2022年度 東京大学 英語
2022年5月10日
カテゴリー : 難関大入試の基本情報
確実に内容を理解するだけでなく、適切に表現する記述力もポイント。
一見すると読みやすく易しそうな問題なのに、いざ解答をまとめるとなると手強いのが東大英語。解答を作成するための日本語・英語での記述力こそがカギ。とにかく自分で書く演習を積むことが肝要である。
*分量:増加 *難易度:やや難化(昨年度比)
■概要 (120 分)
* 出題・解答の形式
- 記述式・客観式混合
* 特記事項
- 1(B) 文補充問題のダミー選択肢の数が3つから1つに減った。語句整序問題の語数が大幅に増えた。選択肢も含めた全体の総語数は5の長文読解とほぼ同じであった。
- 2(A) 意見陳述(賛否)型のオーソドックスなスタイルとなった。
- 3 3つのパートがすべて独立した内容となり、対話形式が姿を消した。
- 4(A) 4年連続で正誤問題が出題された。
- 5 ジェンダーについての筆者の経験を語ったエッセイであった。
■各問の分析(難易度は東大受験生を母集団とする基準で判定しています)
1(A):要約(食と人間の営みの関わり) [やや難] 約410語の英文を読んで、70~80字の日本語で要約する問題。2021年度のような「まとめるべき内容」についての指示はない。英文では、生きるために必要不可欠な「食」にまつわる活動が人間に与えてきたさまざまな影響が述べられており、比較的理解しやすい内容ではあったが、制限字数内に収めるためにポイントを絞って取捨選択する作業は困難だったと思われる。 |
1(B):文補充,語句整序(会話の切り上げ時に関する心理学的研究) [標準] 語数は選択肢を含めて約990語と、2021年度より100語以上増加した。英文テーマ、パラグラフ展開ともにわかりやすかったため、内容把握はそれほど難しくなかっただろう。文補充では肯定文と疑問文の見極め、パラグラフ展開に着目した選択肢の吟味が必要であり、手間がかかった。語句整序では、文脈から空所に入る内容を推測した上で、与えられた語群から would like 目的語 to do(目的語に~してもらいたい)という表現が使えることに気づき、適切に変形できたかがポイントとなった。 |
2(A):自由英作文(「芸術は社会の役に立つべきだ」という主張に対する考え) [やや難] 「芸術は社会の役に立つべきだ」という主張について、どう考えるか(賛否)を理由とともに述べる自由英作文。解答の語数は2021年度と変わらず60~80語。普段から「芸術」という抽象的なものについて考えていなければ、短時間で説得力のある内容にまとめるのは困難だろう。 |
2(B):和文英訳(出典:多和田葉子『溶ける街 透ける路』) [標準] 下線部の日本語を英訳する問題。2021年度と同様に和書からの引用文。2021年度に引き続き、比較的英訳しやすい日本文であった。「それはそれでいいのだが」の部分は戸惑ったかもしれないが、前文とのつながりを考慮して訳出することが必要であったとはいえ、難解な表現を使う必要はなく、全体として大きな困難はなかっただろう。1文が長いため、2文に分けるなど、英文の構成を考慮する必要があった。 |
3:リスニング((A)オウム貝の一種(crusty nautilus)の生体発見の記録、(B)思考中に行っていること、(C)科学捜査とそれに関する誤った認識) [標準] 2021年度同様、出題形式はすべて英問英答の選択式で、問題は各5問、選択肢はそれぞれ5つあった。(A)(B)が内容的に関連した対話というスタイルが続いていたが、(A)、(B)、(C)すべて独立した問題になり、また、(A)はモノローグ、(B)と(C)は講義となり、2人以上の対話は姿を消した。設問の該当箇所を特定しやすい問題が中心であったが、選択肢が紛らわしく、解きづらい問題も含まれていた。(A)や(B)では選択肢の長さが2021年度よりやや増え、その分選択肢の吟味に時間がかかり、難しく感じたであろう。また、(A)では流れる英文に語注付きの難度の高い単語が含まれていた。(B)はやや抽象的な内容の講義のため判別が難しかったものもあった。(C)は5問中4問が内容一致、残り1問は内容不一致であった。 |
4(A):正誤問題(公開討論の重要性) [やや難] 英文が5つの段落に分かれ、各段落にそれぞれ5つの下線が引かれている、例年通りの出題。語数は約590語であり、2021年度より増加した。問われている文法・語法のレベルは概ね基本的なものだが、文法・語法面からだけでなく文脈の面からも誤りの有無を判断する必要があること、また、英文自体がやや把握しにくい内容であり、誤りを含まない箇所についても「正しい」と確信を持ちにくいことから、正解を導くのにしばしば苦労する。 |
4(B):下線部和訳(子どもを読書好きにする方法) [標準] 約330語の英文。和訳する下線部は例年同様3箇所であったが、そのうちの1箇所では、下線部内の語句が何を指すかを明らかにするよう指示がついた。訳しづらい表現はあったが、全体として文構造の把握は難しくなかった。(イ)の calling の訳出には工夫が必要だっただろう。 |
5:長文読解(性別に違和感を持っていた幼少期の経験) [標準] 自らの性別に違和感を持っていた筆者が幼少期の経験について書いたエッセイからの出題で、語数は約960語。客観式問題と記述式問題が含まれており、形式・分量ともに2021年度から大きな変化はない。英文中の場面が頻繁に切り替わる上、過去の内容でも現在形で描写されている部分があるため、各場面の時系列を整理して正しく内容を把握するのがやや難しかったと思われるが、設問は比較的取り組みやすかっただろう。とはいえ、客観式問題の(D)については一部紛らわしい選択肢も見られ、注意が必要であった。 |
■合否の分かれ目
例年通り、英語の発信力・受信力・批判的な思考力を試す問題がバランスよく出題された。大問別に見ると、2(B)、4(B)などは取り組みやすい問題であった一方、1(B)、2(A)、3(B)、4(A)は2021年度よりやや難化した。120分という限られた時間内でこれだけの問題をこなさなければいけないことを考えると、決して時間的余裕はなく、負担感の多い問題構成であることは例年と変わらない。取り組みやすい問題をできるだけスピーディーに処理し、確実に得点した上で、負担感の大きい問題にかける時間を確保したい。
■東大英語の要求
要求① 「基本=易しい」と甘く見てはいけない。
難易度が高い語彙はあまり登場しないが、文脈の把握が難しい英文を題材にすることや、基本語の盲点となる用法を設問とすることがあり、基本事項の習得が疎かだと得点を伸ばすことができない。
要求② 高度なリスニング力を身に付けよう。
東大のリスニングは、放送時間が長いのに加え、聞き取り問題として扱うには高度な英文を題材にしており、解答には高度なリスニング力が求められる。差がつきやすい問題の1つなので、対策には十分時間をかけておく必要がある。
要求③ 時間管理力を付けよう。
東大入試英語の最大の壁は、与えられた試験時間内に膨大な量の問題に適切に解答できるかどうかである。まずは時間を意識して問題を解くこと。大意要約や自由英作文など記述に時間がかかる問題も含まれているので、日ごろから答案作成→第三者による添削→添削内容の習得・答案改善のサイクルを築いて、質の高い答案を迅速に作成できるようになっておかなければならない。
■東大英語攻略のために
基礎力の完成
文法事項を網羅的に習得した上で、さまざまな英文を正確に読めるようにしておくこと。また、対策にあてた時間が得点に直結しやすい要約・自由英作文の記述対策にも早い段階から取り組んでおきたい。
精度の向上と時間管理
基礎力が身に付いたことを実感できるようになったら、答案の精度を上げていく一方で、時間管理力をつけるために時間を計って演習し、自分の課題を確実に消化しておこう。
過去問を使った演習
試験本番では必要以上に時間をかけてしまい、時間配分がうまくいかないこともあるだろう。ある程度余裕のある戦略を組み立てられるように、問題に十分慣れておくこと。過去問研究の差が明暗を分ける。
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