小田先生のさんすう力UP教室

他にもないか、探してみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、最近お風呂場でのルーティーンを変えた小田です。毛根に刺激を与える系のコンディショナーを使っているのですが、あれってつけたあとしばらくそのままにしておいた方がいいらしいですね。今までは体を洗ってから髪を洗うようにしていたのですが、最近それを知ったので、順序を逆にして髪にコンディショナーをつけたまま体を洗う、という流れにしました。ぼんやりしていると、体を洗った後にまた髪を洗ってしまいそうですね。習慣を変えるというのはなかなか難しいと実感しています。

 さて、今回はパネルをならべて形を作っていく問題です。いろいろな形ができますが、どんな形ができるか、全部調べてみましょう。「もうこれ以上はない」と正確に言い切るのはなかなか難しいですが、まずは気軽に「他にあるかな、もうないかな」と考えながら、いろいろと探すことを楽しんでください。 

 それでは早速行ってみましょう。

Stage39:他にもないか、探してみよう

例題

下の(あ)のような正方形のパネルを4枚ならべてできる形をすべて書いてください。ただし、まわしたり裏がえしたりして同じになるものは同じ形と考えます。また、パネルをならべるときは、図の「いいならべ方」のように、辺同士をぴったりくっつけてならべるものとします。

例題の答え

以下の5種類(まわしたり裏がえしたりして同じ形になるものは正解)

まずは問題の意味を確認するところからですね。特に、「いいならべ方・よくないならべ方」は理解できているか確認してあげてください。「よくないならべ方」は、辺同士がずれてくっついていたり、辺同士が離れていたり、点だけでくっついていたりするならべ方です。また、必ずしも出来上がった形が四角形にならなくてもいい、というのも、必要そうであれば伝えてあげてください。

また、まわしたり裏がえしたりして同じになるものは同じと考えます。問題の意味としてはわかっていても、図形を書いていく中で形が同じだと気付いていない場合はあります。特に裏がえして同じになるものは気づくのが難しかったりもしますので、適宜、「これとこれは同じだね」と伝えてあげてください。頭の中でならべていくのが難しいようでしたら、紙などを切って“パネル”を作ってあげましょう。

お子さんがひととおり答えを出したようなら、ひとまず「他にはもうない?」と聞いてあげてください。実際にすべて見つけきっているかどうかに関係なく、一度立ち止まって「他にはないかな」と考える機会をつくることは大事です。もちろん、他にないと言い切ることはそれなりに難しいので、お子さんが「もうない!」と思っているようなら、それはそれで構いません。過不足なく書けていたら正解です。条件にあわないものや、重複がある場合は、その旨を指摘します。書いたものが足りていない場合は、「まだあるよ」と伝えてあげればいいでしょう。最初のうちは「全部で何種類か(あと何種類あるか)」は伝えなくても構いませんが、なかなか見つけきれないようならヒントとして伝えてあげても大丈夫です。その辺りは、お子さんの様子を見ながら対応してあげてください。

解いてみよう

Level 1

 

図のような正三角形のパネルを4枚ならべてできる形をすべて書いてください。ただし、まわしたり裏がえしたりして同じになるものは同じ形と考えます。また、パネルをならべるときは、辺同士をぴったりくっつけてならべるものとします。

Level 2

 

図のような正三角形のパネルを5枚ならべてできる形をすべて書いてください。ただし、まわしたり裏がえしたりして同じになるものは同じ形と考えます。また、パネルをならべるときは、辺同士をぴったりくっつけてならべるものとします。

Level 3

 

図のような正方形のパネルを5枚ならべてできる形をすべて書いてください。ただし、まわしたり裏がえしたりして同じになるものは同じ形と考えます。また、パネルをならべるときは、辺同士をぴったりくっつけてならべるものとします。

解答

Level 1

 

Level 2

 

Level 3

 

さんすう力UPのポイント

“苦手”だと感じる人が多い分野のひとつに「場合の数」がありますね。頑張って数えたのに答えが合わない、というのは、場合の数の問題を解いているときによくある経験です。かといって、計算で出そうとすると、どうやらその計算方法が間違っていてやはり答えが合わない、というのもよくある話でしょう。
いろいろな子どもたちと接していると、本人からだけでなく保護者の方からも、「場合の数が苦手」という相談がよく来るのですが、私からいつもお伝えしているのは「“苦手”と思わないでほしい」ということです。そもそも、場合の数、つまり「ものの数を正確に数える」というのはとても難しいことなのです。その意味では、なかなかうまくいかないのは、“苦手”ではなく“普通”です。場合の数に限った話ではなく、算数の学習全般について言えることでもありますが、そもそも算数で扱う範囲は「普通に考えるとよくわからない・難しい」ものばかりです。そういった“難しいもの”をどう扱えばいいかを先人たちが煮詰めたものが“算数(数学)”である、というのが実際のところです。その“難しさ”にはおおいに共感するのですが、だからこそ、“苦手”だと最初から思わないでほしいと思っています。お子さん本人が“苦手”だと感じてしまうのはある程度仕方がないことだとしても、保護者の方が「うちの子は〇〇が“苦手”」と思い込んでしまうのはぜひやめてほしいと思います。

さて、今回の問題もそんな場合の数の問題のひとつですが、その中でも今回のような“図形のパターンを数える”問題は、最も難しい問題のひとつと言えるでしょう。ものの数を数えるための基本的な工夫として、「順に数える」「分けて数える」というものがあります。しかし、図形のパターンを探していく場合は、その「どういう順に探すか」「どういう基準で分けて考えるか」が明確ではありません。その順序づけや場合分けの基準をまず自分で考えないといけない分、難易度が跳ね上がってしまうのですね。

今回の問題も、子どもたちにもよく解いてもらいますが、別に“完璧”を求めているわけではありません。この問題を解いてもらう一番の目的は、やはり「難しさを実感してもらう」ということです。その意味では、「すべて見つけ切るのはなかなか難しい」と思ってもらえた時点で、この問題を解いてもらった意義はあるでしょう。保護者の方も、ぜひその“難しさ”に共感してあげてください。

ただ、実際に取り組んでみてさらに余裕がありそうなら、“その先”を考えてもらうのもいいでしょう。私も、子どもたちに「(見つけた図形について)いくつかのグループに分けてごらん」と促すことはあります。たとえば、Level3の問題であれば、以下のような4つのグループに分けることができます。

これは、「真っ直ぐつながっているところで一番長いのが何個か」で分けていますね。もちろん、このようなグループ分けは、“正解”があるわけではありません。むしろ、いろいろな種類の分け方を、自分なりにぜひ考えてほしいと思います。そうやって、ものの数を数えていくことはそもそも難しいということを納得した上で、だからこそさまざまな工夫を考えていくのが大事、ということを理解してもらえればいいな、というのが、今回の問題の狙いです。


 いかがでしょうか。

 体組成計と血圧計に引き続き、歩数計(活動量計)も買いました。早歩きの歩数もカウントされるらしいですね。さすがにまだ買っただけなので生活習慣がそれほど変わるわけではありませんが、グラフなどで可視化されるのはいいことですね。授業時間数や教室の場所の都合で、曜日によって運動量に偏りがあるのですが、グラフでそれがはっきり見えるのが面白いです。あまり動かない曜日については意識的に運動量を増やしたほうがいいのかな、とは思いました。まあ、本当のところ、前から漠然とわかっていたことではあるので、実際にやる気にならないとなかなか改善される気はしませんが、しかしせっかくなので少し頑張ってみようと思います。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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