小田先生のさんすう力UP教室

やってみる力を育てよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、最近体重計(体組成計)と血圧計を買った小田です。自動でデータをスマホやタブレットに転送してくれるのがいいですね。おかげさまで、毎日測るのが今のところ1週間は続けられています。「変化が見えるようにする」というのは習慣化しやすくするための一つのポイントだと思いますが、その記録のための手間が少ないのはとてもいいことです。実は数値的にはよろしくない数値が出てしまっているので、今年度こそ健康には気をつかっていきたいと思います。

 さて、初めての方は初めまして、昨年度から引き続きの方はいつもありがとうございます。このコーナーは、私がふだん生徒に解いてもらっている問題を紹介しつつ、その問題で何を身につけてほしいのかを解説していくコーナーです。とはいえもちろん、まずは問題を楽しんでもらうことが大事ですので、ひとまず気軽に挑戦してみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage37:やってみる力を育てよう

例題

図の〇には、つながっている2つの□に書かれている数の和が入ります。□の中に、決められた数を1回ずつ入れてください。また、アに正しい数を入れてください。

例題の答え


毎回のようにお伝えすることになるかと思いますが、最初はお子さんが「問題の意味を理解できているか」を確認してあげることが大事です。手が止まってしまっている子には、私はいつも「問題の意味は大丈夫そう? 説明した方がいい?」と聞いたりします。大丈夫ではなさそうなら、まずは問題の意味を説明してあげてください。「AとBを足したら8、AとCを足したら7になるようにするんだよ」「A,B,Cは3か4か5のどれかで、同じ数は入らないよ」というのを伝えてあげるといいでしょう。「大丈夫」と言っていても、お子さんの動きをよくよく見ていると、問題の意味がわかっていなさそうな動きをしているときもあります。その場合も、上記のような説明をしてあげるといいでしょう。

手が動き始めたら、温かく見守ってあげてください。手が止まっている場合は、ひとまず適当にA,B,Cに数を当てはめてみるよう伝えましょう。そして、A+Bがいくらになるかを聞いてみます。8になっていたらA+Cも聞いてみて、そちらが7になっていればOKです。それぞれなっていない場合は、「それが8(7)になるようにしてみよう」と伝えます。

お子さんが答えを書いたら、まずは□に3,4,5が1回ずつ入っているかどうかを確認してあげてください。同じものが2回以上入っていたり、3,4,5以外の数が入っていたりしたら、「□に入るのは3と4と5が1回ずつだよ」と伝えてあげましょう。そこが大丈夫であれば、次はA+B,A+Cがそれぞれ8,7になっていることを確認します。こちらも、なっていなければ「ここを足すと〇〇になっているね」と伝えてあげてください。そちらもクリアしていれば、最後にアがB+Cになっているかどうかを確認してあげましょう。正しくなっていれば正解です。抜けていたり間違えていたりしたときは、「ここだけ抜けている(間違っている)ね」と伝えます。

解いてみよう

Level 1

図の〇には、つながっている2つの□に書かれている数の和が入ります。□の中に、決められた数を1回ずつ入れてください。また、あいている○にも正しい数を入れてください。

Level 2

図の〇には、つながっている2つの□に書かれている数の和が入ります。□の中に、決められた数を1回ずつ入れてください。また、あいている○にも正しい数を入れてください。

Level 3

図の〇には、つながっている2つの□に書かれている数の和が入ります。□の中に、決められた数を1回ずつ入れてください。また、あいている○にも正しい数を入れてください。

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

この連載に何年かお付き合いいただいている方には“いつもの話”になってしまうのですが、年度の初めということなので、やはり今年度も「やってみる力が大事」という話から始めていきたいと思います。

私のところにお子さんを預けてくださる保護者の方から、「算数を好きになってほしい」「算数嫌いを取り除いてほしい」というご要望をいただくことは多いです。ただ、最近思うのは、算数を好きになることや算数を嫌いにならないことは、本当にそこまで大事なことなのかな、ということです。もちろん、算数を好きになれば、算数の学習の効率は一気に上がります。好きこそ物の上手なれ、という言葉の通り、好きで算数の学習に取り組む人と、別にそうでもない人と、確かに吸収効率においては大きな差が出るでしょう。保護者の方としても、子どもには算数を好きになってくれた方がいいですよね。子どもにとっても、嫌々やるよりは楽しく取り組んだ方がいい、というのは間違いありません。

しかし、ここでひとつ忘れてほしくないのは、「好き」「嫌い」というのは、結局“感情”である、ということです。他者にコントロールできるものではなく、それどころか自分でさえコントロールできるものでもないのです。好きになってもらうよう働きかけることは多少できたとしても、好きにさせることはできません。好きになろうと思っても、どうしても好きになれないこともあるでしょう。そもそも、算数というのは面白い面もあると同時に、難しい部分や面倒な部分、感覚的に受け入れない部分も結構あります。その意味では、「好きになれない感じ」や「なんとなく苦手な感じ」を感じてしまうこと自体は、むしろごく普通の感覚だとも言えますね。それを無視してしまうこと、その感覚を否定してしまうことが、算数の学習にプラスに働くかというと、おそらく、そうはならないでしょう。

算数の学習を進める上で、私が最近一番重要だと思っているのは「算数とまっすぐ向き合うこと」です。算数を好きであっても嫌いであっても、“そう感じている自分”を受け止めて、自分なりの“自分と算数との関係性”を作っていくことが大事だ、ということです。算数を学ぶ権利は、すべての人にあります。それは、算数を好きになれない人、苦手だと感じている人にも同様に、です。プラスでもマイナスでも、自分が“算数”に感じているものを大事にし、それらと真摯に向き合いながら算数の学習を進めていけば、算数が好きか嫌いかに関係なく、そこで学んだものは自分の人生の糧となるでしょう。決して、算数が好きでなければ算数を学習してはいけないわけではありません。算数が苦手でも、算数を学習してはいけないわけではないのです。“算数”には、そういう懐の深さがあります。

算数とまっすぐ向き合うためには、やはり“算数”を“自分事(じぶんごと)”にすることが大事です。そのための第一歩が、今回のテーマである「やってみる」ことですね。うまくいった経験も、うまくいかなかった経験も、自分なりにやってみた結果であることに価値があります。子どもがいろいろやってみているとき、それでもなかなかうまくいかない様子を見ていると、周りで見ている大人としては、歯がゆくなることもありますね。ただ、だからと言って「うまくできる方法」を上から投げ与えることは、あまり意味がないでしょう。子どもが理解できる場合はまだいいですが、子どもが理解できない場合、「算数は“自分にはわからないこと”ができなければいけないのだ」というイメージをもってしまうこともあります。そうすると、「算数は自分にはできない」と思い込んでしまいます。算数に苦手意識をもつことそのものは別に悪いことではありませんが、「算数は自分とは縁がないものだ」と思い込んでしまうと、それは良くないでしょう。算数は難しいけれども、自分にもわかる・できることがある、と思えるようになることが、算数の学習を続けていく上で重要です。お子さんがそうやって“算数”と向き合っている間は、ぜひ温かく見守ってあげてほしいと思います。


 いかがでしょうか。

 これは単なる自慢話なので話半分で聞き流してほしいのですが、私もそれなりの人数の子ども達を見てきた中で、私のおかげで算数・数学が好きになった、と言ってくれる子がいなかったわけではありません。とてもありがたいことです。それと同時に、算数・数学は苦手だけど、私と一緒だったら算数・数学を勉強したい、と言ってくれる子もいます。それもとても嬉しいですし、そのことにもやはり価値があると思うのです。本文で、算数に“難しさ”を感じるのはある程度当たり前、という話をしましたね。そう感じる感覚を否定せず、むしろ共感してあげることは、子どもにとっては安心して算数と向き合える原動力となるでしょう。ぜひ、皆さんも、お子さんが“算数”に感じていることを、そのまま受け止め、大事にしてあげてください。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

関連リンク

おすすめ記事

数のパズルを楽しもう数のパズルを楽しもう

小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

同じ形に分けてみよう同じ形に分けてみよう

小田先生のさんすう力UP教室

同じ形に分けてみよう

数字の構造をとらえよう数字の構造をとらえよう

小田先生のさんすう力UP教室

数字の構造をとらえよう


Back to TOP

Back to
TOP