小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、物を捨てられないタイプの小田です。わたしの事務所はそこそこ狭いのですが、先日、その貴重な収納のうちのひとつが紙袋で埋め尽くされていることに気づきました。紙袋って捨てづらいですよね。丈夫な紙袋とか、特殊な大きさの紙袋とか、デザインがかわいい紙袋とか、素敵なプレゼントをもらったときに入っていた紙袋とか、たこ焼き屋さんの紙袋とか。何かのときに使えるかも、と思うのもあってとりあえず取っておいてあるのですが、まあ、使わないからたまっていくんですよね。とりあえず、たこ焼き屋さんの紙袋は捨てました。
 さて、今回は数の問題です。同じ数(2種類ありますが)を足していって、目的の数を作る、というシンプルな問題です。シンプルな問題は、自由に解いていくことができる、というのが、ひとつ大きな魅力だと思っています。ぜひまずはお気軽にチャレンジしてみてください。
 それでは早速行ってみましょう。

Stage43:数のパズルを楽しもう

例題

下の数字のマスをいくつか好きな色でぬり、ぬったマスの数の和が、18になるようにしてください。

 

例題の答え

 

 まずは問題の意味を確認しましょう。「和」は「合計/足した答え」と伝えてあげれば大丈夫です。問題の意味がわかりにくいときは、具体的に例を示してあげてください。たとえば「2を1マス、3を2マス」ぬってみて、「これで2+3+3だから和は8だね」という感じです。ぬる場所は、別に左から順番でなくても構いません。

 問題の意味が確認できれば、あとはお子さまの自由にさせてあげましょう。答えらしきものが出たら、実際にぬった部分の和を確認してあげてください。「2が何マスでいくら、3が何マスでいくら、あわせていくらだね」という感じです。そうやって確認して、ちょうど18になっていれば「正解」、18になっていなければ「少し違うね」と伝えてあげてください。

解いてみよう

 下の数字のマスをいくつか好きな色でぬり、それぞれぬったマスの数の和が決められた数になるようにしてください。

 

解答

 

 

さんすう力UPのポイント

 子どもたちを見ている中で、最近少しおもしろいことを発見しました。それは、「足し算よりも掛け算のほうが簡単」と思っている子が実は一定数いる、ということです。
 一般的な感覚としては、足し算をまとめたものが掛け算なのだから、掛け算のほうが足し算よりも高度で難しいのではないか、と感じるところでしょう。しかし、一部の子たちにとってはそうではなく、「足し算のほうが掛け算よりも難しい」という感覚なのです。
 そういった子たちの話をよくよく聞いていると、どうやら「掛け算は、九九があるから間違えにくい(逆に、足し算は九九がないから間違えやすい、つまり“難しい”と感じている)」というのがあるようです。それを聞いて、ひとつ興味深いと思ったのは、その子たちにとっては「足し算」と「かけ算」は別物である、ということです。

 「九九は覚えているけど、同じ数を足していくときには苦戦している」という子に対して、「九九だけ覚えても、その意味がわかっていなければ意味がない」と感じる人も多いかもしれません。しかし、「掛け算」を「足し算」の延長として捉えられない子は、本当に“わかっていない”子なのでしょうか。

 足し算と掛け算、それらの計算で作られていく世界を少し注意深く見てみると、それぞれ別の形をしているようにも見えてきます。たとえば、足し算で作られていく数の世界は、図1のような一直線に数が並んでいるように見ることができるでしょう。「数を足す」というのは、この並んだ数の上を“前に進んでいく”ようなイメージで捉えることができます。一方で、掛け算で作られていく数の世界は、図2のように“広がっていく”世界です(この図では「2」と「3」の掛け算しか出てきていませんが、もちろんこれらだけではすべての数字を表すことができないので、「5」や「7」といった数(要するに“素数”です)が必要になってきます)。この世界では、4から9に直接行くことはできませんね。その意味では、“足し算の世界”とはまた違った構造をしている、と言えるでしょう。こういった視点でそれぞれの世界を見てみると、確かに「足し算」と「掛け算」は別物だと感じませんか。“行き先が決まっている”掛け算のほうが、足し算よりも“答えがずれにくそう”という感覚も、少しわかるような気がしませんか。

 もちろん、これらのイメージも、決してそれが足し算と掛け算の“正しい理解”というわけではないでしょう。ここでお伝えしたいのは、数学というのは奥が深く、一見すると簡単に見えるようなことであっても、実はいろんな側面を持ち、考えていくとまた別の面が見えてくる、ということです。そして、だからこそ、自分の理解できている範囲で他人の理解を推し量るのは、とても危険だ、ということです。足し算と掛け算が別のものに見えている子は、“わかっていない”子ではなく、“別の側面が見えている”子かもしれないのです。

 算数・数学教育において重要なことは、“正しい理解に導く”ことではありません。それよりも、“その子がすでにもっている理解を受け止め、さらにそれを豊かにしていく”ことが大事です。そのためには、その子が自分の理解に基づいて算数・数学の世界で自由に走り回ることを、温かく見守ってあげる必要があるのです。今回の問題は、もちろん九九が使えるなら使ってもいいですし、九九を使わずに順に足していっても構いません。冒頭でも書いた通り、シンプルな問題なので、ほかにもいろいろと工夫しようと思えば工夫のできる余地はあるでしょう。そうして、自分なりに、自由に、算数・数学の世界を楽しんでほしい、というのが今回の問題のねらいです。


  いかがでしょうか。

 いつの間にか夏も終わってしまいましたが、それにしても、今年の夏は暑かったですね。子どもたちが学校に行っている日程の間は、わたしの活動時間は夕方から夜となるのですが、朝から授業がある夏休みは、生活のリズムも変わってくるので結構大変です。今年の暑さはかなり危険だな、と思ってはいましたが、昼休みを例年より長めに設定したこともあってか、無事乗り切ることができました。お昼寝、いいですよね。あと、夏休みの終わりには、自宅から徒歩20分のところに旅行に行ってみたりもしました。本当は温泉旅行にでも行きたかったのですが、準備が面倒になって、とりあえず大きなお風呂に入ってきれいな布団で寝られたらいいや、ということで、近くのビジネスホテルで一泊してきたのです。それはそれで楽しかったですけどね。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

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