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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 

●5年後に向けて




将来の夢や目標についてお聞かせください。


大学生
哲学を専門的に学んでいくのはこれからなのでまずはそこに集中していきますが、同時に将来の準備もしていこうという気持ちはあります。先ほどもお話ししましたが、卒業後は報道の仕事に就くことができればと思っているので“書く”ことも勉強していきたいですね。
そして実際に記者になれたら、仕事を通して様々なことを吸収し、その中で何か専門性を高められれば再び学術の分野に戻ってくるのも面白いだろうと考えています。「学術的なことって何?」と聞かれたら、今の段階では具体的なことはわかりませんけど。あくまで今思い描いている理想ですね。


卒業生
私は自ら希望した会社に就職できたので、仕事に関しては日々やるべき業務をきちんとこなしていければと。地味ながらもコツコツやっていくつもりです。
あとは、プライベートなことで言えば、好きな本をもっとたくさん読みたいと思っています。これまであまり読んでこなかった海外の小説なども、時間を作って読んでいきたいです。

塩谷さんが今就かれている仕事のやりがいは何でしょう?


卒業生
私たちのグループは、明治の時代に郵便事業が創設されて以来、ユニバーサルサービスを提供し続けてきました。2007年に民営化し、2012年のグループ再編を経て、現在は4社体制をとっています。
4社体制といいつつ、一般社員の労働条件はグループで横並びをとっており、正規社員がおよそ20万人、非正規社員を含めれば44万人、それら社員の皆さんの家族も含めれば100万人規模になるでしょうか。社員の労働条件を多少なりとも改定すれば、グループ社員の皆さんの生活に影響が生じ、また、人件費という形で、会社の財政状況にもインパクトをもたらします。

大学生
すごく大きな規模ですね。

卒業生
もちろん間違いがあれば大変なことになるので小心者としてはとても怖いです。ですが、グループのビジョンを実現するためのベストな解になるべく近づけるよう、グループ各社等それぞれの思いを踏まえ、調整を重ねた結果、施策が実現に至ったときは、末席にいる自分も大きな達成感を感じます。
研究分野で先生が今後取り組んでいきたいことは何でしょうか?

先生
私はこれまで手を広げて、手を広げて、また手を広げて…と多岐にわたる対象を研究してきましたが、今後は少し手をすぼめる方向で、でもそれは縮小ではなく“結晶化させていく”という意味で、哲学研究に携わっていこうと考えています。もう歳も歳ですから。

卒業生
今日何年かぶりにお顔を拝見しましたが、まだまだお変わりありませんよ。

先生
ありがとう(笑)。あわせて今後の活動についてもう少しお話ししますと、既にやり始めていることですが、今以上にもっと積極的に海外の研究者と共同研究を行っていきたいと思っています。

大学生
海外なら欧米の大学が中心になるのですか?

先生
哲学というと欧米のイメージがあるかもしれないけれど、最近はアジアがとても活発で、これは哲学がグローバル化している証拠でもあります。今年の2月と3月に学生を連れてシンガポールと台湾に行ってきましたが、ひと昔前なら哲学を勉強しに行くとなればヨーロッパやアメリカの大学がスタンダードでした。実際に私もイギリスに留学していましたし、当時はアジアで哲学を学ぶというオプションなんて頭に浮かびませんでした。
しかし今や、まさに新しい時代が到来しつつあり、アジアの中で英語を共通語とする学術のコミュニティができつつある。大学での教育、学生の交流も含め、どんどんと交流の環が大きく広りつつあり、今後もそういった状況が進んでいくでしょう。私も次の世代への“橋渡し”的な意味も込めて、そういった方向に進んでいこうと考えています。

 


●高校生へのアドバイス




京大の文学部を目指す高校生にアドバイスをお願いします。


大学生
受験勉強がすべてだとは思わないように、ということでしょうか。受験勉強は教科も決まっているし、必ずしも自分のやりたいことではないかもしれません。だからこそそれが自分の人生のすべてだと思わずに、ちゃんと何かにつながっていると信じて乗り越えてほしいです。

卒業生
私もそう思います。

大学生
例えば、受験勉強をしていて「なぜこんなことに一生懸命になっているの?」と疑問を持ったら、それを乗り越えることで忍耐力の形成につながっていったりするし、受験英語を勉強しても、外国の人と会話ができるようにはならないけれどその基礎になると信じて頑張れば、入試止まりの勉強で終わらず先にもつながっていくはずです。

卒業生
“先につながる”とうことでは、大学を選択することはこれからの人生を考えていく上で何に目を向け、どう生きていきたいのかの選択にもつがっていると思います。ですから偏差値だけで大学を選ばず、むしろ大学選びは「将来自分が何を重視して生きていくのか?」を考える良い契機になるので、“人生の選択の一歩”と考えて受験に臨んでほしいですね。
だからといって受験勉強だけで高校時代を費やしてしまうのももったいないので、自分が楽しいと思うことはどんどんやってほしい。私の場合、それが本でしたが、大人になると時間の制約もあるので、もっと高校の時にたくさん本を読んでいれば良かったと思うことはあります。

先生はいかがでしょうか?


先生
大学受験からもう何十年も経って現在の状況にうといので、受験勉強についてはとやかく言えませんが、私からアドバイスするとすれば「本気で打ち込める好きなことをまず探してください」ということです。“本気で”というのは、親から「ご飯の時間だからやめなさい」と言われてもやる、寝る時間も惜しんでやる、放っておいたら四六時中いつまでも延々やっている、それくらい没頭することです。その対象は勉強でも音楽でも何でもよいと思います。
もちろん本気で打ち込んだとしても、常に良い結果が出る訳ではありません。また重要なのは、結果に対する評価は、プラスであれマイナスであれ、本人ではなく他人が下すものだということです。文学部志望なら小説家を目指している人もいるかもしれません。小説家になりたいのならば、まずは小説を書くことに本気で取り組まないと話にならない。その上で、評価は、編集者や文学賞の審査員といった他人の手にゆだねるしかない、結果が良ければいうことないですが、駄目なら駄目で堂々と別の道に進めばよいと思います。ある人が何らかの進路や職業に向いているかどうかは、その人が本気で取り組んだ結果を前にしないと、そもそも判定できないのです。
とは言っても、夢中で打ち込めること、楽しいと思えることは何かを見つけ出すことはなかなか大変です。何年探したら見つかるか、それは誰にもわかりません。一生見つからないまま終わることも、ままあると思います。でも、見つけようとしないと見つからない。高校生の皆さんには本気でそれを見つけようとする気概を持ってほしいですね。

大学構内のお気に入りスポット
卒業生
私はカフェテリア「ルネ」が好きな場所でした。卒論の講座を受講し終わったあと「ルネ」のテラスで、夜遅くなるまで同級生と延々しゃべっていました(笑)。

先生
はははは。あの体育館の横のテラスで?

卒業生
そうです。お腹が空いてきたら「ルネ」でほうれん草の小鉢とかを買ってきて。

大学生
美味しそうですね!

先生
一筆さんはどこかお気に入りの場所はある?

大学生
時計台がある建物に生協があって、そこから外に出ると“屋外カフェ”のようにテーブルと木のイスが置いてあるんです。晴れの日はとても気持ちよく過ごせるので、私はそこがお気に入りですね。先生はどこかありますか?

先生
私もここの卒業生ですし長い間京大にいますが、今はもうキャンパスが職場になりましたからね。職場って基本的にはいたくない所ですから(笑)、大学に隣接する馴染みの喫茶店が好きな場所かな。学生の頃は朝から夕方まで居続けましたけど。私がよく行くその喫茶店は1930年代の建物が内装もそのまま現存していますし、今でも時々行きます。懐かしさもあるし、かつ職場や仕事からちょっと解放されたい時に足が向かいます。

 

 

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