小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

こんにちは、最近「サブスクリプション」に興味のある小田です。月々いくらで動画が見放題、とかいう感じのやつです。とくに動画配信サービスについては、ひとりで作業をしているときにBGM代わりに動画を流したりもしているので、何か契約してみようかな、とは考えているのですが。配信リストを見てみると、昔見ていて「おもしろかった」と感じた番組があったりもして、「もう一度見てみようかな」と思ったりもするのですが、同時に「1回だけ見て終わるかも」と考えてしまい、月々で契約する意味はあるのだろうか、というのが悩みどころです。見たい番組を見終わったら、契約を終了する、という手はあるんですけどね。

さて、今回は計算のパズルです。今年度最終回ということで、初心に帰って「試行錯誤」する問題です。少し難しい部分もありますが、無理のない程度に楽しくチャレンジしてみてください。

それでは早速行ってみましょう。

Stage60:数のパズルを楽しもう

例題

下のパネルを、点線にそって2つに切り分けます。切り分けたそれぞれのパネルに書いてある数字の和が同じになるようにするには、どのように切り分ければいいでしょう。

例題の答え

問題の意味がわかりにくい場合もあるかと思います。その場合は、まず具体的に「分け方の例」を示してあげてください。そして、分けたパネルに書かれている数字の和がそれぞれいくらになっているか、計算してもらいましょう。
たとえば、図の青線のように分けてみて、「こっちの塊の数字の合計はいくら? こっちは?」と聞いてみましょう(上のほうは17、下の方は25になっています)。そして、「その数が同じになるようにしてみて」と伝えます。

「2つに分ける」なので、余らせてしまっている部分があったり、離れたところを合わせてしまったりしているようであれば、「これだと3つ(場合に応じて、4つ、5つ)に分かれてしまうね」と伝えてあげてください。「2つに分ける」を「2つずつに分ける」と勘違いする場合もあるので、そのようなときも、上記のような具体例を提示して「2つに分ける」であることを確認してあげてください。
お子さんが答えを出したら、まずはそれぞれ合計がいくらになっているか、確認します。そこで計算がまちがっていれば、指摘してあげてください。答えが一致していないときは、「その答えが同じになるように分けてみよう」と伝えましょう。合計の確認を面倒くさがるようでしたら、保護者の方が「こっちはいくら、こっちはいくらになっているね」と確認してあげても構いません。いずれにしても、見事合計が一致していれば、正解です。

解いてみよう

下のパネルを、点線にそって2つに切り分けます。切り分けたそれぞれのパネルに書いてある数字の和が同じになるようにするには、どのように切り分ければいいでしょう。

 

解答

さんすう力UPのポイント

そんなこんなで、今年度もいよいよ最終回となってしまいました。最後ということで、あらためて強くお伝えしておきたいのは、やはり「子どもの“主体”を大事にしてほしい」ということです。

昨今の教育におけるキーワードのひとつに、「主体的な学び」というものがあります。もちろん、それは大事なことではあるのですが、個人的には少し危うさもはらんでいる言葉だな、と感じています。主体的に学ぶ子ども、という言葉から、どのような子どもをイメージしますか。「難しい問題も一生懸命考えたり、他人に自分の考えを積極的に伝えたり、自分の能力を向上させることをいとわなかったりする子ども」を想像したりしませんか。しかしここでよくよく考えてほしいのは、本当にそれは「主体的に学ぶ子ども」なのか、ということです。
自分の子どもの教育に関心のある「保護者」の方々も含めて、教育に関わる“オトナ”たちの頭の中には、「子どもにはこういうふうになってほしい」という理想があります。それは別に悪いことではないのですが、しかし、そういった「オトナの作った枠」に「積極的に飛び込むこと」は、本当に「主体的」と表現してもいいのでしょうか。
子どもが真の意味で主体的に動けるようになるためには、まず、周りの大人がその子の「主体」を承認してあげる必要があります。それは簡単に言えば、その子を一人の「人間」として認めることであり、すなわち、その子が「感じていること」「考えていること」を受け入れてあげることです。
難しい問題に対して、「解きたくない」「考えたくない」と思うことを認めてあげる、というのも、実は重要なことでしょう。解きたくない問題を解かない自由があってこそ、人は初めて主体的に「解きたい問題を解く」ことができるからです。下手な解き方でも構いません。自分のやってみたい解き方で解くからこそ、将来的には自分で解き方を選べるようになるのです。
子どもの教育において、「~~したほうがいい」という話は、基本的にはすべてケースバイケースです。それは理想を言えばそうなったほうがそれはいいよね、という話に過ぎません。それよりも何よりも大事なことは、あなたのお子さん自身が何を考えて、何を感じているかです。子どもは、大人が思うよりもいろいろなことを感じ、いろいろなことを考えています。それを承認し、大事にしてあげることこそ、「主体的な学び」へとつながる唯一の道ではないか、と思います。


いかがでしょうか。
上でも書いた通り、今年度最終回ということでしたが、このコーナー自体も一旦一区切りです。とは言っても、来月からもまた似たような形で続けさせていただこうとは思いますが。一応、来年度からは学年の区切りをなくして、全学年対応、という形にさせていただきたいと思います。今回が「Stage60」ということなので、5年続いたということですね。これもひとえに読んでくださっている皆様のおかげです。また来月からも引き続きいろいろなお話をお届けできたらいいな、と思っています。

それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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