小田先生のさんすう力UP教室
問題を作ってみよう
2018.2.22
8.2K
さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
こんにちは、“キャンペーングッズ”に弱い小田です。コンビニなどで「対象商品をいくつか買うとプレゼント」みたいなものがあると、あまり必要のないものでもついつい買ってしまいます。先日、わたしの好きなキャラクターのポーチがもらえるキャンペーンがあったのですが、種類が3種類もあったので、1つずつ入手していくか3つとも一気に手に入れてしまうか、さすがに少し迷いました。結局、3種類ともその日のうちにゲットすることにしたのですが、翌日にはほとんどなくなっていたので、いい判断だった、ということでしょう。
さて、今回はいつもと趣向を変えて、「問題を作ってみよう」というテーマです。問題は「解く」ばかりで「作った」ことはあまりない、という方も少なくないと思いますが、やってみるとけっこうおもしろいので、まずは気軽にチャレンジしてみてください。
それでは早速行ってみましょう。
Stage36:問題を作ってみよう
「フィルナンバーズ」の問題を作ってみてください。
【フィルナンバーズとは】数字の書かれたマスをいくつかぬりつぶして、残った数字の和が、縦・横のどの列も決められた数になるようにするパズルです。
指導のヒント
今回は、とくに正解があるわけではないので、ぜひ保護者の方とお子さまで一緒にいろいろと問題を作って楽しんでみてください。
まずは、パズルのルール自体を理解しているかどうかを確認してあげましょう。「さんすう力UPのポイント」にもいくつか問題があるので、実際にそれらをまず「解いて」みてからだと、わかりやすいかもしれません。
作り方のコツなども、そちらに書いておきましたので、ぜひ参考にしてください。
お子さまが問題を作ったら、もちろん、解いてあげてくださいね!
解答
“正解のある問題”になっていれば、それでOKです。
さんすう力UPのポイント
“算数の学習”というと、ふだんは問題を「解く」ことのほうが多いでしょう。しかし当然、「解く」ための問題があるということは、それを「作る」人がいるということでもあります。今回の問題のねらいは、その「作る」側の視点を体験してみよう、というところにあります。
とはいえ、いきなり「問題を作れ」と言われても、何をどうしていいかわからない、ということもあるでしょう。そこで、少し作り方のコツを紹介しておきます。
たとえば、図1のような3×3のマスで、残す数字の和が5になる問題を作るとします。このとき、最初からすべてのマスにいきなり数字を書き入れてしまうのではなく、図2のように「残す数字」だけを入れてしまいます(この段階で、本当に「残す数字」の和が、各列5になっているかどうかを確認するといいでしょう)。そして、そうやって残す数字を決めてしまってから、図3のように空いているマスを適当な数字で埋めていけばいいのです。
問題が完成したら、まずは自分で解いてみましょう。答えがわかっている問題を“解く”というのはどういうこと? と思うかもしれません。しかし、“問題作り”をするうえでは、実はこのステップがとても重要なのです。
あたりまえですが、作った問題は、答えがちゃんと出ることが大事です。上記のような作り方をすれば、「正解がない」ということはあまりないと思いますが、それでも数字の書きまちがいや、作る過程での計算ミスなどはたまにあります。そういったことがないよう、再度客観的に確認するのです。
それからもう一つ、「自分の考えていた以外の“正解”がないか」を考えることも大事です。「答えが複数出る問題」を“悪い”とするか“それでもいい”とするか、というのは究極のところ趣味の問題ではありますが、価値観の話を抜きにしても、「いくつ答えが出るのか」をきちんと把握しておくことそのものは、やはり重要です。実際に問題を作ってみると、自分の想定していた答え以外の“正解”が出てくることはよくあります。そういった“想定外の答え”を探してみる、というのも問題作りにおいては大事な手順なのです。
(ちなみに、答えのわかっている問題を“解く”と、解く過程そのものに意識を集中できます。これは副産物的なものではありますが、正解が最初から分かっていれば、「正解かどうか」を気にする必要がなくなり、安心して「解く」ことを楽しめる、というメリットもあるのです。)
いくつか問題を作ってみて、慣れてきたら、図4のように「残りの数の和」を変えてみたり、図5のようにマスの数を変えてみたりしてもかまいません(それぞれ、“正解”は図6のようになります)。
そして、さらにいろいろ作ってみるなかで、「どうすれば難しくなるか」も考えてみてください。問題を作るとき、「自分で決められるポイント」はたくさんありますが、それらの組み合わせによって、問題自体の難易度は変わってきます。「残りの数の和」なのか「マス目の数」なのか、「残りの数の分け方」なのか「それ以外の数の入れ方」なのか、どこのポイントをどういうふうにすると問題が難しくなるか(もしくは簡単になるか)、そういったことがわかってくると、“問題作り”は楽しくなってきますよ。ぜひチャレンジしてみてください。
もっと問題
いかがでしょうか。
今年度も、これでおしまいですね。長い間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。2015年度から3年間続いているこのコーナー、おかげさまで来年度も引き続き書かせていただくことになりました。次回からは、少しリニューアルして、問題中心の構成にしていくつもりですので、楽しみにしてください! 今後ともぜひよろしくお願いします!
それではまた来月!
文:小田 敏弘(おだ・としひろ) 数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。 公式サイト:http://kurotake.net/ 主な著書
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