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将棋棋士 佐々木勇気さん(2)
2017.10.12
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佐々木六段にとって将棋とは?
――将棋の魅力とはどんなところにありますか?
厳しい勝負の世界で、上には上がいます。自分より実力が上のトップ棋士と戦ったときには、自分を追いつめ、誰よりも勉強するわけじゃないですか。勝てないと思って勝負する人はあまりいなくて、せっかくトップ棋士とあたるのだからこれだけ努力してやろうと。そのかけた時間ですよね。練習にかけた時間を、自分そのものみたいに感じることがあると思います。負けると自分が否定される感じもけっこうあるのですが。
――自分そのものが否定されると感じるのは、苦しいことだと思います。苦労やスランプはどうやって乗り越えるのでしょうか?
限界まで練習して勝てないのが一番つらいです。練習しないで負けるのだったら練習すればいいだけですが、努力しても勝てないというのは、イコール実力と認めざるを得ないので。それで勝てないなら、この勝負の世界に向いていないのではないかと思ってしまうのです。
プロ棋士になる前後ではちょっと変わるのですが、棋士になってからは、スランプになって、自分がこの世界に向いてないんじゃないか、という気持ちになったときに「棋士になりたくともなれなかった方々がいる」ということを思い出すんです。今こうして自分が棋士になっている。でもそれをしたくてもできない人、それを目指してもできなかった人がいる。そう思うと自分が今しょげていることがたいしたことに思えなくなる。その人たちの分もがんばらなければいけないな、と思えるのです。
――勝負の世界ですから、そういったつらいこととか、たいへんなことがたくさんあると思うのですが、そのなかで、将棋に真摯に毎日向き合っていく原動力といいますか、こういう気持ちがあるからがんばれるんだ、といったものはありますか?
今回、藤井聡太四段とも対局しましたけれど、そのときにいろいろ考えていて、なぜ棋士になったのか、と思うこともあるわけです。わたしもわからないですけれど、ただ棋士になったわけではなく、将棋の神様から託されたものがあるんじゃないか、というふうに思うんです。だから適当にはできないな、と。
自分で考えて積み重ねたものが生きてくる
――ふだんから大切にしている行動や習慣はありますか?
相手の考えを尊重すること、答えを求めすぎず、自分で考えたアイディアを大事にすることです。どういうことかというと、たとえば数学でも、答えを暗記するとか、なんだか答えを求めすぎていると思うんですね。今、AIが出てきていますが、強いコンピュータソフトに聞いたらいちばんいい手が返ってくる。そういう時代になりつつあるんです。しかし、答えをそれに求めすぎると、たぶん自分がなくなってしまうと思うんですね。
――個性といったものですか?
個性? うーん、今まで積み重ねてきた自分そのものですよね。わからなかったらわからなくて、いいと思うんです。考えることが大事なので、自分が考えた過程やアイディアを大事にした方がいいんじゃないかなというのが、今大切にしていることかもしれません。
――自分で考えて積み重ねてきたことを大切にしているのですね。今後の展望についてはどのようにお考えでしょうか。
今は羽生善治先生がタイトルを多く持っているのですが、ずっとその状態が続いているんですね。そこがこれから少しずつ変わってくると思うんです。どう変わるか、というのは、今はあまりわからない。そのポジションをみんな狙っているので。下からは藤井聡太四段が出てきています。そのちょっと上にはわたしたちの世代がいて、さらにわたしたちの上の世代もいますよね。だから競争がいっそう厳しくなるんじゃないかと思います。
――その中で勝ち続けていきたい、という。
勝ち続けていく、というより、大勝負をしばらくやっていないと、自分の将棋もどんどん弱くなってしまうんですね。自分を追いつめることで誰よりも勉強するので、それが貯金になるというか、その対局が終わったあとも生きてくる。強くなるんですよ。ここで勝ったら挑戦者になれるという場面や、わたしの場合は藤井聡太四段との対局も大一番でしたし、そういうのをやはりまた経験したいと思います。自分を再び追いつめることができたら、また強くなれるかな、というふうに思っています。
――これからのご活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。
「将棋日本シリーズ テーブルマークこども大会」東京大会のご案内
かつて佐々木勇気六段も参加した『将棋日本シリーズ』は、指して学ぶ「テーブルマークこども大会」と、見て学ぶ「JTプロ公式戦」が一体となった将棋イベントとして、毎年全国11都市で行われています。
「テーブルマークこども大会」は、将棋のルールが分かる小学生以下のお子さまであれば誰でも参加できる将棋大会。トーナメント戦や自由対局、ファミリー将棋コーナーなど、将棋の持つさまざまな「チカラ」をフルに使いながら、自分のペースで楽しめるメニューが盛りだくさんです。
こども大会の一日
現在、東京大会の参加申し込みを受付中です!
子どもから大人までまるごと一日楽しめるイベントが盛りだくさんですので、この機会に親子で将棋に触れてみてはいかがでしょうか。
2017年11月19日(日) 東京大会 【2017年11月6日(月)締切】 大会詳細はこちら
また、「JTプロ公式戦」はトッププロ棋士12名だけが出場できる公開対局の公式戦。大勢の観客が見守る中での真剣勝負は、トッププロの迫力と緊張感を間近で感じられる貴重な機会です。
2017年11月19日(日) の東京大会では、決勝戦が行われます!
詳細は下記をご覧ください。
JTプロ公式戦 | 将棋日本シリーズ | JTウェブサイト
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『将棋日本シリーズ』総合事務局
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プロフィール
将棋棋士
佐々木勇気 (Yuki Sasaki)
1994年スイス・ジュネーブで生まれ、2歳までフランスに滞在。帰国後5歳の正月に将棋を始める。小学3年のとき全国小学生倉敷王将戦低学年の部に出場し優勝。4年で小学生将棋名人戦で優勝。同年、奨励会入会。その後、伝統文化を積極的に取り入れている中高一貫校・都立白鷗高等学校附属中学校に入学、2008年、中学2年4月に13歳8ヵ月で三段に昇段。2015年10月まで三段昇段の最年少記録保持者だった。2010年、16歳1ヵ月でプロ入り。2016年度の年間対局数は65局、堂々の1位タイで最多対局賞を受賞。2017年7月に六段に昇段。