「物理」2018年度京都大学個別試験分析

2018年度京都大学個別試験 分析速報

■分量と難度の変化(理科…時間:1科目90分,2科目180分) 
・分量は昨年並。
・難易度はやや難化。ただし,昨年度に極端に易化したため,2016年度以前と比べると易しい。

■今年度入試の特記事項
・2016年度以前は,難度が高いうえに分量が多い出題が続いていたが,今年度は昨年度に続き,解きやすい設問が並んだ。

■合否の分かれ目
・計算量が少なく,取り組みやすい設問が並ぶとはいえ,分量は時間に対して多めなので,誘導に乗ってどこまで解き進められたかが鍵。
・物理問題Iでは,(3)の問1や「コ」で差がついただろう。
・物理問題IIでは,(2)の「ト」までミスなく解けたかどうかが,その後の出来に影響する。
・物理問題IIIは,問1や「す」「せ」で点差が開いただろう。

■大問別ポイント
 物理問題 I  
・速さの1乗,2乗に比例する抵抗力を受ける物体の運動に関する問題。
・(1)では,抵抗力の大きさが速さに比例する場合について考える。計算も易しいので完答したい。
・(2)以降では,抵抗力の大きさが速さの2乗に比例する場合について考える。ミスを防ぐために,次元解析で,答の次元が正しいか確認しながら解き進めよう。
・(3)では,実験考察が出題された(京大で実験考察が出題されるのは珍しい)。時間と物体の落下距離の表やグラフから,数値計算を行う必要があるが,難しくはない。論述問題の問1では,必要な内容を過不足なくまとめられたかがポイント。速さの時間変化を表すグラフ選択問題の「コ」では,思考力が試された。
・(4)は,速さの2乗に比例する抵抗力を,簡単な力学的モデルを用いて導く構成。親切に図が与えられているので活用しよう。
・物理問題Iを通して特別難しい設問はないため,最後まで解き切ることも可能である。

 物理問題 II  
・電磁場中の電子の運動に関する問題。
・(1)では,電子が電場のみを受けて運動する。典型問題なので完答したい。
・(2)では,電場と磁場を同時にかけた場合の電子の運動について考える。電子の軌跡がわからずつまずく人もいるかもしれないが,電場だけに注目するなど,ポイントを絞って考えよう。後半の正のイオンに関する考察は,前半の電子の運動を応用して定性的に考察すれば,計算は要らない。
・(3)はフィラメントから電子が放出されたときに回路に流れる電流の大きさと磁束密度との関係をグラフに描く問題。状況さえつかめれば,定性的な考察で概形はわかる。

 物理問題 III  
・大気モデルによる圧力や分子数密度の鉛直分布に関する問題。
・「鉛直方向に半無限に延びた円筒」という設定に戸惑うかもしれないが,状況設定や計算に使う式などが丁寧に与えられているので,どこまで誘導に乗ることができたかが勝敗を分ける。
・(A)は誘導に従って,圧力や分子数密度の高度依存性を求める構成。問1は,導くべき値が与えられているため,安心して解くことができるが,やり方がパッと思いつかなければ(または時間が足りなくなりそうであれば)飛ばして先に進めばよい。
・(B)は,重力場があると,運動エネルギーと位置エネルギーの両方にエネルギーを配分しなければならないので,1粒子あたりの比熱は大きくなることを導かせる構成。計算はとても簡単で,(A)が分からなくても解けるので,完答したい。
・(C)は,容器の気体をピストンで密閉するという見慣れた設定だが,圧力の勾配があることに注意。最後の設問は数値計算だが,難しくはない。

 

京大物理攻略のためのアドバイス

京大物理を攻略するには,次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 問題文を読解する力
京大物理の問題文は分量が多く題材が目新しい場合が多い。設定を的確に把握するためには,相当の読解力が必要である。また,問題文にはヒントが含まれていることもあり,この読み取りが合否を分ける。

●要求2● 正確かつ迅速に計算する力

昨年度と今年度は易化したが,例年の京大物理では各設問で与えられる記号(物理量)が多く,設問数も計算量も多い。このため,煩雑な計算をミスなく行い,かつ,速く解く必要がある。

●要求3● 解くべき問題を見極める力

例年の京大物理では,問題文が長く,計算量も多いため,京大物理を時間内にすべて解くのは厳しい。このため,試験開始直後に問題全体にざっと目を通して解くべき問題を見極めること,および,その解答に必要な時間を適切に配分することが,合格点(ひいては高得点)の確保に向けて重要となる。大問の途中で解けない設問があっても,大問の最後の方で独立して解ける設問がある場合が多いので,諦めず全体に目を通し,「解ける設問を確実に解く」姿勢が,合格には必須である。

まずは,●要求2●を意識して,ミスなく要領よく解答できる力をつけよう。基礎力がある程度ついたら,京大レベルの問題に慣れていこう。Z会の通信教育では,読解力向上や重量級の計算にも対処する力の養成を念頭においた出題を行っている。
●要求1●や●要求3●は実戦演習の中で培われる力である。京大物理は,早めに基礎を固め,徐々に長い問題文に慣れていかないと,太刀打ちできない。自分の得意不得意,問題の難易度を意識し,試験時間をめいっぱい活用して得点を最大化できるような解き方を身につけてほしい。

▼「京大コース」物理担当者からのメッセージ
「問題文長い! 計算多い! 難しい!」の三重苦が恒例の京大物理ですが,2年連続の易しめの出題となりました。易しめとはいえ,一朝一夕で何とかなるほど,京大物理は甘くはありません。時間に対する分量は多いですし(1ページあたり6分以内に解かねばなりません),途中,高度な思考力や数学的処理を要求されることも多いです。今後,16年度以前の難易度・分量の出題に戻っても対応できるよう,演習を積んでおきましょう。

ところで,京大物理では「こんな物理モデル考えてみた! 面白いから一緒に考察してみよう」といったテーマの出題が多いです(今年度も,物理問題IやIIIはこの傾向ですね)。最初は面食らうかもしれませんが,目新しい題材ほど,誘導が親切で,解きやすいことが多いです。大切なことは2回書いてくれたり,途中で検算になるヒントを散りばめたりしてくれていますので,ヒントを見落とさず,確信をもって解き進められるようになってほしいです。