「日本史」2019年度東京大学個別試験分析

分析速報

■分量と難度の変化(地歴…時間:2科目150分)
・例年,第1問-古代,第2問-中世,第3問-近世,第4問-近・現代というのが基本構成である。
・総字数は630字で,2016~2018年度と続いていた660字よりやや減少した。
・小問数は2018年度から1問増え,2017年度と同じ8問。小問の最小字数は30字,最大字数は120字であり,2018年度に出題された180字の出題はなかった。
・全体的な難易度は例年並みである。

■今年度入試の特記事項
・2018年度に指定語句型が出題された第1問は,従来の提示文型での出題に戻った。
・第2問で提示文に加えて系図が提示された。
・第4問設問Bで,戦後の1950年代以降について問われた。

■合否の分かれ目
・第1問は提示文からの読み取り,第2問は基本的な知識で対応できる問題であり,確実に高得点を取っておきたい。
・何を書けばいいのかがまったくわからないといった難解な問題は出題されていないが,第3問の設問Bや第4問は,江戸時代の国内消費生活の動向,近・現代の機械工業の活況といった,教科書的な切り口ではない視点から考察することが求められたので,やや取り組みにくかっただろう。
・必要な要素をもらさずに,60字や90字といった短めの字数で解答をまとめることが求められた。解答に盛り込むべき要素を見極める力と,要素を端折らずに表現を工夫して端的に述べる記述力でも差がついただろう。

 

■大問別ポイント
 第1問  
A:摂関政治期における上級貴族(1行:30字)
・「上級貴族に求められた能力」を,提示文(1)~(3)から読み取り解答にまとめる。上級貴族には,“先例通りに”儀式を行うことが重視されていた点を明確に指摘したい。
・30字と字数が少ないので,適切に取捨選択して解答をまとめる工夫が必要であった。
B:摂関政治期に貴族が日記を書いた目的(4行:120字)
・日記そのものへの知識は不要であり,設問を踏まえて提示文を読み取ればよい。
・問われている「日記が書かれた目的」と合わせて,その目的が生じた背景を提示文から読み取って解答に盛り込めたかで差がついただろう。
・120字と字数が多めである。論理的な文章構成を心がけ,単なる複数の文の羅列にならないように注意したい。

 第2問  
A:承久の乱の内容と朝幕関係に与えた影響(2行:60字)
・設問文がさす「事件」を承久の乱と判断するのは容易であり,基本的な知識で対応できる問題であった。
・提示文(1)を踏まえて,承久の乱についての説明と,承久の乱による朝幕関係の変化,という2つの要素をバランスよく解答に盛り込めばよい。
B:両統迭立と鎌倉幕府(3行:90字)
・提示文と系図から読み取った情報をもとに,設問Aの解答や知識(両統迭立)も踏まえて考察する必要があった。但し,それほど深い考察は求められておらず,解答の方向性は見出しやすいだろう。
・系図をどのように使うか迷っただろう。系図から,持明院統と大覚寺統の2つの皇統が並存していることを読み取り,解答に盛り込めたかどうかで差がつくだろう。提示された文章や資料は使いきる,というのが東大日本史の大原則である。

 第3問 
A:貿易抑制と産業奨励策の背景・意図(2行:60字)
・提示文(2)~(4)から,輸入の抑制と産物の国産化という政策を導き出そう。その上で,「政策の意図は何か?」→「その意図にはどのような背景があるか?」まで考察し,解答に盛り込みたい。
・17世紀後半には金銀の産出量が減少していたという時代背景を,知識から引き出せたかどうかで差がついただろう。
B:産業政策の背景となった国内の消費生活の動き(3行:90字)
・提示文から読み取れる情報は少なく,知識をもとに考察することが求められた問題であった。
・「国内の消費生活」という視点から問われた。必要な知識はいずれも教科書で学習するレベルのものであるが,それらの知識を総合的に考えることが必要であり,やや難しい問題であった。
・まずは3つの産物の共通点として,生活必需品ではない“高級品”であることに気づけただろうか。そこからスタートして,「高級品の需要があるのはどのような社会か?」→「その社会ではどのような消費生活の動きが見られるか?」と考察を深めていこう。その際,当時の社会・経済状況についての知識を,消費生活の動きと結び付けて考えたい。

 第4問 
A:大戦景気と機械工業の活況(3行:90字)
・史料の内容を参考にして,知識を活用して設問要求に即して考察していく問題であった。
・活況の背景として大戦景気はすぐに思いつくだろうが,本問では大戦景気がなぜ機械工業の発展につながったかを説明することが求められている。
・「機械類の需要や貿易の状況」という留意点を踏まえて,史料から具体的な「機械工業の活況」の様子を読み取り,それらがどのような需要を背景に発展したのかを説明したい。
B:特需景気と機械工業の活況(3行:90字)
・設問A同様,史料を参考にしつつ,知識をもとに考察していく問題であった。知識の有無が解答の出来を左右するが,昭和戦後期の1950年代についての出題であり,特需景気の細かい様子までは押さえられていなかった受験生も少なくないだろう。

 

 

 

攻略のためのアドバイス

東大日本史を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1●全時代・全分野についての正確な知識・理解
当然だが,日本史についての知識・理解があることが問題を解く上での前提となる。学習の際には,歴史事項の正確な意味内容や,事項の流れに加えて,律令制や幕藩体制といった,各時代を考える際の本質的な事項の理解の両方を身につけることを心掛けよう。

●要求2● 提示文・設問文の把握
東大日本史では,与えられた提示文や史・資料すべてをうまく活用すること,設問文の要求や意図を読み取ることが重要になる。東大型の問題演習を通じて,提示文を利用し,設問の趣旨にあった解答を作成する力をつけていこう。

●要求3● 要求された字数に応じて論をまとめる記述力
東大日本史で出題される字数は30字~180字と幅広い。そのため,設問の要求だけでなく,各設問で指定された字数に合わせて,情報を取捨選択し,論旨をまとめる高度な記述力が必要である。定期的な論述演習で,設問の要求を満たした論を作成する力を養っていこう。
まずは,高3の夏休み終了までに一通りの通史学習を終わらせることを目標に,要求1を満たしていこう。また,東大で要求される高度な記述力を身につけるためには,早期から定期的に論述演習を行うことも重要である。Z会の通信教育で,東大入試で必須となる基本的な知識の定着をはかりながら,論述の書き方もマスターしてほしい。
東大日本史攻略のためには,定期的に東大型の問題演習を行い,その形式に慣れることが必須である。Z会の通信教育やZ会の映像で,東大日本史で問われる知識の確認をしながら,要求2・3を身につけていこう。
冬休み以降は,時間を意識した演習も行おう。東大の地歴は2科目で150分という試験時間のため,時間配分が鍵になる。本番同様の4題セットの問題を活用しながら,解答作成にかかる時間や論述にかかる時間,問題に取り組む順番などを考えておこう。

 

▼「東大コース」日本史担当者からのメッセージ
・第1問,第2問は比較的取り組みやすい問題でしたが,第3問,第4問は見慣れない視点での出題であり,解答をまとめるのに苦戦した受験生も少なくなかったかもしれません。
・第1問は,「貴族社会と日記」というテーマに戸惑った人もいたかもしれませんが,提示文を読み取った内容を設問要求に即してまとめていけば対応できる問題でした。摂関政治期の役人である貴族について考えさせる問題であり,東大頻出テーマの律令制に関連した出題でした。本問は知識よりも提示文を読み取る力が求められましたが,律令制に関する基本的な知識は確実に押さえておきましょう。
・第2問設問Bは,設問文と提示された系図から,両統迭立に関連して答えればよいとすぐに判断できたと思います。両統迭立については基本的な知識から説明することができますが,早合点して解答を作成してはいけません。「東大が系図を提示した意図は何か?系図から何を読み取らせたいのか?」と一旦考えてから,解答に盛り込むべき要素を検討していきましょう。
・第4問は,史料が提示されていたものの,知識重視の問題でした。但し,知っていることを闇雲に書いても得点には結びつきません。設問文や提示された史料から,どのような方向性の解答が求められているかを考えて,その方針に関係する知識に絞って解答にまとめていきましょう。東大日本史の第4問は,文章や史・資料の提示がなかったり,読み取れる情報が少なかったりと,知識がないと解答できない問題がしばしば出題されます。受験生が苦手にしがちな近・現代の範囲ですが,教科書の精読などにより,昭和戦後期を含めて基礎知識を磐石なものにしておきましょう。
・Z会の通信教育 本科「東大コース 日本史」では,東大日本史を解けるようになるために取り組んでほしい問題や,東大日本史の出題形式や設問の傾向,頻出テーマを踏まえた問題を豊富に出題しています。とくに東大日本史は特徴的な出題形式であり,一般的な論述問題で対策を行っても十分な対策とはいえません。Z会オリジナルの,東大日本史に即した問題演習を積み,個々の解答に応じた添削指導を受けることで,東大日本史への対応力を着実に養っていきましょう!

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