小田先生のさんすう力UP教室

決まるところから決めていこう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、ハトの被害に悩まされている小田です。事務所に小さなベランダがあるのですが、油断している間に、そこをハトの溜まり場にされてしまっていたようです。ふだんはまったく使っていないベランダで、しかもブラインドを閉じたままにしていたので、全然気づいていませんでした。最近なんだか近くでハトがよく鳴いているなあ、と不審に思ってドアを開けてみたところ、フンや羽が大量に溜まってしまっているのを発見した次第です。困りました。近々、業者の方に清掃を頼もうかと思っています。大変ですね。

 さて、今回は数字を入れていくパズルです。よくあるタイプの問題ではあるので、やったことのある人も多いかもしれません。やったことのある人も、やったことのない人も、気軽に楽しんでもらえるとうれしいです。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage45:決まるところから決めていこう

例題

あいているマスに数字を入れ、たて・横のどの列にも、1~3の数字がすべて1回ずつ入っているようにしてください。

まずは、問題の意味を理解できているか、確認してあげましょう。「どの列も、1、2、3を1回ずつ入れる」という説明で大丈夫だと思いますが、ピンとこない場合は、実際に下の図のような“例”を見せてあげて、「(たて・横の)どの列も同じ数字が入っていない」ことを確認してあげるといいでしょう(この“例”は答えではありません)。

 問題の意味が理解できていそうなら、あとはいつも通り温かく見守ってあげましょう。お子さんが試行錯誤している間は、うまくない解き方をしていたり、間違えて同じ数字を同じ列に入れていたりしても、そのまま見守ってあげてください。手が動かない様子なら、「まずは適当に好きな列から埋めてごらん」と伝えてあげます。

 お子さんが自分なりに“答え”にたどりついたようであれば、「それぞれの列に同じ数字が入っていないかどうか」を確認してあげましょう。同じ数字が入った列がなければ(もちろん、1から3以外の数が使われていなければ)、正解です。同じ数が入っている列があれば、「この列に○が2つ入っているね」などと指摘してあげてください。

解いてみよう

Level 1

あいているマスに数字を入れ、たて・横のどの列にも、1~3の数字がすべて1回ずつ入っているようにしてください。

Level 2

あいているマスに数字を入れ、たて・横のどの列にも、1~4の数字がすべて1回ずつ入っているようにしてください。

Level 3

あいているマスに数字を入れ、たて・横のどの列にも、1~5の数字がすべて1回ずつ入っているようにしてください。

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

 算数の問題を解くためには、“論理的思考力”が必要だ、というイメージがありますね。もちろん、それはある程度正しいことではあるのですが、少し注意も必要です。算数における“論理”は、日常生活における“論理”と少し違うニュアンスをもっているからです。ふだん、「論理的である」という言葉は、「話のつながりが納得できる」という意味合いで使われることが多いでしょう。しかし、算数においては、「納得できる」つまり「感覚的に正しそうに見える」というだけでは「論理的に正しい」と言うことができません。算数で「論理的に正しい」と言った場合、それは「必ずそうなる」ことを指します。ふだんの会話の中で「雨が降ったから、傘を持って出かけた」と言われても、とくに違和感なく“筋が通っている”と感じますね。しかし、よくよく考えると、雨が降ったとしても、必ず傘を持って出かけるとは限りません。「雨が降ったから地下道を通って行った」「雨が降ったからずぶ濡れになった」「雨が降ったから外に出なかった」など、ほかにもいろいろな“結論”の候補があります。日常的な会話で、そうやって重箱の隅をつつくようなことを言うと、“面倒くさい人”に思われるかもしれませんが、算数の学習を進めていく上では、そうやって「本当にその結論になるのか」と突き詰めていく姿勢がとても大事になるのです。

 今回の問題でも、「確実にそう言える」ことに注目していく姿勢が大事ですね。空いているマスをなんとなく埋めていくだけでは、列の数が少ないときにはなんとか正解できても、盤面が大きくなるとなかなかうまくいかないでしょう。例題であれば、上から2段目に注目し、「1と3がすでに入っているから、真ん中の空いたマスには2が入る」と考えていく必要があるのです。慣れないうちは、そういった“決まるところ”を見つけるのが難しいかもしれません。その難しさを経験することも含めて、「確実に言えることを順につないでいく」ことの大事さを実感してほしい、というのが今回の問題の狙いです。

 そういう意味では、例題の解説のところに書いたように、お子さんが“決まらないところ”から数字を入れていても、まずは温かく見守ってあげてほしいです。確実に言えることを積み重ねる重要さを理解するためには、確実には言えないことを入れてしまってなかなかうまくいかないという経験も必要です。試行錯誤していく中で、“うまくいく場合”と“うまくいかない場合”の違いを、なんとなく感じてほしいところです。

 また、そもそも「試行錯誤していく」ということも、とても大事な姿勢です。“確実に決まるところ”がすぐに見つからない場合は、「結論となる候補の可能性をすべて考え、ひとつずつ順に調べていき、うまくいかないものを消していく」というのも、十分、論理的な思考だからです。もちろん、そのためには「結論の候補」をすべてあげきることが重要ですが、その列挙する力のトレーニングも今回の問題に取り組んでもらう意義のひとつです。

 いずれにしても、繰り返しで恐縮ですが、お子さんがああでもないこうでもないと取り組んでいる様子を、ぜひ温かく見守ってあげてほしいと思います。


 いかがでしょうか。
 いよいよ本格的に寒くなってきましたね。まあ、そう言いつつも急に気温が上がったりするので、まだまだ油断はできませんが。とはいえ、さすがに暖房を使う感じになったということもあり、最近、加湿器を買いました。昨今評価の高いスチーム式の加湿器です。実際に使ってみたところ、結構しっかり加湿されるものなのですね。暖房をつけたまま寝ると朝にとても乾燥しているのが気になっていたのですが、これで解決です。体調を崩しやすい季節でもあるので、しっかり睡眠は確保したいですね。皆様も、どうぞご自愛くださいませ。

それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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