究)の時間」などで自分で新しい問題にチャレンジしてみたり、チャレンジした答案を友だちと見せ合って改善点を指摘したりすることで、「知識を主体的に自分のものにして、自分の考えたことをまとめ、他者と共有する中で新たな発見をする」という習慣を中学生のうちに身につけることが重要です。
また、高校入試の対策に時間を取られない分、例えば「農作物に被害を与える野生動物は絶滅してもよいか?」のような、自分を取り巻く現代社会の課題について、様々な資料に接して自分の意見を構築するなど、教科の枠を超えた学習活動にも時間を割くとよいでしょう。こうした学習活動を行う中で、大学・社会において自分が進みたい分野が明確になり、より主体的な学習へとつながっていきます。入試という限られた目標に対してだけでなく、社会に出ても通用する真の学力の土台を築くために、中学3年間を有効に使っていってほしいと思います。