小田先生のさんすう力UP教室

図形の広さを考えよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、新年早々、足を捻挫した小田です。数学の問題を解きながら階段を降りていたら、一段足を踏み外してしまいました。嘘です。階段を踏み外したのはそうなのですが、その理由はコンビニのレシートについていたクーポンを切り離しながら階段を降りていたからです。なかなかに間抜けですね。皆さまも、どうぞお気をつけください。

 さて、今回は図形の広さ、すなわち面積の問題です。実はこの“広さ(面積)”という概念は、とくに低年齢のお子さんにはなかなか難しかったりもします。いまいち問題の意味がピンときていないようでしたら、無理に解かなくても大丈夫です。むしろ、そういったお子さんの様子を、ぜひ温かく見守ってあげてほしいと思います。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage35:図形の広さを考えよう

例題

図の(ア)(イ)(ウ)のうち、色がぬられている部分の広さが同じものは、どれとどれですか。

例題の答え

(ア)と(イ) (いずれも、正方形の半分がぬられている)

 

まずは問題の意味を確認してあげましょう。「色がぬられている部分の広さを比べたときに、3つのうち1つだけ違うものがある」という説明でも大丈夫です。

冒頭でもお伝えした通り、そして今回の記事のテーマでもあるのですが、“広さ”という概念を理解するのは、低年齢のお子さんにはなかなか難しかったりします。いまいちピンとこないようなら、「難しいね」で終わってしまって構いません。

なんとなく“広さ”がつかめていそうなお子さんでしたら、「答えを納得する」ところを目指すのがいいでしょう。下の図のように線を引くと、(ア)も(イ)も、いずれも「4つにわけたうちの2つ分」になっています。(ウ)については、とくに(イ)などと比べてみて、「白い部分が少ない」ことを確認するといいでしょう。

解いてみよう

Level 1

図の(ア)から(キ)のうち、色がぬられている部分の広さが同じペアを3組見つけてください。

Level 2

図の(ア)から(キ)のうち、色がぬられている部分の広さが同じペアを3組見つけてください。

Level 3

図の(ア)から(キ)のうち、色がぬられている部分の広さが同じペアを2組見つけてください。

解答

Level 1

(ア)と(カ):いずれも「9つにわけたうちの5つ分」

(イ)と(ウ):いずれも「4つにわけたうちの1つ分」

(エ)と(オ):いずれも「全体の半分」

Level 2

(ア)と(キ):いずれも「全体の半分」

(ウ)と(カ):いずれも「9つにわけたうちの6つ分」

(エ)と(オ):いずれも「白い部分が黒い部分の2倍」

※ (オ)や(カ)は下のように考えると分かりやすいかもしれません。

Level 3

(ア)と(カ):(カ)を移動すると(ア)と同じになる

(イ)と(オ):いずれも「全体の半分」

さんすう力UPのポイント

算数の学習を進めていくうち、「算数をなぜ学ぶか」という疑問をもってしまう人も多いでしょう。算数を指導する側の意見としては、この質問に対する答えは究極的には「人それぞれ」なので、なかなか返答に困ることが多いです。ただ、この質問の意図が「算数を学ぶとどういう“いいこと”があるか」ということであれば、それには少し答えることができるでしょう。

算数を学習して得られるもののひとつに、「世界に対する“解像度”が上がる」というものがあります。これは何も、算数に限った話ではないですね。そもそも“勉強”自体が、本質的には「今までになかった視点を獲得することで、より世界の見え方を“豊か”にしていく」という営みです。算数を学習する、というのも、そこから大きく離れるものではないでしょう。

冒頭で、「広さ」の概念は難しい、とお伝えしましたね。これは低年齢に限った話ではありません。小学校高学年くらいであっても、まだまだ“広さ”の概念の獲得に苦戦している子どもたちも、たくさん見てきました。「広さ」の概念の前段階として、「大きさ」という感覚があります。2つのものを比較したときにどちらが大きいか、ということであれば、低年齢でもなんとなく“感じる”ことはできるでしょう。しかしたとえば、次のような2つの図形を見せられたとき、「どちらが大きいか」と言われると、少し困ってしまいませんか。

“大きい”と言われても、とまずは思いますよね。角度で言えば赤い図形の方が“大きい”ですが、半径の長さは青い図形の方が“大きい”ですね。面積は一見すると難しいところですが、計算してみると、実はほぼ同じ“大きさ”です。そうやって考えてみると、ひとくちに“大きさ”と言っても、そこにはいろいろな種類の“大きさ”があることがわかりますね。今あげたような、「角度」「長さ」「面積」に加えて、立体図形になると「体積」も“大きさ”の中に入ってきます。算数を学習する前の段階では、その“大きさ”の区別がまだつかない状態と言えるでしょう。その同じに見えているいろいろな“大きさ”を区別する視点を獲得する、というのが、「算数の学習」なのです。すでにそれらの区別がつく大人から見ると、まだその違いがわからないお子さんの様子を見て、もどかしく感じることもあるかもしれません。しかしそこは逆に、「その区別って意外と難しいんだ」という“発見”を面白がってほしいところではあります。お子さんの様子を温かく見守りながら、その概念を獲得していく過程、成長していく様子を、じっくり楽しんでみてください。

“違いがわかる”ようになると、端的に言えば人生が豊かになるでしょう。もちろん、それはゼロかイチの話ではありません。世の中の“勉強”は算数以外にもたくさんあります。すべての概念を獲得し、あらゆる分野について“違いがわかる”ようになるのは、ひとりの人間にはかなり無理がありますね。そういう意味では、算数で学習する“違い”も、わからないならわからないで人生が詰んでしまうほどのものではありません。しかし、それでも身につけられるのであれば、少しでも多くの概念を獲得することで、それ以前の自分の状態と比べれば、人生が“より豊かに”なっていくことは間違いありません。そうやって、新しい世界が見えるようになる喜びを感じながら、算数の学習を進めていってほしいですよね。


 いかがでしょうか。

 昨年の年明けの回には、生活習慣を改善しよう、みたいな話もしていたような気がしないでもないですが、それができていたかというと、なかなか難しいところではありますね。しかし新年早々怪我をしたりして思ったのは、もう少し“ゆとり”のある生活に切り替えたいな、というところです。そのためには、おそらく「もっと人を頼る」ということを覚えていかないといけないな、という気もします。今年はそのあたり少し頑張ってみようと思います。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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