小田先生のさんすう力UP教室

やってみる力を育てよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、もうすぐ誕生日をむかえる小田です。とかなんとか言いつつ、いつも生徒に「誕生日はいつですか?」と聞かれたときには、「毎日が誕生日! 1/365歳ずつ歳を取っている!」とか適当なことを言っていることですし、来月も来月で「1/12歳ずつ年を取る誕生“日”」が来るかもしれません。楽しみですね。

 さて、初めての方は初めまして、昨年度から引き続きの方はいつもありがとうございます。初めての方に少しご紹介をしておくと、本連載はわたしがふだん子どもたちに解いてもらっている問題を紹介し、「それらを通してどういう力を身につけてほしいのか」など、その問題のねらいを説明していく、という内容です。今年度も方向性としては同じですが、少し問題の量を多くして、問題中心の構成にしていきたいと思っています。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage37:やってみる力を育てよう

例題

 図の○には、つながっている2つの□に書かれている数の和が入ります。

 □のなかに、決められた数字を1回ずつ入れてください。また、アに正しい数字を入れてください。

例題の答え

 まず、問題の意味を確認しましょう。要するに、A+B=5、A+C=7、B+C=アとなるように、数を入れていく、ということです(ただし、A、B、Cには、2、3、4が1回ずつ入ります)。

 問題の意味を理解できたら、次にA、B、Cに適当に2、3、4をあてはめてみます。適当にあてはめていっても、うまくあてはまれば正解です。もちろん、「AとBはあわせて5なのだから2と3の組み合わせになるはず」と考えてもかまいません。どっちがどっちかな、という部分は、「AとCをたすと7だからCが4でAが3」と考えてもいいですし、「Aが2、Bが3」というパターンと「Aが3、Bが2」というパターンの両方を試しにやってみるのもいいでしょう。

解いてみよう

 図の○には、つながっている2つの□に書かれている数の和が入ります。

 □のなかに、決められた数字を1回ずつ入れてください。また、あいている○に正しい数字を入れてください。

解答

さんすう力UPのポイント

 このコーナーを連載するにあたって、必ず年度初めの記事でお伝えしていることがあります。それは、「考える」よりも「やって」みよう、ということです。

 「算数・数学の学習」というと、「考える」ことが大事だ、と思う人も多いでしょう。もちろん、それはまちがいというわけではありません。しかし、あまり「考える」ことばかりを強調しすぎることは、実は子どもの学習にとってあまりよくないことでもあるのです。

 この話は、それほど難しいことではありません。実際に子どもの視点に立ってみてください。難しい問題を解いていて「わからない」と思っているときに、「考えなさい!」と言われると、「考えてもわからないから困ってるんだよ!」と思いませんか。「考えてもわからない」経験を積んでしまうと、「自分には算数はできない」と感じるようになってしまい、算数が苦手になってしまいます。

 難しい問題に立ち向かうためにいちばん大事なことは何か。それは、「やってみる」ことです。今回の問題でも、とりあえず数字を入れてみる、というのは、とても大事なことです。わたしはいつも、次のようなたとえ話をします。

 目の前に、宝箱が3つあります。このうち1つにはお宝が入っていますが、残りの2つは空っぽです。さて、あなたはどうしますか。

 結論から言うと、「全部開けてみる」が正解です。開けてみて空っぽだったら、別の宝箱を開けてみればいいだけの話です。もちろん、実際の洞窟で宝箱を見つけたら、外れの箱には罠が仕掛けられているかもしれません(ゲームとかだとそうですよね)。しかし、算数の問題では「空っぽ」なだけです。宝箱の前で、「どこかにヒントがないかな」と一生懸命「考えて」いる人がいたら、とても間が抜けていると思いませんか。

 「考えて」みて、重要なポイントに気づけるかどうか、というのは、正直に言えば個人差があります。気づけないときにはなかなか気づけません。大人から見ると「少し考えればわかるだろう」と思うようなことでも、子どもはなかなか気づかないものです。しかし、「やってみる」ことはだれでもできます。その結果「できてしまう」ことはよくあります。さらに言えば、「やってみる」からこそ気づけることもたくさんあります。そうやって、まずはとりあえず、何だかよくわからないけど「やってみたらできた・わかった」という経験を積み、「自分にも算数ができるんだ」という自信を積み重ねていくことこそ、算数が得意になるための第一歩なのです。


 いかがでしょうか。

 今年も花粉症の季節がやってきましたね。わたしも、いつもこの時期は鼻の調子が悪くなります。昨年くらいまでは「花粉症じゃない、ただの風邪だ」と言い張っていたのですが、昨年、杉のたくさん生えたお城に遊びに行ったとき、くしゃみが止まらなくなってしまったので、「花粉症じゃない」と言い張るのは諦めました。今年も、少しくしゃみの量が増えてきた気がします。何かしら対策を立てたほうがよいのかもしれませんね。認めることは敗北ではなく、次のステージへ進むための第一歩です。まあ、そんな大げさな話でもないですけども。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

 

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