「プログラミング」は「教科」ではない

前回ご紹介したような「力」は一朝一夕で身につくものではありません。そこに至るまでに、子どもたちの発達段階に応じた「学び」があるはずです。どのような学びが「アルゴリズム」につながっていくのか、身につくものはアルゴリズムの力だけなのか。これから数回に分けて、学校ではどのような「学び」が求められるのかを考えていきます。

 

 

「プログラミング」は「教科」ではない

第1回でも触れた通り、「プログラミング必修化」という言葉から、国語や算数などと同列に「プログラミング」といった授業ができるという形をイメージされる方は少なくないのかもしれません。しかし、新学習指導要領には次のような記載があります。

第2章以下に示す各教科、道徳科、外国語活動及び特別活動の内容に関する事項は、特に示す場合を除き、いずれの学校においても取り扱わなければならない。(第1章(総則)第2の3の(1)のア)

「第2章以下に示す各教科」とは国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、外国語(=英語)の10教科。そう、ここには「プログラミング」は登場しないのです。ではどこで「プログラミング」を学ぶのかというと、次のように書かれています。

各教科の指導に当たっては、……(中略)……各教科等の特質に応じて、次の学習活動を計画的に実施すること。
児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身につけるための学習活動(第1章(総則)第3の1の(3)のイ)

「各教科の指導」の中に「プログラミングを体験」することを含めなさい、という指示です。この指示は、例えば「児童の言語活動」や、「児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動」と同列の扱いです。つまり「言語活動」や「振り返り」などと同じレベルで「プログラミング」を各教科の中で取り扱うのが「プログラミングの必修化」なのです。新たな教科として組み込まれるわけでもなく、プログラミングの「ための」授業が行われるということでもありません。

 

具体的に何をするの?

「プログラミング」が「言語活動」などと同じ扱いだということは、授業中に発表をするのと同じような感覚で「プログラミング」を行う、と捉えても間違いではないでしょう。疑問に思ったことがあればシミュレーションをするためのプログラムを作る、というような姿であれば、確かにどの教科でも行うことができそうです。しかし、新指導要領で具体的な例が明示されたのは算数、理科の一部の単元のみで、それ以外にはかろうじて「総合的な学習の時間」の項に「プログラミングを体験」という文言が入ったのみです。もちろん、文部科学省もそれだけで行えばよいとは考えておらず、別の資料(学習指導要領解説)で「例示以外の内容や教科等においても…(中略)…工夫して取り入れていくことが求められる」と補足してはいますが。

このような状況のため、実際に使うことになる教科書が出版されるまで、どのように授業内に取り入れられるのかは手探りの状態です。文部科学省より公表されている「小学校プログラミング教育の手引き」を参考に、どのような授業が展開されるのかを考えてみましょう。

例えば…(中略)…正多角形の作図を行う学習に関連して、正確な繰り返し作業を行う必要があり、さらに一部を変えることでいろいろな正多角形を同様に考えることができる場面などで取り扱うこと。(第2章第3節「算数」第3の2の(2))

小学校でよく使われる「スクラッチ( https://scratch.mit.edu/ )」という「プログラミング言語」を用いて、次のような授業が展開できそうです。

「正多角形って、どんな図形か、思い出してみよう」
「そうだよね、すべての角の大きさと、全ての辺の長さが同じ図形だったよね」
「例えば正四角形、つまり正方形だったら、角の大きさは何度になるのかな」
「そう、90度だね。そこで先生はこんなプログラムを作ってみたんだ。これを動かしてみよう」

「じゃあ次は、正三角形がかけるように改造してみよう。」

「90度回す」部分と、くり返しの回数を変えれば、他の正多角形も作図できそうです。じゃあ正三角形なら、「3回くり返す」にして「60度回す」とすればいいのかな?あれ、これだとうまくいかないぞ……!

このようなやりとりを通じて、正多角形への理解を深めていく。ここで大切なのは、「同じ作業」を「くり返し行う」ことで正多角形ができる、という点です。教科書で学習したことを振り返り、思考を意識し、実際に表現することでより深く理解することにつながります。「プログラミング」を導入することで教科をより深く理解することが、「プログラミング教育必修化」で求められる目に見える成果なのでしょう。(ちなみに正三角形を作るためにはどのようなプログラムにすればよいのでしょうか。本稿の最後に正解と解説を用意しました。)

 

 

「プログラミング」である必要はあるのか

「プログラミングを体験する」ことはイメージできたとしても、一方で「こうしたことを『プログラミング』で行う必要が本当にあるのか」という疑問を持たれる方もいらっしゃることでしょう。これまでの小学生はこのように学ばなくても理解してきたではないか、学ばなければならないことはたくさんあるのだからほかのことに時間を使うべきじゃないか、と。

この点に対しては「まさにその通り」とは思いつつも、新たな「道具」を導入することをためらってはいけないと考えています。「明治時代には映像授業なんてなかったのだから、学校の授業でビデオを見せることはけしからん!」という声を聞くことはありません。確かにかつては「映像」の助けを借りなくとも子どもたちが授業を理解していました。しかし映像の力でより理解が深まり、教科書や板書から得られる以上の情報を映像から得ることもできるようになりました。「プログラミング」についても同じことが言えるのではないでしょうか。新しい技術を何かの代替として使うのではなく、より児童・生徒の理解を深めたり、これまでにない価値を与えるために使うことで、教育はより「進化」していくことでしょう。そのためにも、機会を見て「慣れる」ことが今後、求められていくはずです。

また、「プログラミング的思考」を養うことも必要です。むしろ小学校段階での「プログラミング教育」の目的は、まさにこの「プログラミング的思考」を養うことにあります。この点についても、「すでに『プログラミング的思考』を身につけている大人がいるのであれば、何もプログラミングを教えなくても別の方法で養うことができるのではないか」という声がありますが、プログラミングを通して学ぶことでより効果的に身につけられるものです。「プログラミング的思考」については次回詳しく紹介します。

 

 

「コンピュータに親しむ」ことの大切さ

ところで、日本の「プログラミング教育」を考える上で避けて通れないのが「子どもたちはコンピュータの操作ができるのか」という問題です。スマートフォンやタブレットなどに慣れた子どもたちですから、パソコンの操作そのものにはいずれ慣れていくはずですが、文字入力が大きな懸念点として残ります。

文部科学省の調査では「小学5年生が1分間に入力できる文字数の平均は5.9文字」との結果が出ており、「こんにちは。」と入力するだけでも1分近くを要するというのが現実です。もちろんこの数字は平均ですので、なんの問題もなくタイピングできる児童もいれば、全くキーボードに触れたことがない児童まで幅広くいるのは事実ですが、全体としては「タイピングができない」と考えて間違いないでしょう。単純に日本語の文章を入力するだけであれば、音声入力でもフリック入力でも構いません。しかし漢字・ひらがな・カタカナだけではなく、アルファベットや数字、記号を含んだ文章を書こうとすると、それらの入力法には限界があります。また、入力したあとの編集作業では、キーボードを使わないと効率が上がりません。これからの技術発展でさらに効率的な入力方法が登場するしても、少なくとも現時点ではキーボードに慣れることは必須です。できることであれば、キーボードの操作はご家庭で慣れておきたいものです。

 

 

【次回予告】

新学習指導要領のキーワードの一つ「プログラミング的思考」とは何なのでしょうか。「プログラミング」と「プログラミング的思考」は何が違うのか、どのように身につけるのか、そもそもどのような能力なのかを探ります。

 

Z会のプログラミング講座ラインナップ

 

 

《正三角形をかくプログラム》

「120度回す」とします。正三角形の「角」は図形の内部にありますが、スクラッチの画面上で動く猫が回る角は図形の外側にあります。そのため、図形の内部の角(これを内角といいます)を60度にするためには、図形の外部の角(これを外角といいます)を120度にしなければなりません。なお、「60度回す」のままにしてくり返しの回数を6回にすれば、正六角形をえがくことができます。

 

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