Column 22年11月 Web3.0とは?

イギリスのコンピュータ科学者であるギャビン・ウッドが「Web3(ウェブスリー)」という用語を生み出しました。次世代のWebサービスとして提唱されたこの概念は、一部の大手IT企業に権限が集中している現在の仕組みを変えるものとして、近年注目を集めています。ニュースなどでは「Web3」ではなく「Web3.0」と紹介されることが多いようですが、Webサービスをどのように変えるものなのでしょうか。

中央集権的なWeb1.0、Web2.0

「Web3.0」とあるからには、「Web1.0」や「Web2.0」という考え方も存在します。
Web1.0 は、コンテンツを提供する側がWebページを作成・公開し、コンテンツを受け取る側がそれらのページを閲覧するという、一方向のWebサービスのことです。それに対してWeb2.0は、利用者の属性や嗜好に応じて情報を出し分けたり、SNSで相互に情報をやり取りするといった、双方向のWebサービスを指します。
Web1.0とWeb2.0では、一方向と双方向の違いはあっても、サービスを提供する側(サーバ)と享受する側(クライアント)という関係性に変わりはありません。SNSサービスにおいても、情報を相互にやり取りしていますが、それらの情報はすべてサービスを提供するサーバに蓄積されています。これらの中央集権的なシステムの問題点を解決するために、Web3.0という仕組みが提唱されました。

Web3.0は分散処理システム

Web2.0までの中央集権的なシステムは、サーバにすべての情報が集約されているので、効率よくサービスが提供できる一方、障害発生時のダメージが甚大であったり、セキュリティに問題があった場合に情報をごっそり持ち去られてしまうといった問題があります。
これらの問題を解決するために、分散型の処理システムが考案されました。この分散処理システムを利用したWebサービスが、「Web3.0」と呼ばれる考え方です。

【最新ICT解説】 今さら聞けない「Web3.0」とは
https://project.nikkeibp.co.jp/pc/atcl/19/06/21/00003/101900391/

分散処理システムのメリット

Web3.0では、利用者一人ひとりにデータを分散して保持させます。それにより、

①システムに障害が発生しても、データの損失が最小限で済む
②セキュリティ上の問題があっても、流出するデータが最小限で済む

というメリットがあります。また、さらなるWeb3.0の狙いとして、

③一部の大手IT企業による寡占状態を解消する

ということも期待されています。現在のWebサービスは、プラットフォームを提供している企業の一人勝ち状態となっており、ユーザはプラットフォーム企業に対して、個人情報を含む各種情報を提供しなければならなかったり、サービス内容などの変更に従わなければならなかったりします。Web3.0では、このように一部企業が強大な権力を握る状態からの脱却が期待されています。

Web3.0でできること

Web3.0では一般的に、「ブロックチェーン」と呼ばれる技術で、分散されたデータの真正性を担保しています。

【保存版】超わかりやすいブロックチェーンの基礎知識
https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/201804/blockchain-basic/

この技術を利用して、すでにいろいろなサービスが提供されています。

・分散型金融(DeFi)
銀行などを用いずに利用者同士で決済を行うことが可能な仕組みです。仲介手数料が発生しない、取引時間を短縮できる、などのメリットがあります。仮想通貨の取引などで利用されています。

・非代替性トークン(NFT)
コピーが容易であるデジタルデータの真正性を証明するための仕組みです。取引記録も保存されるため、データの所有者が誰なのか、不正取引が行われていないかを確認することができます。芸術作品に利用されるほかに、デジタル化したコンサートチケットの転売を防止するといった利用方法があります。

その他、最近話題の「メタバース」でも、ブロックチェーンの技術が使われています。メタバースは単に仮想空間を三次元で体験できるだけのものではなく、ブロックチェーンによってユーザ同士のやり取りが記録されるので、ユーザ同士で直接経済活動を行うことが可能です。
Web3.0とそれを支えるブロックチェーンで、仮想空間だけでなく現実の社会もより進化していくことが予想されます。どんな未来が待っているのか、楽しみですね。