「化学」2018年度京都大学個別試験分析

2018年度京都大学個別試験 分析速報

■分量と難度の変化
・分量・難易度とも,非常に厳しかった2017年度との比較では,分量は減少,難易度は易化した。
・小問数は2015年度21,2016年度26,2017年度30と増加傾向だったが,2018年度は21に減少した。
・大問数は4で例年通りだが,いずれの大問も中問に分割されている。また,2017年度以降は,中問ごとの連関がない出題が続いている。

■今年度入試の特記事項
・問題文に訂正が11箇所,解答削除が2箇所あった。
・例年に比べて,出題意図の汲みにくい問題が目立った。
・2017年度以降,中問ごとに内容が完全に独立しており,数年前までの東大化学のような出題である。
無機分野の知識を必要とする問題がほぼなかった
・導出過程を書かせる計算問題の数は,例年の水準に戻った(2017年度のみ7問と異様に多く,それ以外の年は1問程度。2018年度は1問)。

■合否の分かれ目
・まずは,化学問題I(a)や化学問題IV(a)のような平易な中問や,他の中問の平易な小問を確実に得点する。
・その上で,思考力が必要な問題でどれだけ正解できたかが合否の分かれ目になっただろう。
・具体的には,化学問題II(a)の問2問3,化学問題III(b)の問3問4,化学問題IV(b)の問5,(c)の問7の出来が,合否に影響したと考えられる。
・どの中問にも平易な小問は含まれており,これらを取りこぼさないことが重要である。

■大問別ポイント
 化学問題I  
(a) <理論> 氷の結晶
・受験生が見慣れない結晶構造だが,必要な情報はリード文に示されている。
・リード文の内容はそれほど難解ではなく,乗算の結果も親切に与えられているので,ここは面倒がらずにリード文を読み,計算も正確に行って,しっかりと得点につなげたい。

(b) <理論> 陽イオン交換膜法
問4(i)は平易,(ii)も溶存するイオンを書き出して整理すれば解答可能。
問5は,自分で電離平衡定数を算出する必要があり,見通しを立てにくい。

 化学問題II  
(a) <理論> 溶液の凝固・融解
問1,問2は,京大でよく見られる,文字式の計算をともなう問題。ただし,例年と異なり,計算結果を用いて考察をするという過程はない
問3は,思考力を要するグラフ選択問題。差がつく問題の一つであろう。

(b) <理論> 気体反応
・答えるべき箇所は多くなく,難度も高くないが,出題意図の取りにくい問題である。

 化学問題III  
(a) <有機> 芳香族化合物の配向性
問1は平易。リード文を読まなくても解答可能。
問2の論述は,リード文だけから読み取るのは難しく,また高校化学では学習しない内容が含まれる。京大でこのような出題は珍しい。

(b) <有機> 芳香族化合物の反応
問3の化合物K,Lの構造は分子式やアリザリンの構造などから想像する必要がある。
問4は,問3ができれば解答可能。問5は,問3,4の出来に関係なく解答可能。
・数年前までの京大有機では,複雑な条件を読み解いていく,非常に凝った問題が定番であったが,これとは趣向の異なる問題である。

 化学問題IV 
(a) <有機> 脂肪酸の構造決定
・油脂を題材にしているが,実質は脂肪族カルボン酸の問題である。
・2018年度の京大化学の中では最も平易。確実な得点が求められる。

(b) <有機> アミノ酸の電気泳動
問3,問4は平易。
問5は,強酸性条件下でどのような反応が起きているか,きちんと考えることがポイント。酸アミドの加水分解は高校化学では取り上げられないが,ここはアミドの加水分解に帰着させて考え,正解したい。

(c) <有機> アミノ酸の等電点
問6は平易。
問7は,等電点の理解度をはかる上で適切な問題である。この範囲の学習を終えたら,仕上げに取り組んでみてほしい

 

京大化学攻略のためのアドバイス

2018年度の京大化学は,非常に難易度が高く分量も多かった2017年度に比べれば,落ち着いた出題であった。しかし,目新しい題材や長いリード文からその場で状況を理解させることで,思考力・読解力といった力を試す内容であるという根本的な特徴は今後も変わらないと考えられる。
京大化学を攻略するために,高校化学の内容を完全に理解したうえで,それを応用する問題に意欲的に取り組んでほしい。また,出題範囲の約半分を占める有機化学は重点的に学習し,幅広い知識とその活用力を養成してほしい。

京大化学を攻略するには、次の3つの要素を満たすことをめざそう。

●要求1● 思考力
高校で学習する内容をそのまま当てはめるだけの問題も出題はされるが,合否の決め手となるのは,高校範囲の知識を応用させて自分で考えなければならない問題である。このような問題を考える力,またそれに立ち向かおうとする姿勢がない限り,合格を手にすることはできない。

●要求2● 読解力

京大化学の大きな一角を占めるのが,空欄補充形式の問題である。また,受験生が目にすることの少ない題材を取り上げ,それを理解した上で解答する問題も出題される。初見の題材であっても,限られた時間の中で問題文を読みこなし,正確に内容を理解する力が要求される。

●要求3● 有機化学分野の幅広い知識と活用力

京大化学では,出題の約半分を有機化学が占める。高校範囲の内容理解はもちろん必須であるが,読解や思考の前提となる幅広い知識と深い理解が必要となる。構造決定問題はとにかく演習をたくさん積んでおきたい。また,天然有機化合物の分野は,基本知識に穴がないよう,早めに対策をしておくこと

まずは,高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると,●要求1●を満たすことはできない。Z会の通信教育,Z会の教室,Z会の映像などで,基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めていこう。
高校化学の内容を理解したら,次に●要求1●を満たすために,Z会の通信教育,Z会の本などで,高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため,並行して●要求2●を満たしていくこともできる。また,●要求3●を満たすため,有機化学の補強も重点的に行っておきたい。
空欄補充形式の中には数値計算を要するものもあるので,計算力も必要である。そのため,普段の問題演習では,実際に手を動かして計算し,計算自体にしっかり慣れておこう。また,論述対策として,日頃の学習から,現象や操作,それらの理由を理解し,短い字数でまとめる訓練を積み重ねておこう

▼「京大コース」化学担当者からのメッセージ
かつて京大化学といえば,高校化学で学習すべき内容を逸脱せず,それを応用させて考えたり,高度な思考力を持って取り組んだりする必要のある,凝った問題が主流でした。しかし,特に今年は,大学で学ぶ内容をそのまま問う問題や,問題を解くことによって得られる知見があまりない問題が見られました。年明けの出題ミス騒動の結果,保守的な出題になってしまった可能性があり,もしそうだとしたらとても残念なことだと思っています。

とはいえ,思考力・読解力・有機化学の幅広い知識などといった,京大化学攻略に必要な力は,今後も必要になることに変わりはありません。傾向の変化による戦術の見直しは必要ですが,普段の学習ではそれに振り回されることなく,以前からの京大化学で求められていた力を養成することに専念するのがよいと思います。