「日本史」2018年度京都大学個別試験分析

2018年度京都大学個別試験 分析速報

■分量と難度の変化(時間:90分) 
・出題構成は,例年通り,大問4題構成で,Iが史料問題,IIが幅広い時代の空欄補充型の雑題,IIIがリード文形式の空欄補充・単答問題,IVが論述問題(200字×2問)であった。
・細かい用語の難問は減り,単答問題は答えやすくなった。全体的な難易度は例年並みである。

■今年度入試の特記事項
・2016年度のIで見られた歴史資料を提示した問題が,2018年度に再び出題された(2018年度は農事図)。
・例年2~3問出題されていた,簡潔に説明させる短文記述問題は出題されなかった。
・2014・2017年度に出題された正誤問題はなく,2016年度以来の単答選択問題が2問出題された。
・考古学的な出題は見られず,原始は弥生時代の魏への遣使に関する1問のみであった。

■合否の分かれ目
・I~IIIは,一部難解な問題も見られるが,概ね基本事項なので,ここで取りこぼしをしないようにしたい。ほぼすべて記述なので誤字で失点しないよう,正確な漢字で歴史用語を書けるようにしておきたい。
・最も差がつくのはIVの論述問題だと考えられる。(1)の「特色を対比して述べる」, (2)の「政治方針の変化を説明する」という設問の要求に沿った解答を組み立てられたかどうかで差がついただろう。

■大問別ポイント
 大問I  
・例年通り,文献史料からの出題で,空欄補充・単答形式で問われた。
・史料は,A:寿永三年源頼朝奏状(『吾妻鏡』),B:西川如見『百姓嚢』,C:大佛次郎『敗戦日記』。
・史料読解を要する設問は少なく,設問文から解答できる問題がほとんどである。但し,問(5)・問(7)など史料の下線部に解答を導くヒントがある問題もあるため,注意が必要である。
・問(1)(4)(7)は,いずれもいわゆる単純な歴史用語ではない答を漢字2字で求めるもので,思考力を要する問題であった。問(7)は,頼朝が「朝廷に対し」奏上する勲功であることから,明確に「官位」と絞りたい。
・問(10)は,図版を丁寧に読み取ることが求められる。設問文もヒントにしたい。
・問(11)は,下線部分の史料を読み取り,世界史や漢文の知識で判断したい。
・問(13)は,各政策の年代を暗記していなくても,「総理の宮」から東久邇宮内閣であると判断したうえで,戦後の民主化政策が合致するか考察することで解答は可能である。

 大問II  
・例年通り,複数の短文の空欄補充形式の出題であった。
・鎌倉時代から近・現代の大正期までの時代から,政治・社会・外交・文化と幅広く問われた。いずれも基本的な知識問題が多くを占めた。
・カ(享徳の乱)はやや難,ス(撰銭)はリード文の読み取りから導く語だが,それ以外は基本知識で解ける問題が中心なので,満点近い高得点を獲得しておきたい。

 大問III  
・例年通り,リード文型の空欄補充・単答形式の出題であった。
・3つのリード文のテーマは,A:古代の陸上・海上交通,B:中世の日中交流,C:江戸時代の旗本・御家人。
・ウ(不破関),問(2)(延喜式),問(12)(定火消)は細かい知識でやや難。
・エ(埴輪),オ(沖ノ島),ス(札差)などは,問い方がストレートではないのが京大らしい。空欄の前後の文を注意深く読み,適切な用語を導きたい。
・問(1)は,2017年度に続いて地理的把握を問う問題。京大志望者であれば解答できてほしいところ。
・問(15)は,高橋景保が活躍した時期,使節の来航目的と場所から,解答を特定できるであろう。

 大問IV 

・例年通り,200字の論述問題が2問出題された。
(1):9世紀の文化と10・11世紀の文化の特色
・弘仁・貞観文化=唐風の文化,国風文化=日本風の文化であったということを,具体的に,対比できる形で述べればよい。
・特徴の肉付けとして,9世紀では唐風文化隆盛となった背景(「文章経国思想」)に,10・11世紀では日本風とはどういうものか,ということに触れられるとよいだろう。
・具体的な文化事象については,両文化について,文字数の範囲内でバランスよく入れたい。書ける要素はたくさんあるが,いずれにしても文化の特色にひきつけて述べられるかを見極め,取捨選択してまとめるようにしたい。その際,「勅撰」の漢詩文集・和歌集が編まれたことや,密教・浄土教の特徴を表す「現世利益」「極楽往生」など,歴史用語を効果的に使ってアピールするとよいだろう。

(2):幕末期における薩摩藩の動向
・薩摩藩の政治方針の変化とは,大きくは“公武合体”から“倒幕”への路線であることはすぐに思いつくだろう。何を契機にその変化が起こったのかを,薩摩藩の動きを追って明示することが必要となる。
・画期となった事件や出来事を挙げることと同時に,薩摩藩内で藩政の主導権が下級武士に移っていくことに触れられるかどうかがポイント。
・幕末期の政治状況は,短い期間でめまぐるしく変わり,それに応じて幕府・薩摩藩・長州藩の関係も変化していくので,まずは知識整理で戸惑ったと思われる。流れ・因果関係を押さえたうえで,設問要求に沿った論旨で解答を書ききれたかで差がついたであろう。

 

京大日本史攻略のためのアドバイス

京大日本史を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 全時代・全分野にわたる知識
京大日本史では多くの単答記述問題が出題される。毎年幅広い時代・分野が満遍なく出題されるため,全時代・全分野にわたる知識と,それを正確に書ける力が必須である。とくに学習が疎かになりがちな昭和戦後史や文化史の出題も多く見られるので,漏れのないように学習してほしい。

●要求2● 史料の正確な読解
京大日本史では様々な時代の史料が出題されている。未見史料も必出なので,史料中のキーワードや出典・設問文をヒントに史料文を読解する力を身につける必要がある。

●要求3● 設問の要求に沿った論述
例年200字の論述問題が2問出題されている。リード文などヒントのない端的な設問で出題されるので,設問の意図を的確につかむ力と,知識を取捨選択して論理的に解答を組み立てる力が必要である。また,各時代・分野の重要テーマが出題されることもあるため,論述問題で出題されやすいテーマについては,一通り解いておくようにしたい。

基礎力の完成
まずは要求1を満たすことをめざそう。京大で出題される細かな知識問題に対応するためにも,教科書の基本事項は早めに身につけておきたい。また,既習分野については論述問題の対策も始めよう。Z会の通信教育で,知識の拡充と論述のトレーニングの両方が可能である。

入試形式に合わせた対策
要求2・3を強化するためには,史料問題・論述問題の演習を繰り返そう。但し単答問題の多い京大日本史では,知識量の底上げも必要なので,バランスのよい演習をしていきたい。Z会の通信教育では,答案を作成する力の養成を念頭に京大対応の問題を出題する。

実戦演習
京大日本史は時間に比して出題数が多いので,実際の入試での時間配分を考えながら演習を行う必要がある。時間を計って解くなどして,より本番に近い答案作成を行おう。

▼「京大コース」日本史担当者からのメッセージ
・2018年度の出題は,全体的に取り組みやすい印象でした。しかし試験時間90分に対して,単答70問+200字論述2問というハードさは今年度も健在でした。I~IIIの単答は,迷っている時間はありません。解答用語は基本的なものが中心ではありますが,問い方に一癖二癖あるものや,よく読まずに反射的に答えると間違えそうな問題なども散見されるので,“焦らず設問をよく読む,でも手早く解答する”ことが求められますね。過去問演習や予想問題でのシミュレーションの大切さを痛感させられる試験でした。Z会の特講「過去問添削 京大日本史」や特講「直前予想演習 京大日本史」などでの対策は効果を発揮してくれたはずです。
・Iの史料問題では,2016年度に出題された歴史資料(写真・絵)問題が再び出されました。文献史料だけでなく,様々な歴史資料で歴史を多角的に見て考察させる問題は今後も続いていくでしょう。Iの問(3)「東山道・北陸道」や,IIIの問(1)「摂津国」のように地理的把握を要する問題,IIIのオの玄界灘に浮かぶ小島「沖ノ島」を答える問題も,歴史的な史・資料や地図などを意識した学習ができていたかどうかがポイントとなる問題でした。日頃から,教科書や図説・資料集に掲載されている史・資料,地図などにも注意を払って学習を進めてほしいと思います。
・2018年度 IV(2)の論述は,これまで出題されてこなかった幕末期政治史からの出題でした。改めて京大志望者は,論述対策においても,時代・分野とも満遍ない学習を心掛けてほしいと思います。