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大学生
根本千恵さん

先生
大熊政明先生

卒業生
笹森将太さん
 

CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス



●プロフィール




先生の研究分野について教えてください。


先生
機械力学、その中でも特に、「構造動力学」と呼ばれる専門分野の研究をしています。身近な例で言いますと、自動車に乗った時に、乗り心地や、振動・騒音がうるさいかどうかなどを感じますよね。そういう性能を向上させるためのKeyとなる技術分野です。
機械は複数の部品の組み合わせでできていますが、自動車のように全体が移動したり、工場で働く機械のように中でメカが高速で動いていたりすると、加速度が生じて、どうしても振動や音が出てきてしまいます。うるさいだけでなく、耐久性や信頼性など、性能の良し悪しに関わってきます。同じような仕様の機械でも、その部分の設計次第で違いが出てきますから、「技術の差」の要になる専門分野だと思います。


スペックとしては伝わりづらいけど、実際に使ってみると違いがわかる、ということでしょうか?


先生
そうです。ですから対象は自動車に限らず、ほとんどすべての機械であり、特に、高速度と高精度を要求されるものです。風力発電用の大型風車、産業用ロボット、人工衛星やロケットの宇宙関連など、適用される分野は多岐にわたります。

卒業生
私は、機械設計の仕事に就いて、初めて動力学の難しさと大切さがわかってきた気がします。単純な機械設計で言えば、これだけの力をかけたら物が壊れるというだけの話ですが、普通にかけるだけでは壊れない程度の力でも、一定の振動で力をかけ続けると、共振によって力が大きくなり壊れてしまうことが起きるのです。

先生
共振とは、振子などの振動する物体に外から周期的な力を加えた場合、その振動数が物体の固有振動に近いほど外からかかる力のエネルギーが有効に吸収され、物体の振動が激しくなる現象です。歴史的にも有名な話としては、アメリカのタコマ橋という吊り橋が、1940年のある日、風の影響でものすごい振幅で揺れてしまい、崩落した事件がありました。YouTubeなどでも、その時の映像を見ることができます。
ですから、本州四国連絡橋の建設の際には、ミニチュアのスケールモデルを作ったり、風洞実験をしたり、コンピュータ解析をするなど、動力学の知識を駆使して、徹底的に調べられています。

笹森さんの大学院時代の研究は、どういうものでしたか?


卒業生
大熊先生の関心が幅広いため、研究室では、音に関する研究テーマもありました。音も空気の振動ですから、動力学の研究対象になります。私は、両耳聴といって、2つの耳で音を聞く仕組みの研究をしていました。両耳の部分にマイクがついている、人間の大きさのロボットに音を聞かせて、その音が聞こえてくる方向を認識できるのかを解析するのです。単純に音がどこから聞こえるのかを判断するには、マイクの数を増やした方が理論的には楽なのですが、人間は、2つの耳で音の方向を判断していますので、同じ条件にしました。こうした研究は、補聴器の開発などにも応用できるものです。

笹森さんのお仕事を教えてください。


卒業生
私は今、株式会社オリエンタルランドに勤めています。主に東京ディズニーリゾートの運営をしている会社で、機械のメンテナンスや設計に携わる、技術職という採用枠で入社しました。技術本部の設計部に所属し、アトラクションの設計に関する仕事を行っています。
業務を大きく分けると、新規の設計と既存の改善という2つがありますが、頻繁に新しいアトラクションができるわけではないので、日常的には、長く使ってきたアトラクションを、見た目は同じでも中身をより良い機械に変えるとか、不具合が起きないようにするという改善の設計が中心です。新規導入するアトラクションについては、どういう設計をするのかなどの仕様を考えていきます。
ゲスト(来場者)に楽しんでいただけるものを作るのはもちろんですが、安全で安心なものを提供することを大前提として取り組んでいます。

先生
ディズニーランドの本部はアメリカだから、アメリカと行ったり来たりすることも多いのだよね。英語も上手になったんじゃないの?

卒業生
いえ、今英語で話しかけられると困ります(笑)。
今年度は2回、ロサンゼルスに出張する機会がありました。アメリカ人のエンジニアと話しをするのは楽しいですね。専門的な話は、勘違いしてしまうと大変なので通訳の方がいないと難しいですが、日常会話はできるようになってきました。

根本さんの大学での研究内容を教えてください。


大学生
私は、人工衛星パネルの展開機構の研究をしています。人工衛星の太陽光パネルは、面積が広いほどたくさん発電もできるので、打ち上げる前は折りたたんでいて、宇宙に出てから広げるという方法を使います。それが宇宙できちんと開くのかどうかを、コンピュータでシミュレーションするという研究です。

先生
余裕を持って開くものを作ればよいのですが、人工衛星は極力軽量化しなければいけないという制約がありますので、ギリギリの軽さだけど確実に開くという、きわどいところの設計が必要になります。その支援をするための研究です。



  

 

  

●インタビューに答えてくれた方々


 


先生
大熊政明先生  

東京工業大学大学院理工学研究科機械宇宙システム専攻教授(工学部機械科学科兼担)
埼玉県立川越高等学校出身。東京工業大学工学部機械工学科卒業。東京工業大学大学院理工学研究科博士課程中退。1983年より東京工業大学工学部機械工学科助手、1990年より東京工業大学工学部機械工学科助教授、2000年より現職。

   


卒業生
笹森将太さん

株式会社オリエンタルランド勤務
愛知県立旭丘高等学校出身。東京工業大学工学部機械知能システム学科卒業。東京工業大学大学院理工学研究科機械宇宙システム専攻修士課程修了。現在技術本部設計部エンジニアリンググループに所属し、機械のメンテナンスや設計に携わっている。

   


大学生
根本千恵さん

東京工業大学工学部機械科学科4年生(2013年度取材当時)
東京都立西高等学校出身。高校ではオーケストラ部にてクラリネットを担当。大学では東工大オーケストラに所属し、オーボエを担当している。現在はドイツ留学を目指して準備中。

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