小田先生のさんすう力UP教室

あてはまるものを探してみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、旅行に行くと美味しいものをいろいろと買って帰りたくなる小田です。旅先の名産品を家でも楽しめる、と考えるとテンションが上がりますよね。しかし、実際に買って帰ると、食べるのがもったいないような気がして、なかなか食べなかったりしてしまいます。パッケージを眺めながら、旅行楽しかったな、そろそろ食べようかな、でもこれ食べるとなくなってしまうのか、まだ置いておこうかな、と考えているうちに、賞味期限が近づいてくるのです。悩ましいですね。

 さて、今回は数をあてる問題です。少し“文章題”のにおいも感じますが、そのあたりは気にせず、まずは「あてはまる数」を順に探してみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage42:あてはまるものを探してみよう

例題

表に数字の書かれた2枚のカードA,Bがあります。2枚のカードに書かれた数の合計は10です。Bに書かれている数は、Aに書かれている数より小さいですが、Aに書かれている数の半分よりは大きいです。このとき、A,Bに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

例題の答え

A:6,B:4

 

まずは問題の意味の確認からですね。AもBも整数である、という前提ですが、お子さんが気にしていないようなら、特に伝える必要もないでしょう。「分数とか小数もありなの?」と聞かれたら、「整数だけみたい」と補足してあげれば大丈夫です。負の数(マイナスの数)もなしですが、それも“聞かれたら”で構いません。0は入る可能性があるので、どこかのタイミングで「0はありだよ」と伝えてあげてください。

細かい言葉の表現も、わかっていない様子があれば説明してあげてください。「より大きい」「より小さい」は、「ちょうど同じだとダメ」、「以上」「以下」は「ちょうど同じでもOK」という感じでいいでしょう。「2つ分」や「3つ分」などは、「2倍」「3倍」で通じればそれで構いませんが、いまいちピンとこないようなら、足し算で説明してあげてください。「“6の2つ分”は6+6で12だよ、“7の3つ分”は7+7+7で21だよ」という感じです。「半分」は割り切れないときは少し難しい場合がありますが、たとえば「11」に対して「半分より小さい」は「5以下」、「半分より大きい」は「6以上」です。具体的にいくつか提示してあげるのがいいでしょう。

問題文の意味を把握できていそうであれば、あとは温かく見守ってあげましょう。基本的には「試行錯誤」して解くことを想定しています。逆に、手が止まっているようでしたら、まずは「2つあわせて10になる数の組は、何がある?」と聞いてみてあげてください。適当にひとつあげてもらったら、「BがAより小さいか」「BがAの半分より大きいか」を一緒に確認してあげましょう。条件にあてはまっていたらそれでOKですし、あてはまっていなければ、どちらにあてはまっていないかを伝えてあげて、さらに「うまくいくものを探せばいいんだよ」と伝えてあげてください。

お子さんが自分で答えを出しても、同じように条件にあてはまっているかどうかを一緒に確認します。条件にあてはまっていれば「正解」、あてはまっていなければ「これにあてはまっていないね」と伝えてあげましょう。

解いてみよう

Level 1

(1)表に数字の書かれた2枚のカードC,Dがあります。2枚のカードに書かれた数の合計は5です。Cに書かれている数は、Dに書かれている数より小さく、2枚のカードに書かれている数の差は2以下です。このとき、C,Dに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

(2)表に数字の書かれた2枚のカードE,Fがあります。2枚のカードに書かれた数の合計は5です。Eに書かれている数は3より大きく、Fに書かれている数は1ではありません。このとき、E,Fに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

(3)表に数字の書かれた2枚のカードG,Hがあります。2枚のカードに書かれた数の合計は10です。Gに書かれている数はHに書かれている数より小さいですが、3よりは大きいです。このとき、G,Hに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

 

Level 2

(4)表に数字の書かれた2枚のカードI,Jがあります。2枚のカードに書かれた数の合計は10です。Iに書かれている数は、Jに書かれている数の2つ分より大きいですが、3つ分よりは小さいです。このとき、I,Jに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

(5)表に数字の書かれた2枚のカードK,Lがあります。2枚のカードに書かれた数の合計は15です。Kに書かれている数の2つ分は10より小さいですが、Kに書かれている数の3つ分はLに書かれている数より大きいです。このとき、K,Lに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

(6)表に数字の書かれた2枚のカードM,Nがあります。2枚のカードに書かれた数の合計は20です。Mに書かれている数はNに書かれている数より小さいですが、Nに書かれている数の半分よりは大きいです。また、MとNに書かれている数の差は5以上です。このとき、M,Nに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

 

Level 3

(7)表に数字の書かれた3枚のカードO,P,Qがあります。3枚のカードに書かれた数の合計は15です。Pに書かれている数はOに書かれている数より大きく、Qに書かれている数より小さいです。Qに書かれている数はPに書かれている数より3大きいです。このとき、O,P,Qに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

(8)表に数字の書かれた3枚のカードR,S,Tがあります。3枚のカードに書かれた数の合計は20です。Sに書かれている数はRに書かれている数より3大きく、Tに書かれている数より小さいです。Tに書かれている数はRに書かれている数の3つ分より小さいです。このとき、R,S,Tに書かれている数はそれぞれ何でしょうか。

 

解答

Level 1

(1) C:2,D:3   (2) E:5,F:0   (3) G:4,H:6

 

Level 2

(4) I:7,J:3   (5) K:4,L:11   (6) M:7,N:13

 

Level 3

(7) O:2,P:5,Q:8   (8) R:4,S:7,T:9

さんすう力UPのポイント

いわゆる“文章題”も、苦手意識をもってしまう人が多いもののひとつですね。ただ、ひとくちに“文章題”と言ってしまうと、人によってイメージするものの範囲が違ったりするので、注意が必要です。中には「文章で書かれている問題(つまり、“計算問題”以外のもの)」全般を指して“文章題”と呼ぶ人もいるようです。確かに、“文章題”という言葉に算数的に厳密な定義があるわけではないので、そういった“文章題”のとらえ方について「これが正しい」「それは間違っている」と言う気はありません。しかし、話をスムーズに進めるために、今回私がお話しする“文章題”については、意味を先に提示しておく必要があるでしょう。
私の考える“文章題”というのは、「ひとつ、もしくはいくつかの未知数が登場」し、「それらについての条件が文章で提示」され、「主に数値関係に関する情報を手掛かり」にして未知数を求める問題、です。もちろん、これでも厳密に線引きができるわけではありませんが、この3つ「 」で囲んだ要素のうち、私が“文章題”の本質的な部分だと思っているのは3つめの「数値関係の情報を手掛かりにする」というところです。

文章題を苦手と感じる人の多くは、この数値関係をうまくつかまえきれていない、というのが多いでしょう。すでにいろいろなテーマでお伝えしているように、この「数値関係をうまくつかまえる」のも、単純に“難しい”ことではあるので、あまり苦手意識をもってほしくはないところではあります。うまく数値関係をとらえられるようになるためには、やはり練習が必要ですが、その練習のひとつが今回のような問題で「数をあてはめていって答えを出す」という方法です。
今回の問題は、いずれも「数あてクイズ」です。いくつかの未知数について、いくつかの条件があり、その条件にあてはまる数を見つけられたら正解、という問題です。例題の解説にも書いたように、いろいろなパターンで試してみれば、そのうち答えは見つかるでしょう。
冒頭で少し書いたように、今回の問題は文章題を“におわせ”た問題です。文章題から表面的な設定を取り除くと、今回の問題のようになるでしょう。逆に、例題に少し“設定”をかぶせると、たとえば次のような文章題ができますね。

AさんとBさんが、10個のアメをわけます。Bさんがもらった個数はAさんがもらった個数より少ないですが、Aさんのもらった個数の半分よりは多いです。このとき、2人がもらった個数はそれぞれ何個でしょう。

この文章題は、本質的には例題と同じです。つまり、こういった文章題は本質的には“数あて”である、ということなのです。
文章題というと、“考えて”解かないといけない、というイメージがあるかもしれません。そして、どういう計算をするんだろうと“考えて”みたものの、どうしていいかわからず、結局解けない、となってしまうことが多いかもしれません。それはある意味では仕方ないことです。数値関係をうまくとらえられていない状況では、いくら“考えて”も先に進まないからです。
文章題であっても、今回の問題と同じように、まずは“あてはめて”解く経験を積むことが大事です。そうやってあてはめていく中で、それぞれの値がどういう関係にあるのか、与えられた条件のどこがポイントになるのか、そういったことが徐々に見えるようになってきます。それらが見えるようになってきたら、ようやく、文章題を“考えて”解くことができるようになるでしょう。まずは今回のような問題で、「あてはめていってひとまずあてはまる答えを探す」という姿勢を身につけてほしいと思います。


 いかがでしょうか。
 先日受けていた検査の結果が最近返ってきました。大きく悪いところがあったわけではないのですが、「水分が足りていない」という指摘を受けてしまいました。確かに、あまり体調のすぐれない日もちょくちょくあったのですが、もしかすると単なる脱水かもしれませんね。暑い日が続く中、部屋の中にいてもやはり水分補給はこまめに行うよう、気をつけていきたいと思います。

それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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