小田先生のさんすう力UP教室

計算力を鍛えよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、最近部屋の中央に畳んだマットレスを置いている小田です。片付けるのが面倒とかそういうわけでもないのですが、障害物を置いてみることで運動量が増えるかな、という試みでもあります。やはり座り仕事が多く、特に股関節が完全に固まってしまう今日この頃です。足を上げる運動が増えれば多少マシになるかな、と思ったりしています。つまずいて転んだりしたら片付けますけどね。 
 さて、今回は計算のパズルです。解き進めていくと難しくなっていきますが、まずは気軽にチャレンジしてもらえると嬉しいです。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage40:計算力を鍛えよう

例題

数字の書かれたパネルがあります。このパネルを、点線にそっていくつかのブロックに切り分け、どのブロックも書かれている数字の和がちょうど10になるようにしてください。

 

例題の答え

 

まずは問題の意味がわかっているかどうかの確認ですね。合計が10ずつになるように区切っていく、と伝えてあげればいいでしょう。「点だけでくっついている」のはナシです。個々のブロックは四角形でなくても構いません。ブロックごとにマス目の数が違っても構いません。数を余らせてはいけない、というのも伝えてあげてください。ブロック同士が重なってはいけません(同じマス目を2回以上使ってはいけません)。

問題の意味がわかっていそうであれば、あとはいつも通り温かく見守ってあげましょう。お子さんが答えを出したら、まずひとつひとつのブロックで、本当に書かれている数の和が10になっているかを確認してあげてください。10になっていないところがあれば、「ここは○になっているね」と伝えてあげます。すべて10になっていて、マス目を余らせたり重複して使ったりしていなければ、それで正解です。

解いている途中で「和が10になっていないブロック」を見つけても、しばらくは温かく見守ってあげましょう。間違いをすぐに指摘するのではなく、ある程度は自分で気づくまで待つのが効果的です。もちろん、行き詰まって心が折れそうになっていたら、指摘してあげて大丈夫です。

解いてみよう

Level 1

数字の書かれたパネルがあります。このパネルを、点線にそっていくつかのブロックに切り分け、どのブロックも書かれている数字の和がちょうど10になるようにしてください。

Level 2

数字の書かれたパネルがあります。このパネルを、点線にそっていくつかのブロックに切り分け、どのブロックも書かれている数字の和がちょうど10になるようにしてください。

Level 3

数字の書かれたパネルがあります。このパネルを、点線にそっていくつかのブロックに切り分け、どのブロックも書かれている数字の和がちょうど10になるようにしてください。

解答

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

言うまでもなく、「計算ができるかどうか」が算数のすべてというわけではありません。しかし、そうは言っても、計算も算数の学習の一部であることは間違いなく、ある程度はスムーズに計算ができたほうが、算数の学習も進めやすくはなるでしょう。様々な概念を習得したり、あるいは、複雑な問題の解き方を考えたりしていく際に、計算そのものに手間取ってしまうと、そういった“難しいこと”を考えるためのエネルギーが足りなくなってしまうからです。その意味で、基本的な計算については、負担なくできるようにしておいたほうが、より算数の学習は進めやすくなると言えるのです。

計算は一種の機械的な操作ではあるので、その操作の手順を身につけるという意味では、反復練習も大事です。しかし、計算力を鍛える上でもっと重要になるのは、数や計算についての理解を深めることでしょう。5月号で、「図形のセンスとは、図形の特徴を感覚的にとらえる力だ」というお話をしましたね。それと同じような話で、数や計算にも“センス”はあります。数や計算の“センス”とは、「数や計算の特徴を感覚的にとらえる力」のことです。数や計算についての理解を深めるためには、一面的な反復練習だけでなく、逆にそれらを多面的にとらえていく機会が重要なのです。そうやって、数や計算のいろいろな面とふれあうことを、私はよく「数や計算と仲良くなる」と表現しています。少し人間関係とも似ていますね。決まったシチュエーションでしか接点のない人よりも、いろいろな種類の場面で付き合いがある人の方が、その人の様々な面を見ることができ、その人に対する理解も深まるでしょう。数や計算についてもそれは同じで、数や計算のいろいろな面に触れ、数や計算と仲良くなることで、「この計算の結果はこういう感じになりそう」という“感覚”が身についてきます。そうやって、数や計算の“センス”を身につけていくことで、計算に必要なエネルギーを減らすことができれば、難しい概念を習得したり複雑な問題を考えたりするためのエネルギーに余裕をもたせられるようになるでしょう。

今回の問題も、数や計算と仲良くなるための問題です。数や計算と仲良くなる上で、計算パズルはひとついい題材になります。そのメリットのひとつは、まず「計算が目的ではない」ところにあるでしょう。パズルを解くためには「試行錯誤する」ことにエネルギーを使う必要があるので、計算そのものに使うエネルギーをなるべく減らしたくなってきます。そうすると、自然と計算の部分をなるべく“感覚”に落とし込もうとするようになってきます。パズルを扱うメリットのもうひとつは、「計算方法が自由である」ところです。パズルの目標は、「条件を満たす状態」を見つけることであり、そこに至るまでの道は自由です。計算は答えがあってさえいればよく、その方法には選択の余地が生まれます。今回の問題であれば、まずは、実際にいくつかの数を足してみて10になるかどうか、と調べていってもいいでしょう。いくつか足したあと、あといくつで10になるかを考えてもいいでしょう。先に、足して10になる組み合わせをリストアップしておくという方法もあります。自分が自信のある方法で計算しても構いませんし、一番楽そうな方法を選んでも構いません。そうやって、ひとつの計算にもいろいろな側面がある、というのを知ることで、数や計算についてのイメージを豊かにしていってほしい、というのが今回の問題の狙いです。


 いかがでしょうか。暑い日々が増えてきて、水分補給が大事な季節になってきましたね。帰宅直後に冷蔵庫で冷やしていたお茶を1杯一気に飲むのですが、意外と2杯目は一気に飲めない今日この頃です。冷たい飲み物をたくさん飲むのは、それはそれであまりよくなさそうですよね。石田三成のエピソードのように、2杯目は温度を変えたほうがいいのかもしれません。ただこの季節、常温のお茶を置いておく、というのはそれはそれで危ないような気もしますけどね。一気に大量に水分補給するのではなく、こまめに少しずつ補給するのがいいのでしょう。この夏も、健康に気を遣いながら、なんとか乗り越えていきたいと思います。

 それではまた来月! 

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

関連リンク

おすすめ記事

数のパズルを楽しもう数のパズルを楽しもう

小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

同じ形に分けてみよう同じ形に分けてみよう

小田先生のさんすう力UP教室

同じ形に分けてみよう

数字の構造をとらえよう数字の構造をとらえよう

小田先生のさんすう力UP教室

数字の構造をとらえよう


Back to TOP

Back to
TOP