小田先生のさんすう力UP教室

数字の構造をとらえよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、ベランダをハトから奪還した小田です。先月お伝えしていたハトの件ですが、無事に業者に清掃してもらうことができました。そこから早速ネットをはってみたところ、数日は手すりに止まったりもしていたようですが、それ以降ほとんどハトが来ないようになりました。年の瀬を前にして、ひとつ懸案事項が片づき、一安心といったところです。

 さて、今回は数のパズルです。空いているマスにコインを並べて、どの列も和が同じになるようにします。難しければ、実際に硬貨を置いてみてもいいでしょう(数字を書いた紙でも構いません)。試行錯誤をぜひ楽しんでみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage46:数字の構造をとらえよう

例題

決められたコインをマスに置き、たて、横のそれぞれの列に入ったコインの合計金額が、どれも同じになるようにしてください。コインの入っていないマスがあっても構いません。1つのマスに入るコインは1枚までです。

 まずはいつも通り、問題の意味を確認してあげましょう。イメージしづらい場合は、冒頭にも書いた通り、実際に10円玉や5円玉を用意してあげてください。本物のお金ではなく、紙に数字を書いただけのものでも構いません。枠の中にそれらを適当に並べてみて、「この列は合計〇〇円になっているね」という感じで、「それぞれの列に入ったコインの合計金額」を確認してあげましょう。その上で、「これが全部同じになるように、コインを置けばいいよ」と伝えてあげます。コインを置かないマスがあってもいい、というのも確認してあげてください。1つのマスに2枚以上のコインを置いている場合は、「1つのマスに置けるコインは1枚だけだよ」と伝えてあげましょう。斜めの列を気にしている様子があれば、「斜めはこの問題では関係ないよ(何でもいいよ)」と伝えてあげてください。

 お子さんが答えを出したら、まずはコインが余っていたり多く置いたりしていないかどうかを確認してあげてください。過不足があるようでしたら、「5円玉が1枚多いね」「10円玉はもう1枚置かないといけないよ」など、具体的に伝えてあげてください(何も置かないマスがあることにとまどっているようなら、再度「空いているマスがあってもいいよ」と伝えてあげてください)。枚数が条件を満たしていたら、それぞれの列の合計金額を一緒に確認してあげましょう。たて3列・横3列の計6列がすべて同じなら正解です。合計の違う列があれば、それを指摘してあげてください。

解いてみよう

Level 1

決められたコインをマスに置き、たて、横のそれぞれの列に入ったコインの合計金額が、どれも同じになるようにしてください。コインの入っていないマスがあっても構いません。1つのマスに入るコインは1枚までです。

Level 2

決められたコインをマスに置き、たて、横のそれぞれの列に入ったコインの合計金額が、どれも同じになるようにしてください。コインの入っていないマスがあっても構いません。1つのマスに入るコインは1枚までです。

Level 3

決められたコインをマスに置き、たて、横のそれぞれの列に入ったコインの合計金額が、どれも同じになるようにしてください。コインの入っていないマスがあっても構いません。1つのマスに入るコインは1枚までです。

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

 低年齢における算数の学習の中で、ひとつ大きなハードルとなりうるのが、「十進法」の概念の習得です。冷静に考えると、確かに「じゅう(10)」と「いち(1)」をあわせた「じゅういち」が「101」ではなく「11」になるのは、不自然と言えば不自然ですよね。初めて見る子どもたちが、「0」はどこに消えてしまったのだ、と思ってしまうのも、ある程度は仕方ないことでしょう。実際、言葉上では「じゅう」と「いち」で「じゅういち」ですし、漢数字でも「十」と「一」で「十一」です。「10」と「1」をあわせたときに「11」と「0が消えてしまう(そのままくっつかない)」のは、アラビア数字に特有の“決まりごと”でしかないのです。

 「十一」を「11」と表すとき、左に書かれた「1」と右に書かれた「1」とでは、表しているものが違います。左の「1」は十の位、つまり十の個数を表しているのに対し、右の「1」は一の位、つまり一の個数を表しています。このように、数を書く“位置”によって表している大きさを変えるシステムを「位取り記数法」と言い、その中でもとくに、ふだん使っているような「十の塊」ごとに位をあげていくものを「十進法」と言います。

 十進法で数を表すことには、様々なメリットがあります。その大きなメリットのひとつは、限られた種類の記号で、無限の数を表すことができる、ということでしょう。位取り記数法が“発明”されるまでの“数字”のシステムでは、記号そのものを変えることで表す数の大きさを変えていました。ローマ数字などがそうですね。「十」は「X」、「百」は「C」のような感じです。しかし、この方法では表したい数が大きくなればなるほど、次々と新しい記号が必要になりますね。それに対して、十進法では「0、1、2、3、4、5、6、7、8、9」という10種類の“数字(記号)”だけで、理論上はどんな大きな数でも表すことができます。大きい数を表したければ、数字を書く場所をどんどん左につけ足していけばいいだけです。

 位取り記数法のメリットとしては、ほかにも、計算がしやすい、ということがあげられますね。「二百三十五」+「百四十七」と言われても少しイメージしづらいですが、「235」+「147」と言われたなら“位ごと”に計算すればいい、と考えやすいでしょう。そうやって「位ごとに計算すればいい」と考えられるおかげで、“筆算”のような計算も可能になるのです。

 いずれにしても、この「十進法(位取り記数法)」のシステムは、人類が“発明”したシステムのひとつです。そのルールを知らない子どもが、自然に理解していくのはとても難しいのです。ある意味では厄介なことに、この“数字”のシステムは日常生活に浸透しすぎているため、それらに長く触れてきた“オトナ”にとっては“自然な表記”となってしまっています。なかなか理解できない子どもを見たときに、「なんでこんな簡単なことが理解できないのだろう」と思ってしまうことも、ままあるようです。もし、お子さんを見ていてそう感じてしまったときは、十進法のシステムは人工的なものであり、慣れていない子にとってはとても難しいものである、というのをぜひ思い出していただき、温かく見守っていただきたいと思います。

 今回の問題は、その十進法に慣れてもらうためのパズルです。最近は私自身もあまり現金を使わなくなり、電子マネー等で事足りる生活を送っていますが、それはそれとして、“硬貨”は「十」などの塊をうまく捉えるための、身近な教材のひとつです。問題を解くために試行錯誤していくなかで、1や5がどう集まって10になるのか、などを感じ取ってくれるとうれしいです。


 いかがでしょうか。
 そんなこんなで、今年ももうすぐ終わってしまいますね。今年はつい最近まで暑かったせいか、とくに後半はバタバタと過ぎ去っていったような気がします。ちょうど1年前のこの連載の記事では、「来年も、“いつの間にか終わってしまったけど、振り返るといろいろあったな”と思えるような1年にしたい」と書いていましたが、今年も確かに“いろいろ”はあったので、それはそれでよかったかな、と思います。来年も楽しい1年が送れるといいな、と思います。皆様も、ぜひ良いお年をお迎えください。

それではまた来年!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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