特集

子どものやる気を引き出すコツ(2)

 

ほめることとおだてることは違う できたことを認めるのが上手なほめ方

――「できたことをほめる」にはどうしたらよいでしょうか。

上手なほめ方というのは、実際に子どもができていることをほめるということなんですね。子どものモチベーションがアップします。

ほめ方のコツは、「すごいね」「えらいね」「立派だね」といった言葉を言うよりも、小さな事実を具体的に認め、言葉にすることです。「靴を揃えられたね」「プリントを用意できたね」と、あたりまえに見えることも言葉にします。すると子どもは「見てもらっている」という安心感や達成感が得られ、「またやってみよう」という気持ちになるのです。

――何をほめたらいいかわからない場合には?

今できていることをあたり前と思わずに認めてあげてください。ピアノの練習を30分すべきところ、10分であきてしまっても、その10分のがんばりは認め「10分がんばったのね」と言葉に出す。子どもは見ていてくれたことがうれしく、自分からやろうという気持ちが生まれるでしょう。

――「ほめ」と「おだて」はどう違うのでしょうか。

よく、「いくらほめても言うことを聞かない」という方がいらっしゃいます。ほめ言葉は、「あなたを見ているよ」というメッセージです。それに対して、大人の意図に沿ったことをしたときだけほめ言葉を言うとか、言葉で子どもをコントロールしようとするのは、おだてになります。

子どもは親の意図を敏感に察知するもの。察知した途端、やる気が引っ込んでしまう子もいれば、図に乗ってしまう子もいます。今すでにできている事実を認めている限り、おだてにはなりませんよ。

――とはいえ、子どもにはやるべきことをやってほしいものです。

そうですね。だからこそ①のリストアップを先にしておくことが大事です。「これは自分がすること。しないと困るのは自分」と子どもが理解しているかどうかキモです。

宿題をさせたくても、いきなり否定したり命令したりするのはNG。少しでもできている事実ややろうとする姿勢を見つけて、言葉にしてみてください。たとえば「字がきれいだね」「やろうと思って、ノートを出してるんだ」などと、いいところを探して言ってみると、やる気が出てきますよ。いかに自発的に行動するように促すか、工夫が必要なのです。

 ――ほめ方は子どもによって変えたほうがよいのでしょうか。

言葉のかけ方は、子どもの個性に応じるといいですね。人の役に立ちたいと思っているような子どもには、「ありがとう、助かった!」という言葉が響きます。ほめられると照れてしまう子どもには、短く事実を認めるだけのほうが有効かもしれません。親に対して素直になれない思春期の子どもなら、「○○さんが喜んでいたよ」という、間接的な表現がいいときもあります。

学習習慣を身につけさせたいときなどは、言葉で認めるだけでなく、カレンダーにシールを貼ったり、「○日続いたら、△△に遊びに行こうか」などと目標を立てたりするのもいいと思います。親子で楽しみながら取り組める工夫をしましょう。

 

前向きな声かけが子どもを伸ばす ときには親子で悩む経験も大事

――「しからずに具体的・前向きに伝える」とは?

まず、子どもの人格を否定することはNGです! しからなくてはいけないときには、具体的に伝えることが大事です。また否定的な言葉を使わずに、前向きな表現に置き換えるといいでしょう。

たとえば子どもが靴を脱ぎっぱなしにしているとき。「脱ぎっぱなしはダメじゃない!」としかるのではなく、「揃えてくれると玄関がスッキリする」に置き換えるのです。

――少し具体例を教えてください。たとえば、いちばん言ってしまいがちな言葉に「早くしなさい!」があります。これはどう言い換えればいいのでしょうか。

「早くしなさい」ではなく、具体的に伝えるにはタイミングを知らせるのがいいですね。「もうすぐ8時だよ。○○ちゃんが迎えに来る前に準備できるといいね」「夕飯の前に宿題を終えられると気分がいいね」など。ときには「7時から夕食にするけれど、宿題はどうする?」と考えさせることも大切です。「早く片づけて早くおやつ食べようね」と、モチベーションをアップさせる作戦もいいでしょう。

――「宿題をまだやっていないの?」「Z会はやったの?」と、ついきつい口調で言ってしまいそうなときは?

子どもが宿題をやるべきものだとわかっているのかどうかを、まず確認してくださいね。低学年だと、毎日するものだとわかっていないことがあります。その場合は先ほどのリストアップを確認してみましょう。

わかっていてもやらない場合は、「宿題をしておくと、授業についていけるね」と声をかけてもいいし、高学年の子には「寝るまでの○時間で終えないといけないから、考えてやってね」と任せてもいいでしょう。

――中学受験をする子の場合、受験勉強のモチベーションを維持させたいときはどうしたらいいでしょう。思うように成績が伸びないと子どものやる気も削がれるし、親も費用と労力をかけている分、子どもに任せてはいられないものです。

受験生をもつ保護者の方は大変ですね。わたしも「勉強しろ」と口には出さなくても、眉間にしわが寄っていたりして(笑)。
これは、親子で一緒にがんばる経験をする機会だと割り切るしかないと思います。「大変だね。一緒にがんばろうね」と応援するスタンスです。まちがっても「このままだと落ちるよ」など、ネガティブな言葉をかけないで!長い目で見て、良い結果にならないからです。どうしてもそんな言葉が口をついて出そうなときは、その場を離れて深呼吸したり、おうちの他の人にバトンタッチしたりしましょう。

中学受験でがんばった経験は、成否に関わらず子どもの財産になります。親子で貴重な経験をしていると考えてほしいものです。

受験期に限らず、きちんとした子育てをしようと思うこと自体、きちんとした保護者であることの印です。子どもには自分で伸びていく力があります。社会の中で育ててもらえます。だからあまり1人でがんばろうと考えず、大らかに見守っていきましょう。

⇒次ページに続く 「お子さまのタイプ別・上手なほめ方」をご紹介します。

プロフィール

NPO法人JAMネットワーク代表・「ことばキャンプ」主宰

高取 しづか さん

消費者問題・子育て雑誌の記者として活躍後、米国に渡る。現地で出会った仲間とJAMネットワークを立ち上げ「日本の子どもと親のコミュニケーション力育成活動」を20年行っている。話す力聞く力のトレーニングプログラム「ことばキャンプ」を作りインストラクターを養成し全国で展開している。
書籍の出版、新聞・雑誌・LINE配信でコラムを執筆。「ことば力」「自立」「自己肯定感」をテーマに、全国で1万人以上に講演・研修。オンラインで『自己肯定感を育てる親講座』『親子関係が激変する「子ホメ」レッスン』を開催。
著書に、『ことば力のある子は必ず伸びる!』(青春出版社)『イラスト版気持ちの伝え方コミュニケーションに自信がつく44のトレーニング』(合同出版)「子どもが本当に待っているお母さんのほめ言葉」(PHP研究所)他多数。神奈川県子ども・子育てアドバイザー、神奈川県青少年問題協議会委員を歴任。令和2年度内閣府「子供と若者・若者応援団表彰」の内閣総理大臣賞受賞。

関連リンク


Back to TOP

Back to
TOP