小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、タオルの買い替えを検討している小田です。タオルの買い替えって難しいですよね。タオルは用途ごとに分けたいですが、洗濯するときは結局まとめて洗うので、見た目でどれが何用のタオルかを識別できるようにはしたいです。しかし、だからといって、用途ごとにそれぞれ完全に同じタオルばかりにしてしまうと、それはそれで寂しい気がします。統一感がありつつ、いくつかバリエーションもあるような“シリーズ”ものがうまく見つかるといいのですが。

 さて、今回は計算のパズルです。12月号のように、決まるところから埋めていく、という考え方も使えるといいかもしれません。少しルールが難しいですが、今回も楽しんでもらえるとうれしいです。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage48:数のパズルを楽しもう

例題

たて・よこに入れた数の和が、書かれている数になるよう、空いているマスに数を入れてください。ただし、太い線で区切られたブロックには、1~3がそれぞれ1回ずつ入ります。

 まずは問題の意味が理解できているかどうかの確認ですね。「列の数の和が指定された数になる」という部分は、わかっていなさそうだったら「こことこことここを足すとこれになるよ」と具体的に伝えてあげるといいでしょう。もうひとつの「同じ数を入れてはいけない」の方は、勘違いしやすいルールです。冒頭でも触れたように、12月号の問題と似ている部分もありますが、今回は「同じ列」には同じ数が入っても構いません。同じ数を入れてはいけないのは、今回は「太線で区切られたブロックの中」です。そこで悩んでいるようなら、もう一度問題文を確認してあげてください(たとえば、右端の縦の列は、和が7で、見えている数が3なので、残り2つは2+2しかありません。ここを「絶対にできない!」と言っている場合は、「同じ列に同じ数を入れてはいけない」と勘違いしている可能性が高いです)。ルールが理解できていそうなら、やはりいつも通り温かく見守ってあげてください。

 お子さんが答えを出せたら、「同じブロックに同じ数が入っていないか」「それぞれの列の和が指定された数になっているか」を一緒に確認してあげましょう。すべて条件をクリアしていたら、正解です。同じ数が入っているブロックがあったり、和が指定された数になっていない列があったりする場合は、具体的に「このブロックに2が2つ入っているよ」「この列の数を足すと6ではなく7になっているね」などのように指摘してあげてください。

解いてみよう

Level 1

たて・よこに入れた数の和が、書かれている数になるよう、空いているマスに数を入れてください。ただし、太い線で区切られたブロックには、1~3がそれぞれ1回ずつ入ります。

Level 2

たて・よこに入れた数の和が、書かれている数になるよう、空いているマスに数を入れてください。ただし、太い線で区切られたブロックには、1~4がそれぞれ1回ずつ入ります。

Level 3

たて・よこに入れた数の和が、書かれている数になるよう、空いているマスに数を入れてください。ただし、太い線で区切られたブロックには、1~5がそれぞれ1回ずつ入ります。

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

 今年度も、1年にわたっていろいろな問題を紹介させていただきましたね。その中には、いわゆる“パズル”のような問題もいくつかありました。実際に私が子どもたちを指導する際にも、“パズル”を出題することは多いです。ただそれは、別に「パズルをやらせると算数ができるようになるから」ではありません。先月もお伝えしたように、「算数のために何かをやらせる」ということには、基本的には反対です。それでも、パズルを子どもたちにやってもらうのは、いくつかの理由があります。
 
 まずひとつ目の理由は、単純に私自身がパズルを好きだから、ということです。私がパズルを好きだから、パズルを楽しんでくれる人が増えたらいいな、と思っている、というのはあります。その意味では、「算数のためにパズルを使っている」というより、「パズルのために算数を使っている」という感じかもしれません(笑) 。加えて、パズルが好きで、パズルを作ったり解いたりした経験も、それなりにはあるつもりなので、パズルを解く人の気持ち、作る人の気持ちをある程度理解している、ということもあるでしょう。やはり“教材”として扱う場合、それに取り組む子どもたちが「どのポイントでどういう反応をするか」について、よく知っておく必要があります。そういった知識や経験があるという自負があるから、というのが、子どもたちにパズルを解いてもらう理由のひとつです。

 もうひとつ、子どもたちにパズルを解いてもらう理由として、「頭を動かすことを“自分事”にする経験をしてほしい」から、というものもあります。4月号で、算数とまっすぐ向き合うためには、“算数”を“自分事”にすることが大事だ、という話をしましたね。とはいえ、算数の問題を解いていると、自分のやっていることが正しいのかどうかがわからなくなる場面も多いです。自分の知らないところ(手の届かないところ)で“正解・不正解”が決められてしまう、と感じてしまうこともあるでしょう。その点、パズルは、不正解のときに不正解だと納得しやすい、というメリットがあります。多くのパズルは、“条件を満たすもの”を見つける、ということがゴールになっています。指定された条件をすべて満たしていれば“正解”、満たしていない部分があれば“不正解”です。条件と自分で照らし合わせることができれば、間違っている場合に自分で“不正解”と納得することができますし、自分では気づかなくても、答えを確認するときに「ここが条件に合っていない」と具体的に指摘してあげれば、それはそれで“不正解”と納得することができるでしょう。「自分は正解だと思っているのに、よくわからないけど間違っていると言われる」ことが、ほとんど起きない、ということですね。その意味で、パズルに取り組むことは、うまくいってもいかなくても、“自分事”から乖離しづらいと言えるでしょう。その“自分事”だと感じられる範囲の中で、いろいろと試行錯誤したり考えたりする経験を積んでほしい、というのも、子どもたちにパズルを解いてもらう理由のひとつです。
 
 いずれにしても、パズルはパズルであって、算数ではありません。パズルに取り組むときは、パズルそのものを楽しむことが、一番大事です。もちろん、パズルが苦手な人もいるでしょう。いくつかの“ルール”を同時に考えていくのは、実際に結構難しかったりします。しかし、パズルが苦手でも、算数ができないわけではないので、そこをあまり気に病む必要はありません。楽しめる範囲で楽しんでもらえれば十分です。“パズルを解けるようになること”は、別に“勉強”のゴールではありません。保護者の方にも、無理に子どもに“解かせよう”とするのではなく、自分なりに問題と向き合っている様子を、温かく見守ってあげてほしいと思います。


 いかがでしょうか。
 “パズルを解けるようにすること”が“勉強”のゴールではない、とお伝えしましたが、主語を広げて“算数の問題を解けるようにすること”も、別に“勉強”のゴールではない、と言えますね。学校で算数や数学の問題を解くのは、人生の中でのごく一部の期間でしかありません。その短い期間の中であっても、4月号でお伝えしたように、“算数”と自分なりに向き合えるようになれば、その後の人生がより豊かなものになるでしょう。保護者の皆さんも、お子さんがそうやって自分なりに“算数”と向き合っていく様子を、温かく見守ってあげてほしいと思います。
 それではまた来年度!

次年度の「小田先生のさんすう力UP教室」は「Z会おうち学習ナビ」でご覧ください!

これまで「Z-SQUARE」をご覧くださりありがとうございました。

「Z-SQUARE」の更新は、新サイト「Z会おうち学習ナビ」(https://www.zkai.co.jp/z-navi/)への移行に伴い、2024年3月14日(木)をもって終了いたします。 

「Z会おうち学習ナビ」は「日々の学びを、将来の飛躍へ」をコンセプトとした、幼児・小学生保護者のための情報サイト。「今すぐ役立つ」情報のみならず、変化の速い時代を見すえた「将来につながる」情報を提供し、自ら学ぶ姿勢や、目指す進路をつかみとる力を育てたい保護者をナビゲートします。 

「小田先生のさんすう力UP教室」は次回以降、新サイト「Z会おうち学習ナビ」内の「子育て・教育情報」にて記事をアップしていきます。「Z会おうち学習ナビ」での初回更新は3月28日(木)の予定です。新しい学年でも引き続きよろしくお願いいたします。 

▼Z会おうち学習ナビはこちらから
https://www.zkai.co.jp/z-navi/
どうぞお楽しみに!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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