小田先生のさんすう力UP教室

角度の感覚を鍛えよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、たこ焼きが好きな小田です。そういえば以前、関西人に「関西人はみんなタコ焼き器持ってるの?」と聞くと、みんな「そんなことないやろ。自分は持ってるけど」と答える、という話を聞きました。わたしも、そんなことないやろ、と思っていたのですが、実家に帰った際に確認してみると、うちにもタコ焼き器がありました。

 さて、今回は角度の問題です。角度の問題は、ある程度スムーズに学習を進められる人と、なかなかうまく学習を進めていけない人と、両極端に分かれる分野です。その違いはどこにあるのか、を探っていくのが今回のテーマです。

 それでは早速問題に行ってみましょう。

Stage30:角度の感覚を鍛えよう

 (あ)~(え)のパネルを使って(A)の形を作ろうとすると、パネルが1枚余ります。余るパネルはどれでしょう。

 

指導のヒント

 問題の意味はだいじょうぶですね。(A)をつくるのには(あ)~(え)のうちの3枚しか必要ない、ということです。その3枚の並べ方はいろいろとありますが、“不要なもの”はどれか一つに決定します。
 まずはいつも通り、お子さんの好きなようにやらせてあげてください。頭のなかだけで考えるのが難しいようであれば、(A)の図に実際に書き込んでいきましょう。
 書き込んでいくのも難しいようであれば、それぞれのパネルに対して、“端に置いたときにどれくらいまで埋まるか”に注目させてみてください(たとえば、(う)のパネルだと図のようになります)。

 それでもなかなかうまくいかないときは、印刷して切り取り、実際に並べてみてもいいでしょう。
 お子さんが紙に図を書いて答えを出した場合は、実際に書いた図の“2直線の開き具合”がだいたい正しいかどうかを確認してあげてください。

解答

(い)

※上記は、残りのパネルを並べた例です。

さんすう力UPのポイント

 同じ時間、同じ教室で、同じ先生から同じように算数・数学の授業を聞いていても、スムーズに新しい概念を理解できる子と、そうでない子がいますよね。それはなぜでしょうか。
 多くの人は、それは、頭のできの違いやもって生まれたセンスの差だ、と考えているようですが、実はそう単純な話ではありません。もちろん、そういった要因をすべて否定することはできませんが、それよりも大きく影響してくるのは、実は“それまで積んできた経験”の差です。

 算数(そして数学)では、さまざまな現象の奥にある抽象的な法則や、それらの扱い方を学習します。“抽象的なもの”は、端的に言えば難しいです。新しい概念を学習するとき、「わからない」というのは、いわば当然の反応なのです。しかし一部には新しい概念を聞いてもすぐに理解できる人がいるじゃないか、と思いますか。そういった人は多くの場合、その新しい概念の話を聞いた段階で、すでにその概念の“イメージ”をある程度もっているのです。きちんとした理解には至っていなくても、すでになんとなく感じている“イメージ”があれば、「新しい概念を知る」というのは、その“イメージ”に名前をつけるだけの作業になります。そうすると、「なるほど! あれはそういうことだったのか!」となり、スムーズにその先へと進んでいくことができるのです。

 それでは、その“イメージ”を作るためにはどうすればいいのでしょう。いちばんいい方法は、算数的経験を積む、ということです。それは決して、先取り学習をする、という意味ではありません。
 たとえば今回の問題は、角度を“角度”として学習する前の、イメージを作る問題です。「角度」というのは、根源的には「2直線の開き具合(もしくは回転の量)に注目する」という概念です。そういったことに注目したことがない子に対して、いきなり「1周は360度」や「三角形の内角の和は180度」のようなことを教えても、角度の概念を本質的に理解するのは難しいでしょう。言われた通りに計算はできたとしても、何をやっているのかさっぱりわからず、算数が嫌いになってしまいかねません。それを防ぐために、まずは「2直線の開き具合」に注目する経験を積んでおいてもらおう、というのが、今回の問題のねらいです(もちろん、算数の問題でなくても、日常生活のなかでケーキやピザの大きさ(角度)に注目する経験があれば、“角度”の学習は比較的スムーズに進めることができるでしょう)。

 もちろん、算数・数学の学習において、“スムーズに進んでいくこと”は、いちばん重要なことではありません。算数・数学の学習を進めていくと、どこかの段階では必ず「すぐにはわからない」ことと出合います。その意味では、「わからない」を「わかる」ようにしていく努力のほうが、重要だということもできるでしょう。しかし、学習を始める最初のほうの段階で、「わからないこと」ばかりだと、やる気がなくなってしまう、というのもまた事実です。それに、漠然と抱いているイメージに明確な名前がつく、というのは、「わかる感動」を味わう経験にもなりますしね。とくに低学年のうちは、さまざまな算数的対象と触れ合い、豊かな算数的経験を積み、(角度に限らず)いろんな概念の“イメージ”を作っておいてほしいと思います。

もっと問題

 下のそれぞれのパネルの組で、(B)(C)(D)の形を作ろうとすると、パネルが1枚ずつ余ります。余るパネルはどれでしょう。

  • 解答  (1)(き)  (2)(し)  (3)(そ)

※上記は、残りのパネルを並べた例です。


 いかがでしょうか。ちなみに、わたしは“ふわとろ”のたこ焼きが好きです。外がカリカリのたこ焼きは、それはそれでおいしいとは思っているのですが、あれは“たこ焼き”とは認めず、“揚げたこ焼き”だと思っています。まあ、そんな偉そうなことを言いつつ、大阪にいたころは某チェーン店以外のたこ焼きはあまり食べたことはなかったんですけどね。最近、県外の友人が大阪に遊びに来たとき、いろいろとたこ焼き屋さんを調べて、おいしいたこ焼きをたくさん知りました。さすが大阪。いろんなたこ焼きがあるんですね。大阪に帰った際にはまたいろいろとたこ焼きを食べて回りたいと思います。

 それではまた来月!

文:小田・敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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