「東大日本史」2018年度個別試験分析

2018年度東京大学個別試験 分析速報

■分量と難度の変化(地歴…時間:2科目150分) 
・毎年,第1問-古代,第2問-中世,第3問-近世,第4問-近・現代というのが基本構成である。
・総字数は2016・2017年度と同じ660字。小問数は2017年度から1問減り,2016年度と同じ7問。小問の最大字数は,2013年度以来の180字で,2017年度の120字より増加した。
・全体的な難易度は例年並みである。

■今年度入試の特記事項
・第1問は提示文型の問題が定着していたが,2004年度以来の指定語句型が出題された。

■合否の分かれ目
・指定語句型・180字となった第1問は,ここ数年の傾向と異なったことから戸惑ったかもしれないが,問われている内容や必要とされる知識は基本的なものであった。第2問も,提示文から読み取れる情報と設問要求の関係が見出しやすく,取り組みやすかった。第1問・第2問で,確実に高得点を取っておきたい。
・第3問・第4問は,提示文や史料から読み取った上で設問の要求に沿う形で考察することが求められ,取り組みにくかっただろう。考察結果を反映して解答をまとめられたかがポイントになる。

■大問別ポイント
 第1問  
藤原京とそれまでの大王宮における違い,藤原京の歴史的意義(6行:180字)
・例年出題されていた提示文型ではなく,指定語句型の出題であった。
・大王宮との比較を念頭におき,藤原京の特徴を説明していけばよい。但し,解答は,特徴となる事項の羅列に留まらず,「律令制の確立過程における藤原京の歴史的意義」を踏まえた構成となるように注意したい。
・指定語句の「官僚制」を適切に論旨に組み込むことができたかどうかで差がついただろう。

 第2問  
A:室町幕府の財政の特徴(2行:60字)
・室町幕府の財政の特徴を,幕府の所在地との関係を踏まえて説明する問題である。
・室町幕府の財源は基本的な知識であり,「幕府の所在地」すなわち京都との関係を踏まえて解答をまとめられたかで差がついただろう。京都では商工業や貨幣経済が発展していること,幕府の主な財源が土倉・酒屋への課税であること,の2点を結びつけて考えよう。
B:徳政令の発布と室町幕府の財政難(3行:90字)
・徳政令の発布が室町幕府に深刻な財政難をもたらした「理由」と,幕府が財政難を打開するために採った方策を説明する。
・室町幕府は,徳政令の影響による財政難の打開策として,徳政令を出す代わりに分一銭を徴収するようになった。この変化を,90字以内で論理的に説明できたかどうかで差がつくだろう。

 第3問  
A:異国船打払令発布に際しての,江戸幕府の異国船への認識(2行:60字)
・異国船打払令を出す中で,江戸幕府が沿岸防備を強化しなかった理由を考察し,それが異国船に対するどのような認識に基づいているかを説明する問題である。
・提示文から,当時の日本近海に出没した外国船が捕鯨船であったことを読み取りたい。それを踏まえて,幕府が海防を強化しなかった理由を説明すればよい。
B:異国船打払令関連法令に関する,江戸幕府の政策意図(3行:90字)
・江戸幕府は,異国船打払令と同時に,改めて外国船との交易を禁ずる法令を出したが,これにはどのような政策的意図があったかを説明する問題である。
・異国船打払令と同時に出された法令の内容を提示文から読み取り,法令の内容とその法令に対する幕府の政策的な意図を説明すればよい。その際,「鎖国体制の維持」という幕府の根本的な方針を念頭に置くこと。

 第4問 
A:西園寺公望の教育勅語草稿のねらい(3行:90字)
・日清戦争後,西園寺公望が何を危惧し,教育勅語を修正することでどのように対処しようとしたかを説明する。
・西園寺が危惧する「状況」とは,条約改正による内地雑居の実施と,日清戦争後の国家主義の高揚により,外国人との摩擦が生じることである。しかし,史料から内地雑居への危惧を読み取ることは難しい。また,条約改正により内地雑居が実施されたことを押さえられている受験生も多くないだろう。
B:戦後における教育勅語の排除・失効(3行:90字)
・戦後,国会において教育勅語の廃止および失効確認の決議がなされた理由を説明する。
・「日本国憲法との関連に留意」する必要がある。忠君愛国を基本とする教育勅語は主権在民を原則とする憲法に反すること,天皇の統治権が否定されたことで勅語自体が効力を持たなくなったことを指摘したい。

 

東大日本史攻略のためのアドバイス

東大日本史を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 全時代・全分野についての正確な知識・理解
当然だが,日本史についての知識・理解があることが問題を解く上での前提となる。学習の際には,歴史事項の正確な意味内容や,事項の流れに加えて,律令制や幕藩体制といった,各時代を考える際の本質的な事項の理解の両方を身につけることを心掛けよう。

●要求2● 提示文・設問文の把握
東大日本史では,与えられた提示文や史・資料すべてをうまく活用すること,設問文の要求や意図を読み取ることが重要になる。東大型の問題演習を通じて,提示文を利用し,設問の趣旨にあった解答を作成する力をつけていこう。

●要求3● 要求された字数に応じて論をまとめる記述力
東大日本史で出題される字数は30字~180字と幅広い。そのため,設問の要求だけでなく,各設問で指定された字数に合わせて,情報を取捨選択し,論旨をまとめる高度な記述力が必要である。定期的な論述演習で,設問の要求を満たした論を作成する力を養っていこう。
まずは,高3の夏休み終了までに一通りの通史学習を終わらせることを目標に,要求1を満たしていこう。また,東大で要求される高度な記述力を身につけるためには,早期から定期的に論述演習を行うことも重要である。Z会の通信教育で,東大入試で必須となる基本的な知識の定着をはかりながら,論述の書き方もマスターしてほしい。
東大日本史攻略のためには,定期的に東大型の問題演習を行い,その形式に慣れることが必須である。Z会の通信教育やZ会の映像で,東大日本史で問われる知識の確認をしながら,要求2・3を身につけていこう。
冬休み以降は,時間を意識した演習も行おう。東大の地歴は2科目で150分という試験時間のため,時間配分が鍵になる。本番同様の4題セットの問題を活用しながら,解答作成にかかる時間や論述にかかる時間,問題に取り組む順番などを考えておこう。

▼「東大コース」日本史担当者からのメッセージ
・第1問で指定語句型の問題が出題されたことに驚いた受験生も多かったと思います。設問自体は東大頻出テーマの律令制に関連したもので,基本知識で対応できる取り組みやすい問題でした。但し,180字という比較的まとまった字数を知識のみで書き上げる必要があり,基本知識の学習をしっかりしてきたかどうかが如実に得点に反映される問題でした。出題形式に関わらず,基本知識は確実なものにしておきましょう。
・第3問は,江戸幕府の外交政策という東大頻出テーマからの出題でしたが,江戸幕府の「認識」や「意図」といった切り口で問われており,どのように解答をまとめるのがよいか判断に迷った受験生が多かったと思います。第3問では,2016年度の「大船禁止令の解釈の変化」,2017年度の「近世の農村における女性の立場」など,提示文の活用がポイントになる出題が続いています。このような論述問題は,一般的な論述問題の演習を積んだだけでは対応しきれないので,過去問を初めとして東大日本史に即した問題で演習を積んでいきましょう。
・第4問は,近年話題になっている教育勅語に関する出題でした。Bは,戦後の教育勅語の扱いについて,日本国憲法との関連に留意して説明する問題でした。この問題は,教育勅語や日本国憲法に関する知識だけで論じてしまいたくなるような設問でしたが,史料と設問要求がどのように結びつくかを考えた上で,解答をまとめる必要がありました。「この文章や史料が提示されているのはなぜか」「このような問いかけ方をしているのはなぜか」といった出題者の意図を意識しましょう。

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