2023年度 京都大学 英語
2023年5月12日
カテゴリー : 大学受験
高いレベルの読解力、思考力、表現力が必須。
長文読解は近年内容説明問題を含む傾向にあったが、2023年度は大問Ⅰ・Ⅱともすべて和訳問題となり、2014年度以前の傾向への揺り戻しが見られた。自由英作文は、2021年度に近い会話文の空所補充が出題された。毎年出題傾向の変化はあるものの、 高いレベルの読解力と、思考力・表現力が求められる出題であることに変わりはない。
*分量:増加 *難易度:変化なし(昨年度比)
■概要 (120分)
* 出題・解答の形式
- 大問数は2022年度と同様の4題で出題構成に変化はなかった。
- Ⅰ・Ⅱは内容説明問題がなくなり、和訳問題3題が出題された。
- Ⅲは2022年度と同様に京大らしい和文英訳が出題された。
- Ⅳは2021年度と同様の会話型の自由英作文(空所補充型・語数指定あり)が出題された。
* 特記事項
- Ⅰ・Ⅱの長文読解は、いずれも2022年度は内容説明問題1題と和訳問題2題であったのが、和訳問題3題の構成となった。近年は内容説明問題を取り入れる傾向にあったが、2014年度以前の和訳のみの傾向に戻った。
- Ⅳは、2022年度は意見陳述型の自由英作文だったのに対し、2023年度は2021年度と同様の会話型の自由英作文に戻った。
■各問の分析(難易度は京大受験生を母集団とする基準で判定しています)
大問Ⅰ:長文読解(インターネットによる情報氾濫時代における,物事の判断)[標準] 約590語の論説文。2022年度大問Ⅱの「インターネット時代における情報と知識」と類似したテーマであった。設問構成は、2022年度は内容説明問題1題、和訳2題だったが、和訳3題の構成となった。 (1)は the+比較級…, the+比較級〜 の構文、blame A for B や devote A to B のイディオムが含まれる。文脈を踏まえた this reduced attention span の自然な訳出がポイントである。対比の while や部分否定の not entirely など、基本的な表現も丁寧に訳出したい。 (2)は、まず It isn’t that 〜, but rather that … のつながりを把握することが肝要である。but rather that の中は as節+主節だが、間にコンマがないため、節の区切りを正しく見抜く必要がある。with the result that … を前文に自然につながるように訳出したり、public debate の適切な訳語を選択したりする点もやや難しかったと思われる。 (3)は2つの動名詞を含む主語が長いため、文の動詞を正確に見抜くことがまず必要である。文構造自体は複雑ではないが、weigh up(比較検討する)、the pros and cons(賛否両論) などの表現を1つ1つ丁寧に訳出することが求められる。 |
大問Ⅱ:長文読解(意識を理解することの難しさ) [標準] 約730語の論説文。大問Ⅰと同様、和訳問題3題という構成となった。 (1)は profess to do(…と公言〔断言〕する)や the uninitiated(知識の乏しい人々)などの語彙を、文脈に即して語義を推測しつつ適切な日本語で表現する力が問われた。 (2)は、主語と目的語がそれぞれ複数の関係詞節を含んでおり長いため、修飾関係を見失わないよう注意が必要であった。quite a bit(かなりたくさんのこと)という表現も正確に訳したい。 (3)は ‘something it is like to be you’ と what it is to have a point of view in terms of 〜 の2箇所について、‘it is 〜 + to不定詞’ の形式主語構文が用いられていた。大問Ⅰ・Ⅱを通じて最も長く複雑であり、読み解きにくい下線部だったと思われる。また、最後にある circular(堂々巡りの)は見慣れない単語だったかもしれないが、circulation(循環)や circle(円)からこの意味を推測できれば、逆にこれを含む1文の内容を推測することも可能であった。 この1文を適切に訳せたかどうかは差がつくポイントの1つであろう。 |
大問Ⅲ:和文英訳 [標準] 「情けは人のためならず」ということわざに関する和文英訳問題である。ことわざは過去、2017年度に「生兵法は大怪我のもと」、2021年度に「転ばぬ先の杖」が出題されている。京大の定番の出題形式で、「損得勘定」「ろくなことがない」「便宜を図る」「人の世の真理を突く」などの日本語独特の言い回しは、和文和訳した上で訳出する必要があった。全体の難易度は標準的ではあるものの、一見すると訳しにくい日本語が例年より多いと感じたかもしれない。 最終文の「情けは人のためならず」は「情けは人のためにならない」と誤って解釈されることがあるが、「情けは人のためではなく自分のためだ」という意味を正しく理解した上で、適切な英語に訳す必要がある。 |
大問Ⅳ:自由英作文 [標準] white lie(罪のない嘘)をテーマとした、会話文の空所補充型の問題である。 会話文の空所補充は2016〜2018年度、2021年度に出題例があるが、語数制限がある点で2021年度と類似した形式であった。会話文から各空所で求められている内容を理解し、white lie(罪のない嘘)に関する会話が論理的につながる内容にするとともに、(1)12語以内、(2)24語以内、(3)12語以内、(4)16語以内と、比較的少ない語数で簡潔にまとめる必要があった。特に (2)「『罪のない嘘』の具体例」は another example might be に続くものとして、適切な英語で表現するのに苦戦した受験生もいるだろう。 |
■合否の分かれ目
Ⅰ・Ⅱの長文読解はすべて和訳問題というシンプルな設問構成であるからこそ、構文を正しく解釈し、わからない単語の語義を推測しながら、1つ1つ適切な訳語を選択できたかが合否の分かれ目となっただろう。Ⅲの和文英訳は、「損得勘定」といった日本語特有の表現や、「ろくなことがない」「便宜を図る」などの表現をうまく別の日本語に読み換えることがポイントであった。ことわざを正しく解釈できたかどうかも鍵となる。Ⅳはテーマ自体は日常に即したものであるため、空所に入るおおよその内容はさほど悩まず特定できるだろう。文法・語法のミスなく、論理的に成立した会話にできたかどうかで差がついたと思われる。
■東大英語の要求
要求① 単語力、文法・構文力
京大入試においては、まず相応の単語力が大前提となる。純粋な語彙の量だけでなく、複数の語義やイディオムなど、1つ1つの語彙に対する深い理解が求められ、日々の英語学習の中で意識的に身に付けていく必要がある。そのためには必ず単語集による学習を行い、日本語と英語のどちらからでも適訳を思い浮かべられるようにしよう。「文法・構文力」も同様に必須である。これも自分に合った問題集・参考書を見つけ、早めに苦手分野をなくしておくこと。また、知識の定着だけでなく、実際に読解問題に取り組む中で構文を見抜く練習や英作文に組み込む練習も並行して行いたい。
要求② 精読力
まずは、1文ずつ英文の文構造を把握しながら正確に読む「精読力」の養成から始めよう。難関大の入試を見据えた長文読解の問題集・参考書に取り組むことが望ましい。しばらくは時間がかかっても構わないので、問題に取り組んだ後に解答を確認するだけではなく、英文中でよく理解できなかった語句・表現は辞書を引いて意味や用法をきちんと確認するようにしよう。
要求③ 表現力
近年の京大入試は出題傾向の変化が大きい。内容説明問題を含む出題が続いていた長文読解は、2023年度は和訳のみの出題となったが、この傾向が続くとは限らない。京大の長文読解に対応するには、文脈をふまえて正確に和訳する力と、設問の解答となる該当箇所を見つけ、適切な長さでまとめる力の両方が必要だ。
和文英訳では定番の出題が続いており、日本語の難しい表現を英訳しやすい形に読み換えた上で英語に変換する練習を重ねることが大切である。自由英作文は数年前の出題が復活するなど傾向が安定していないが、どのような形式が出題されても、与えられた条件・状況を把握し、自分の意見や考え、その裏にある理由や意図が相手に確実に伝わるように的確に書く訓練をしておく必要がある。
■京大英語攻略のために
基礎力の完成
要求①の基礎的な部分を満たすことを目指そう。単語にしろ、文法・構文にしろ、覚えては忘れ、忘れては覚えていく地道な努力が不可欠である。また辞書を引きながら長文読解問題や英作文問題に取り組み、精読力と文法・構文を実戦で活用する力を同時に高めていこう。
レベルUP
要求①の基礎的な部分を満たすことを目指そう。単語にしろ、文法・構文にしろ、覚えては忘れ、忘れては覚えていく地道な努力が不可欠である。また辞書を引きながら長文読解問題や英作文問題に取り組み、精読力と文法・構文を実戦で活用する力を同時に高めていこう。制限時間内での解答を意識しつつ京大レベルの問題に取り組もう。読解問題では、わからない単語が出てきても辞書で確認せずに、英文全体の論理展開から意味を推測する練習にも取り組むとよい。和文英訳については、日本語独特の表現を含む問題に取り組み、意味内容を大きく変えることなく英訳しやすい日本語に読み換える練習を重ねよう。自由英作文は出題変化があっても対応できるよう、さまざまな形式・語数の問題演習を積んでおきたい。
京大レベルの演習と精度の向上
最後に、京大レベルの演習に精力的に取り組み、第三者の添削を受けるようにしよう。自分が意図したことが相手に伝わらないと得点にはつながらないので、常に第三者の視点を意識することが大切である。
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