2023年度 東京大学 英語

2023年5月12日

カテゴリー : 大学受験

確実に内容を理解するだけでなく、適切に表現する記述力もポイント。

一見すると読みやすく易しそうな問題なのに、いざ解答をまとめるとなると手強いのが東大英語。解答を作成するための日本語・英語での記述力こそがカギ。とにかく自分で書く演習を積むことが肝要である。

*分量:やや減少 *難易度:標準(昨年度比)

 

■概要 (120分)
* 出題・解答の形式

  • 記述式・客観式混合

* 特記事項

  • 1(B)  文補充の他に、4年連続で語句整序問題が出題された。
  • 3   3つのパートがすべて独立した内容であり、(C)では対話形式が復活した。
  • 4(A) 5年連続で正誤問題が出題された。本文の語数は大幅に減少した。
  • 5   刑務所廃止論に関するエッセイ風の文章であった。本文の語数は大幅に減少した。

 

■各問の分析(難易度は東大受験生を母集団とする基準で判定しています)

1(A):要約(現代人の時間不足の要因とその影響) [やや難]
約420語の英文を読んで、70~80字の日本語で要約する問題。語数は2022年度とほぼ変わらず。例年3~4パラグラフの構成であるが、2023年度は8つのパラグラフに分かれている英文となっている。
社会の変化とともに時間不足に陥っている現代人について述べられており、第8パラグラフで言及されている「心身に与える影響」については含めることが必須となる。例年通り、英文の内容は理解しやすいが、制限字数内に収めるためにポイントを絞って取捨選択する作業は困難だったと思われる。
1(B):文補充、語句整序(人間が笑う理由と様々な種類の笑いの意味) [標準]
語数は選択肢を含めて約1040語で、2022年度よりやや増加。英文テーマ、パラグラフ展開ともにわかりやすかったため、内容把握はそれほど難しくなかっただろう。
文補充ではダミー選択肢の数に変化はあったものの、空所は例年通り5箇所。キーワードを手がかりに、選択肢がどのあたりのパラグラフに入るのかを推測することができた。また、空所前後の流れを捉えられていれば、ダミー選択肢を見分け、正解に辿り着くことはそれほど難しくなかっただろう。語句整序では、2つの as と fellow の使い方がポイントとなった。
2(A):自由英作文(30年後の移動手段はどうなっているか) [標準]
「30年後の移動手段」について、理由を添えて考えを述べる自由英作文。解答の語数は2022年度から変わらず60~80語。抽象度の高かった2022年度の出題と比べて、具体的な内容であり取り組みやすかったと思われる。環境問題やAI(人工知能)などに絡めると無理なく書け、かつ説得力のある答案になっただろう。
なお、2008年度には「今から50年の間に起こる交通手段の変化とその影響」を論じる自由英作文が出題されている。
2(B):和文英訳(出典:草光俊雄『歴史の工房 英国で学んだこと』) [標準]
和書からの引用文に引かれた下線部を英訳する問題。2022年度に引き続き、比較的英訳しやすい日本文であった。
「さらにもう少し掘り下げてみると」の部分は戸惑ったかもしれないが、「さらにそれ(=私が歴史を学ぶようになった理由)についてもう少し深く考えてみると」などと具体的に読み換えて訳出することができれば、大きな困難はなかっただろう。1文が長いため、文構造が複雑になりすぎないよう、文を構成しやすい日本語に読み換えた上で訳したり、挿入句を用いたりする等、工夫が必要であった。
3:リスニング((A)「伝書鳩の帰巣の特性」に関する研究、(B)「大気中の二酸化炭素削減の取り組み」に関する説明、(C)「脱成長」に関するインタビュー) [標準]
2022年度と同様に、出題形式はすべて英問英答の選択式で、問題は各5問、選択肢はそれぞれ5つあった。
(A)~(C)は2022年度に引き続き、すべて独立した内容の問題となり、(C)はダイアローグ(インタビュー)形式となった。(A)は正解の根拠となる箇所を特定しやすく、選択肢でも放送される表現をわかりやすく言い換えているので取り組みやすかったと思われる。(B)では選択肢の平均的な語数が6語程度であり、(長くても11語と)全体的に短いため、余裕をもって取り組めたであろう。
また、5問中2問が内容不一致選択であった。(C)は(A)や(B)と比べて内容の抽象度が高く、取り組みにくかったであろう。聞き慣れない表現が出てくるが、該当表現が放送されるタイミングを逃さずしっかり聞き取る必要があった。
4(A):正誤問題(共通言語としての英語) [標準]
5つの段落から成る英文の各段落に5つの下線が引かれている、例年通りの出題。英文語数は約480語で、2022年度よりも減少。問われている文法・語法のレベルは基本的なもので、2023年度は文脈面よりも文法・語法面から判断しやすい設問が多く、比較的取り組みやすかった。
しかし、英文レベルが高度で内容を把握しにくく、誤りを含まない箇所についても「正しい」と確信を持ちにくいため、正解を絞り込む際に迷った人もいただろう。
4(B):下線部和訳(コンフォート・フード) [標準]
約340語の英文。和訳する下線部は例年同様3箇所で、内容を明示して和訳する問題は出題されなかった。やや込み入った並列構造や省略などもあったが、全体的に文構造は把握しやすかっただろう。
(イ)では soothe や as young as one day old の部分の訳出に苦戦した人もいたと思われるが、文脈から意味を推測するのはそれほど困難ではなかっただろう。
5:長文読解(刑務所廃止論者の話に対する子供たちの反応) [標準]
刑務所廃止論者の話とそれに対する子供たちの反応について書かれた、エッセイ風の英文からの出題。語数は約800語で、2022年度から150語以上減少している。
分量・形式ともに2022年度から大きな変化はないが、例年本文の内容と一致するものを選ぶ問題が出題される(D)(ウ)が、下線部の説明として適切なものを選ぶ問題に変わった。時系列に沿って話が展開されており、物語文特有の省略や口語表現等も多く見られなかったため、正しく内容を把握するのはそこまで難しくなかっただろう。
(A)の語句整序問題は、直後の文をヒントに、どういった内容にすべきかを予想して組み立てていくことが必要であった。

 

■合否の分かれ目
例年通り、英語の発信力・受信力・批判的な思考力を試す問題がバランスよく出題された。2022年度に比べて語数は減少したものの、120分という限られた時間内でこれだけの問題をこなさなければいけないことを考えると、決して時間的余裕はなく、負担感の多い問題構成であることは例年と変わらない。取り組みやすい問題をできるだけスピーディーに処理し、確実に得点した上で、負担感の大きい問題にかける時間を確保したい。

 

■東大英語の要求
要求① 「基本=易しい」と甘く見てはいけない。
難易度が高い語彙はあまり登場しないが、文脈の把握が難しい英文を題材にすることや、基本語の盲点となる用法を設問とすることがあり、基本事項の習得が疎かだと得点を伸ばすことができない。
要求② 高度なリスニング力を身に付けよう。
東大のリスニングは、放送時間が長いのに加え、聞き取り問題として扱うには高度な英文を題材にしており、解答には高度なリスニング力が求められる。差がつきやすい問題の1つなので、対策には十分時間をかけておく必要がある。
要求③ 時間管理力を付けよう。
東大入試英語の最大の壁は、与えられた試験時間内に膨大な量の問題に適切に解答できるかどうかである。まずは時間を意識して問題を解くこと。大意要約や自由英作文など記述に時間がかかる問題も含まれているので、日ごろから答案作成→第三者による添削→添削内容の習得・答案改善のサイクルを築いて、質の高い答案を迅速に作成できるようになっておかなければならない。

 

■東大英語攻略のために
基礎力の完成
文法事項を網羅的に習得した上で、さまざまな英文を正確に読めるようにしておくこと。また、対策にあてた時間が得点に直結しやすい要約・自由英作文の記述対策にも早い段階から取り組んでおきたい。
精度の向上と時間管理
基礎力が身に付いたことを実感できるようになったら、答案の精度を上げていく一方で、時間管理力をつけるために時間を計って演習し、自分の課題を確実に消化しておこう。
過去問を使った演習
試験本番では必要以上に時間をかけてしまい、時間配分がうまくいかないこともあるだろう。ある程度余裕のある戦略を組み立てられるように、問題に十分慣れておくこと。過去問研究の差が明暗を分ける。

 

 

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